笹子峠
穏やかで味のある旧道峠
読み方 | ささごとうげ | |
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標高 | 1040m | |
位置 | 山梨県甲州市・大月市 | |
道路 | 山梨県道212号線 | |
水系 | 富士川・相模川 | |
実走日 | 2005年5月4日(水) | |
地図など | Google Maps・地図院地図 |
笹子峠は、甲府盆地の東側にある甲州街道の峠である。トンネル名にもなっているし、名産笹子餅も知られているから、峠の中では有名な部類に入ると思われる。
ここで紹介するのは、長大なトンネルで分水嶺を貫いている現在の国道20号線ではなく、その旧道である。旧道でありながら忘れ去られた峠道ではないところに、この峠道の持つ歴史に裏打ちされたほのかな魅力と強靭な生命力が感じられる。保福寺峠のような穏やかさと、大平峠のような歴史が同居する、なかなかいい峠だと思う。
この峠には甲府盆地側から上った。甲府盆地の東端である甲州市(旧勝沼町)の柏尾交差点(標高約460m)から国道20号線を走り、旧大和村の笹子峠旧道入口(標高約580m)に到着。ここまでの道のりは急峻ではなく、路肩もそれほど狭くなく(ただし白線に凹凸がついていていらつくが)、まずまず走りやすい。
旧道は最初だけ中央道の下を折り返しつつくぐり、車の音がうるさいのだが、やがて駒飼宿というちょっとだけクラシカルな旧宿場の集落にさしかかると静かになり、雰囲気が出てくる。駒飼宿を過ぎてまもなく、見晴らしベンチがあり、宿場を見下ろすことができる。
この写真の右に写っている自転車はToonoさんのMTBだ。この日はToonoさんと一緒に出かけたのだ。そういうわけで、この項にはToonoさんのサイトと同じような写真が出てくるかもしれないけれどご理解ください。
さてここから峠道の本番。とにかく空は春ながらに精一杯に青く、新緑は目にまぶしく、道路は静かである。路傍にはヤマブキとアケビが、山腹にはヤマザクラが、それぞれぽつぽつと咲いている。
眺望と呼べるものはほとんどないが、これから上る道やこれまで上ってきた道を見る箇所は随所にある。しかしただの豪快な上りではなく、自然歩道が分岐する箇所に峠道の歴史についての案内板があったりして、歴史と風格を感じさせる。
勾配は決してきつくない。いつの間にかどんどん標高を稼いでしまうという感じの走りやすい坂道だ。
標高1000m付近ではカーブの途中で桜が固まって咲いていた(植えてあったのかもしれない)。そこを通り過ぎてもしばらく、見下ろすとその一角は春の薄い陽射しの中でひときわ目立って見えていた。
鞍部の近くの左カーブの外側に東屋がある。上ってきたヘアピンカーブのちょっとした眺めがある。
それを過ぎればすぐに鞍部のトンネル。照明がなく真っ暗だし、路面はかなり悪い。抜けた先にはこのトンネルについての案内板がある。その説明によるとこのトンネルは登録有形文化財とのこと。確かに風格のあるポータルだ。ちなみにポータルは大月側の方が立派である。
トンネルからの大月側の下りの道は、西側よりも路面の状態が悪いが、雰囲気はあまり変わらない。ただし森が深くやや暗い感じか。
途中、名木矢立の杉がある。道路から右側に歩道を1分ほど入ると、狭い谷にとても太い(幹は空洞なのだが)スギの木が生えている。この名前の由来は、戦国時代、出陣前にこの幹に矢を打ち立てて武運を祈ったことだとか。気の毒な木……。ちなみに矢の跡は見てもわからない。
狭い緑いっぱいのワインディングを下っていくと、やがて左側から国道20号線が近づいてくる。合流点の標高は約700m。ここから大月側の国道20号線は、最初だけ7%や8%の下りがあるが、あとはまずまず緩い坂。そうはいってもかなり長い勾配なので、大月側から上るのは(笹子駅まで輪行するのでなければ)けっこうしんどいだろう。
大月の市街まで下ると標高は360m程度。
2004年10月17日初版 / 2005年5月15日差替 / 2017年7月6日更新