黒坂峠
明るい舗装林道の峠
読み方 | くろさかとうげ | |
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標高 | 1090m | |
位置 | 山梨県笛吹市 | |
道路 | 林道黒坂里道線 | |
水系 | 富士川 | |
実走日 | 2010年4月30日(金) | |
地図など | Google Maps・地図院地図 |
黒坂峠は、甲府盆地と芦川筋を分ける尾根を越える峠で、右左口峠と同じ尾根上に位置している。特に何の飾りもなく、細い舗装林道が穏やかな雰囲気の尾根を越えているだけである。位置的には眺望はいいはずだが、展望スポットのようなものがあるわけでもない。しかし、その素っ気のなさが、季節を感じながら探訪気分で走るにはかえってよさそうにも思える。
おれはこの峠を北側(甲府盆地側)から越えることにした。笛吹川の南を、県道313号線で南下する。まだ峠の麓に向かっているという段階のつもりだったが、境川に近づくにつれて坂がきつくなってきた。扇状地にさしかかってきたということのようだ。
境川の右岸の板額坂という交差点で左折して県道を離れ、なおも上る。ひたすらまっすぐ上り続けていると、小黒坂の集落の中に入っていた。どうやらコースはこれでいいようだ。
間断なく集落の中の上りは続く。道は狭めの2車線くらいあり、おおむねまっすぐで、振り返ると盆地とぼやけた八ヶ岳が見える。右手には南アルプスがある。
やがて道の脇にオオグロサカという文字列の形になった植え込みを見る。この辺まで来ると都市の近郊という雰囲気はやや薄れてくる。家々にはツツジやらシモクレンやらが花を咲かせている。
大黒坂の集落が終わると道は少しの間広い2車線になった。その脇にキャンプ場がある。それを過ぎて八反林の集落になると道はまた狭くなる。それどころか部分的にだがコンクリート舗装まで現れる。この辺はいよいよ扇状地の扇頂に近いようで、谷が狭くなってくる。やがて背後の眺めはすべて木々の間に消える。
そこから少し行くと林道 黒坂里道線の看板が立っている。それを過ぎるとワインディングが始まる。スギやヒノキの林と、その林床に輝くヤマブキの花。ガードレールはなく、木と木との間に下の段の路面が見える。……となると、長峰山にそっくりとしか言いようがない。
もう盆地も山も見えないのかと思っていたが、しばらく上ると樹間にそれらがちらちら見えるようになってきた。桜がぽつぽつ植えてあり、個体差がけっこうあるが、かろうじて花が残っているものもある。カラマツもあるのはいかにもこの地らしい。
地図上には執拗な連続ヘアピンが描かれているが、実際に走ってみるとあまり強烈な印象はない。勾配はむしろ緩くなっているし、カーブ間の距離が長いので、ぐねぐね曲がってばかりいるような感じがしないのだ。
やがて正面に鞍部付近のガードレールが見えてくる。その付近に林道名所山線の分岐がある。舗装工事中で通行止と看板が出ている。
結局展望が開けることのないまま、鞍部に到着。左側に山梨百名山 春日山(黒坂峠)の標柱が、右側に歌碑がそれぞれある。正面に見える山の上に、富士山が真っ白な頭を出しているのが見える(写真の右端)。
下り始める。こちら側には、並木というほどではないにせよ、桜の木がとても多い。右手に谷が広がり、家があるのが見える。谷の向こうにこれから下る道のガードレールが見えるような箇所もある。これは峠の北側にはなかったと思う。
しばらく行くと道は落ち葉や土が散乱したコンクリート舗装になり、一瞬道を間違えたのかとさえ思う。その心細い道を進んでいくと、大きな鉄ゲートで道が完全にふさがれている。えーと、なになに? ……このゲートは農地へのイノシシ除けのため設置してあります。通行後は、おそれいりますが元通りにしておいて下さい。中芦川区……何だか人間のほうが檻に入って生活しているようで、妙におかしい。
それを過ぎて豪快に下るとすぐに県道36号線にぶつかる。標高は770mほどもある。左折が芦川の上流側、右折が下流側である。
2010年7月8日初版