ホッチ峠
ムードの希薄なリゾート地の峠
読み方 | ほっちとうげ | |
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標高 | 1090m | |
位置 | 山梨県甲斐市 | |
道路 | 山梨県道27号線 | |
水系 | 富士川 | |
実走日 | 2009年5月9日(土) | |
地図など | Google Maps・地図院地図 |
ホッチ峠は甲府盆地の北西にあるローカルな峠である。位置は甲府盆地の北東にある太良ヶ峠と対称的だ。では太良ヶ峠に似た峠なのかというと、これがかなり違うのだ。
探訪派向けの峻険な田舎道の峠だった太良ヶ峠に対して、こちらは寂れたリゾート地の中を行くあまり峠らしくない峠である。展望も特によくはない。そういうわけで、わざわざこの峠だけを狙って出かけることは、あまりお勧めはしない。
この峠を西側から越えるとなると、韮崎から県道27号線をそのまま走っていくのがストレートだろうが、そんな立派そうな道を走っても面白くなさそうなので、おれはその北隣の畑の中の道を行くことにした。
まず韮崎の市街地から県道27号線を進み、河川敷に白いニセアカシアの花をたくさん咲かせた清冽な塩川を渡り、少し行ったところで左にそれて権現沢川を渡り、あとはその裏道をひたすら上るわけである。
少し行くと中央道の下をくぐり、畑の中の狭い2車線くらいの道になる。背後には南アルプス北端の山々が見える。写真に写っているのは左から薬師岳、観音岳、地蔵ヶ岳、アサヨ峰、そして甲斐駒。それに加え左前方には八ヶ岳が見えるがいかにも遠くて迫力がない。それから右後方には逆光の富士山が見える。……そしてそのどれも、麓の韮崎の街からよく見えるのだから、あまりありがたみはないのであった。
いずれにしても峠を目指すにしては珍しいコースには違いない。じりじり上る。陽射しは暑いが、側溝に水が勢いよく流れ涼しげな音を立てている。まばらな家の前を通るとあやめが咲いているくらいであまり花はない。
しばらく行くとスギ林の中の道になった。ポンプ場とかの小さな建物がぽつぽつあるだけである。やがて柳平で右から県道23号線が合流してくる。狭めの2車線くらいの道である。交通量は少ない。
しばらく耕作放棄地のような荒地の脇を進んでいくと、左側に小さな駐車場があって自動車が何台か停まっていた。ちょうど韮崎市と甲斐市の市境でもあり、←深田公園←マンジュウ峠の木の標柱も出ている。興味を引かれる峠の名前だが、徒歩道の峠のようだし、パスして進む。
ここまで来れば標高は900mを超えている。あまり実感はないが相当上ったのだ。ちなみに韮崎駅の標高は354.0mであった。
そこからもう少し行くと道は右に折り返して針路を東に取る。ここまで来れば峠は近い。やがてサーズリゾートクラブという看板が出ている一角に至る。あとはこの中を折り返して上っていくだけである。別荘地としては機能しているようだが、いわゆるリゾート施設的なものがあるのかどうかはよくわからない。静かなのだ。
ここまでしばらく眺望はなかったが、ここへ来て背後に南アルプスが見える箇所も出てくる。しかしそれも一瞬だ。やがて鞍部に到着。自然記念物 ホッチ峠のマンジュウ石という看板が出ていて、それだけがここがホッチ峠であるしるしである。看板によるとマンジュウ石というのは径1〜4cmで外側が黄褐色で内側が黒っぽいという、まさに饅頭のような石だそうである。看板の裏に露頭があるがどれがマンジュウ石なのかはよくわからない。
さて下りの道は広い2車線である。しかし路面に縦の溝が彫ってあるので気を使う。やがて左手に岩山である太刀岡山の特徴的な姿が見えてくる。右手には富士山だ。そのままコーナーをクリアして下ると今度は正面に南アルプスが見える。
敷島カントリー倶楽部の前を通過し、県道27号線は亀沢川の谷に向かって下りていくが、おれは安寺の集落を経由するルートを取る。最初だけ少し上るがあとはがんがん下る。1車線の明るい林の中の道だ。
やがて県道101号線に合流する。じきに谷が開けてきて、正面遠くのやや下方に甲府盆地を見下ろす。谷間に鯉のぼりが渡されているが、風がないので泳いでいない。
道はそのまま甲府盆地に下りていく。昇仙峡から流れてきた荒川の最初の橋(金石橋)まで来ればもう甲府の市街地のはずれである。標高は340mあまり。結局あまり峠を越えたという気のしない行程だった。
2009年6月4日初版