釣瓶落峠

秋田スギとブナの林を抜ける緩い峠

読み方つるべおとしとうげ
標高610m
位置秋田県山本郡藤里町・青森県中津軽郡西目屋村
道路秋田・青森県道317号線
水系米代川・岩木川

実走日2011年7月22日(金)
地図などGoogle Maps地図院地図

釣瓶落峠は秋田県と青森県の県境の、いわゆる白神山地の東側の尾根上にある。

とても懐の深い山並みを抜けていく道で、自然が濃い。秋田スギの天然林などもある。何も考えずに何となく走り抜けてしまえる峠道だとは思うが、そうではなく、そういう自然をゆっくり味わいつつ行く方が楽しいだろうと思う。ただクマには注意だ(書いといて何だが、どうやって注意すればいいんだろうね)。

勾配はそんなにきつくないが、青森県側にはダートが残っている。当分舗装はされないだろうと思われる。

藤琴川沿いの風景

二ツ井の市街地(二ツ井駅の標高は23.5m)を出て県道317号線に入り、藤琴川沿いの上りのコースをとる。実際には川沿いの区間はあまりない。ジーッとセミの声がする。道端にはアカツメクサが多い。交通量は意外と多いが、藤里町の中心街を過ぎると途端に通行がなくなった。

今度は川沿いになる。アユ釣りをしている人を見かける。谷は広くて浅い。正面にスキー場の斜面が見え、どことなく北海道風の風景だ。

途中に峨瓏(がろう)の滝がある。道路からほんの少しだけ入ると滝が流れ落ちている。涼しげだ。


真名子を過ぎたところにある看板藤琴川の渓流沿いに行く

さらに進み、真名子の集落を過ぎると道が狭くなる。ここから青森県境までの16kmがいかに危険に満ちているかを力説する面白い看板がある。

このあたりからは勾配もやや本格的になる。藤琴川は渓流となり美しい。道路沿いにはマタタビの白い葉がぽつぽつ見られる。まだ花が残っているのかなと思ったが、のぞいてみるともう実がなっている。青っぽいエゾアジサイの花や白いノリウツギの花も多い。サワグルミの青い実も見かける。


明るい林の中を行く

やがて赤いアーチの鉄橋で藤琴川の左岸から右岸に渡るのだが、その手前に太良(だいら)峡の案内看板がある。看板によるとこのあたりにはかつて鉱山があったという。峠の向こうにも尾太(おっぷ)鉱山というものがあったとのこと。今はまったく人気がないが……。

そこから道はじりじりと上り、やがてまた下り始める。太良峡入口の看板が出ている。遊歩道があるようだ。看板によると遊歩道はもう少し上流側からも入れるようなので、まずはそこまで進もうと思う。

それで少し進むと今度は秋田スギについての説明の看板がある。この周辺は秋田スギとブナの混交林になっていると書いてある。もちろん天然林だ。それであたりを見回すと確かにスギの木が多い。一方でブナよりはホオノキの方が目立つ気もするが。


太良峡

さらに進む。暑いのだが、真っ昼間からヒグラシが大合唱をしている。トンボもたくさん飛んでいるが、オニヤンマばかりのようだ。右手の眼下に森林鉄道か何かの跡であろう鉄橋を見る。

なお、森林鉄道があった(=人間が木を伐り出していた)ことと天然林であることは相反しない。天然林というのは、更新が天然更新によっている(造林していない)ものを指す。

やがて太良峡の上流側の入口に到着。水面まで高度差がありそうなので覚悟を決めて歩き出す。

数分歩いて川沿いに出ると、白っぽい岩の上を澄んだ水が盛大に流れているのが見える。巨岩や甌穴もある。なおさっき通過した下流側の入口へは、途中の一通橋というのが老朽化しているため通り抜けることはできないとのこと。

あとで考えると、さっき見下ろした鉄橋がその橋だったと考えるとつじつまが合うのだがどうだろうか。後述する鞍部の手前の看板によると、この遊歩道は木材を運び出した森林軌道の跡を活用したものだとのことだし。


橋を見上げる尾根上にて

さて続きを走る。少し行くと岳岱(だけだい)へ行く道との分岐がある。標識があるのだが、おれが行く県道317号線の行先は青森になっている。何と大雑把な。

勾配はけっこうきつくなる。やがて道は広くなり立派な橋で川を渡ってゆったりとしたカーブを描く。これもまた北海道の道のようだ。人の気配がまったくないので不気味でもある。ヒグラシの声ももうしない。

左手上方にこれまた立派な橋が架かっているのが見えてくる。左に折り返してその橋の上を走ると、また右手にこれから走る道があるのに気づく。今度は右に折り返して上る。すると尾根筋に出る。右も左も谷で、それらの向こうの斜面には白い地肌が目立つ。貉ヶ森山で見た御神楽岳を思い出す。豪雪地帯ということなのだろう。


鞍部のトンネル

またここにはここは釣瓶落峠ですという案内看板も出ている。それを過ぎるとじきに鞍部のトンネルだ(釣瓶トンネル、157m)。

トンネルを抜けると早くも川沿いの下りという感じで、豪快な区間はない。勾配も緩い。

……っと! おれはあわてて自転車を停めて前方を凝視する。前方の右側の路肩にクマがいる! どうしようか。引き返すことはたやすいが。

結局おれは何度も手を叩いてクマにこちらに人間がいることを認識させ、ヤツが道端の藪の中に姿を消したのを確認して、全力疾走でその脇を通過した。こんな対応でよかったのかどうかはわからない。


ほこりだらけのダートを行く

さて、道は整備されているが、川下りらしく軽いアップダウンがある。だいぶ下ったような気がする頃、ダートが始まった。川沿いの平らな感じのダートで、道幅も広い。深砂利には見えないがけっこう滑る。キャタピラで踏み固めた跡のようなものがあり、でこでことしている。

ダートに入って少し行くと、左側に大きな建物があった。尾太鉱山の鉱廃水処理施設ということのようだ。十部一峠の下にあったのもこういうものだったのだろうか。

さらに少し行くと右側に採石場があり、そこから先は路傍の風景がまるで褪色したカラー写真のような具合になる。つまりはほこりがすごいのだ。果たして少し行くとダンプが上ってきた。ものすごい砂塵とともに通過していく。

その後は舗装の区間や、舗装がいかれてダートになった区間が少しある。アップダウンも出てきた。砂子瀬(すなこせ)で県道28号線にぶつかるまで道の様子はそんな感じだった。メーターでの実測によればダートは9kmだった。砂子瀬の標高は190mあまり。

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2011年8月11日初版