山伏峠

高度差のある岩壁を行く断続ダートの峠

読み方やまぶしとうげ
標高1840m
位置山梨県南巨摩郡早川町・静岡県静岡市
道路林道井川雨畑線
水系富士川・大井川

実走日2003年5月3日(土)
地図などGoogle Maps地図院地図
同名峠山伏峠(関東)

山伏峠は、南アルプスの東縁を、その主峰とほぼ平行に進むんで越える林道にある峠である。初めて地図でこの峠の存在を知ったとき、へえ、こんな所に越えられる峠道あるんだと感心した覚えがある。地図上の道筋はけっこう絵になっている。

しかも静岡側の麓は、美しい峡谷があり、温泉があり、味のあるミニ列車があり、銘茶の産地でもあるから、旅情を誘うにはこれ以上はなかなかないよという感じもするがどうだろうか。

峠道としては、かなり落差は大きいが鬼と呼ぶほどのものではない。ダートもあるが舗装化はかなり進んでいる。展望は確かに良いが、遠くを見はるかすというよりは、山を楽しみ、足元との落差を楽しむという類のものだ。

この峠の名前を山伏峠(やまぶしとうげ)にしているのは、現地(山梨県側)の道路標識でそういう表記(振り仮名込み)を見かけたからだが、国土地理院の地形図では、鞍部のそばのピークの名前は山伏(やんぶし)である。

雨畑湖ごしに見る残雪の布引岳

おれはこの峠に山梨県側から上ることにした。麓の雨畑(あまはた)のヴィラ雨畑という宿にキャンプ場があるということなので、それをあてにしていたのだが、前日現地に着いてみると、予約が必要とのこと。しかたがないので、ダム湖の吊橋を渡った先にある野鳥観察舎で野営をした。

翌朝はすっきりと晴れ。ダム湖の向こうに布引山が見える。あまり水はきれいではないのだが、そこに映る残雪の峰は、なかなかの絵を作っている。

さあ出発。標高は450m程度だから、1400mほど上ることになる。

小さな土産物屋が並ぶ集落を過ぎて進むと、5月20日まで冬期通行止の標識があった。んんー。結論をいえば、それでも突き進んでしまったわけだが、決していい行為とは言えないうえに、(あとで触れるように)道路はかなり危険な状態だったので、真似しないことをおすすめする。おれも少し反省している。


青空と新緑ゲート付近の新緑

舗装はやや荒れている。幅は1.5車線ほど。勾配はけっこうきつい。トンネルは数箇所あるが平坦である。

それにしても、山の新緑がまぶしい。空に向かってゆっくりと新緑のジグソーパズルのピースをはめていくような、そんな光景が広がる。ぽつぽつ集落があり、山に分け入っていくような道の雰囲気とあいまって、伊那の地蔵峠を思い出す。

ヤマブキやヤマザクラを楽しみつつしばらく行くと、舗装の状態がよくなり、最近舗装されたばかりであることが知れる。長畑の集落を過ぎた標高900m付近のところに、通行止と書かれた黄色いゲートがあった。で、脇を突破。


雨畑側 標高1750m付近

真新しいアスファルトの上りが続く。工事現場があり、重機が置いてあったりするから、普段は工事をしているのかもしれない。正面にはこれから越える鞍部が見える。また、逆光の中の左手斜面にはこれから上る道がへばりついている。かなりの高度差だ。

標高1200mを越えたあたりからダートが始まる。そのままダートが続くかと思ったがそんなことはなく、舗装もある。山腹をうねうねと折り返して上る区間があるが、勾配がかなり急なため、すぐ足元やすぐ頭上の道筋を眺める箇所はあまりない(扉峠と同じ)。

植生はゆっくりと遷移し、標高1700m付近からカラマツが多くなり、林床は笹で覆われるようになってきた。


雨畑側 標高1800m付近

鞍部の手前2kmほどは勾配が緩く、舗装も完了している。右手下方にさっき上ってきたはるか下方の道筋が見える。彼我の標高差は700〜800mもある。南アルプス主峰への眺めはあまりないのだが、この写真にはかろうじて東岳(悪沢岳)が写っている。距離は全然違うけれども、しらびそ峠の反対側から南アルプスを眺めていることになる。

鞍部が近づくにつれ、崖崩れやら残雪やらで道幅の大部分が埋まっている部分が多くなる。雪の上を避けて路肩を行くのだが、足元は落ちれば確実に死ぬ高さの崖だ。ガードレールがない箇所もある。

また黄色いゲートがあり、今度は残雪を足場にして上を乗り越えた。ようやく鞍部に到着。


井川側の下り

鞍部の反対側(井川側)は、広々とした山並みを眺め、雨畑側よりも多少開けた感じがする。舗装の路面もきれいで、本来ならまあまあ快走できそうな道なのだが、落石がひどく、あちらこちらで自転車を降りるはめになる。


土砂崩落地点

標高1600m付近では、崩落した土砂と倒木が小山のように道路をふさいでおり、おれは自転車を担いで汗みどろになりつつそれを通過した。これでは、オートバイも来ないわけだ。何というか、自転車乗りでよかったと思うひとときだ。


井川側 標高1000m付近

それを抜けると、ようやく気兼ねなく下りが楽しめる道路になる。下ってきた道筋の眺めが美しい。しばらく進むと、小河内川の渓谷が見えてくる。渓谷とヤマザクラ、実に見事な眺めである。

この写真は、散りかけの桜とはるか上方の道路を無理やりフレームに収めたもの。上に見えている道路との標高差は約400mで、雨畑側ほどではない。

井川湖畔まで下ると標高は700mを切る。こちらも水はあまりきれいではないが、湖の対岸(東側)の尾根や周囲の茶畑の眺めはなかなか楽しめた。

おれはこの日は千頭(本川根町の中心街)まで下ったのだが、井川湖よりも奥大井湖の湖畔走が疲れた(何と12%の上りのトンネルがあった! 旧道で回避できたけれども)。

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2003年5月22日初版 / 2015年1月8日更新