金波美峠

金波美峠は、上野原市の旧秋山村の、秋山川筋とその支流の安寺沢川筋を隔てる稜線上にある。車道が開削されたのは新しいようで、やや古めの地図には車道は載っていない。

普通の田舎の峠道かと思っていたのだが、実際に行ってみると、ゴルフ場の脇を行く変わったルートであり、ダートもあり、十分に個性的な峠道であった。峠としての手ごたえはそれほどあるわけではないので、探訪に向いていると言えそうだ。

おれは北側の秋山川筋から上った。秋山川を下流から遡ってきて、秋山カントリークラブゴルフ場の対岸を通り過ぎ、郵便局を過ぎて道路はきつい坂で上る。その途中で左折し、ゴルフ場の南脇を通る道に出ようとするが迷う。幾度か道を間違えた挙句、ようやくそれらしい沢沿いの道に出る。ゲートはないが通行もない。やや薄暗い林の中の1.5車線くらいの舗装路だ。上り始めの標高は380mほどか。

地形図によると、この峠へは、おれが走ろうとしているゴルフ場の南脇の道のほかに、東脇を行く道もあるようである。おれが前者を選んだのは、ゴルフ場の上を通る方が眺めがよかろうという判断である。

少し行くと路面はダートになった。これは意外な展開である。少し行くとまた道は舗装に。やがて道は折り返して秋山川の方へ向く。同時に左側の眺めが開けてくるが、見るとすぐそこがゴルフ場で、見下ろすというよりは脇を走っているような感じである。あちらの話し声がこちらにはよく聞こえる。

少し行くとまた道はダートに。なかなか楽しい気分である。

しばらくするとゴルフ場の東側を通ってきた道と合流する。ここからは林道金波美線ということで、舗装もされている。なお合流相手の道もダートであった。

ここまで来ると相当標高は高く、左手には秋山の市街地や折り重なる山影もよく見えてくる。それらが後方に去って、金波美トンネルに到着する。トンネルの竣工は1998年ということだから、ピカピカというわけではない。内部には照明がなく、ライトをつけて進む。

下りは新しい舗装である。これという展望はない。ガードレールはあるところとないところがあり、気を使う。やがて左下に道と小さな集落が見えてきた。道は安寺沢川沿いに下る道である。

その道に突き当たると林道金波美線は終わりである。静かな山里だ。標高は440mあまり。小さいが親切な標柱が立っているので、こちら側から来れば道を間違えることはないだろう。

ここでは右折すれば巖道峠まで330mの上り。左折すれば安寺沢川沿いに下る。おれは後者を選び、その静かな谷間の道をゆったり下った。