杉峠
自然と生活感の充溢する田舎道峠
標高 | 420m | |
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位置 | 福島県耶麻郡西会津町・河沼郡柳津町・大沼郡三島町 | |
道路 | 国道400号線 | |
水系 | 阿賀野川 | |
実走日 | 2006年6月3日(土) | |
地図など | Google Maps・地図院地図 |
杉峠は、国道49号線沿いの大きな集落である野沢から、阿賀川の大支流である只見川の筋に、迂回することなく抜ける峠であり、利用価値はあるだろう。峠道としては、展望も手応えもない峠とはどういうものかを体現するような地味な道である。
個人的な話。ここは子どものときにドライブで通ったことがあり、そのときこんなめちゃくちゃな国道が世の中にあるんだと驚いたものだった。そして峠の向こうには古い駅舎の会津西方駅があった。再訪を果たして、結果からいえば、おれはどうやって驚いたのかを思い出すこともできなくなり、印象に残っていた駅舎もなくなっていたのであった。
野沢(野沢駅の標高は157.4m)から国道49号線を少し東に進むと、国道400号線が右に分岐する。大型車の通行が困難である旨の看板があり、杉峠の名前もそこにある。
しばらくは広狭混在の中を進む。集落はぷっつりと途切れてしまうことはない。人家の周りには非常にキリの木が多く、ちょうど花が盛りである。
野沢でよく見えていた飯豊連峰はしばらくの間後ろに見えるが、やがて姿を消す。
やがて道は確かに国道とは思えないような1車線そこそこの道になる。ぽつぽつとある集落はけっこう大きめで店なんかもある。いや普通の峠道なんだが、どこかに似ている……と考えて、ふと気付く。これは平丸峠に似ているのだ。
ちなみに写真に写っているのは五三八商店という店だが、その前にあるバス停は五三八前。こんなの北海道に行かなくてもあるんだね……。
最後の黒沢の集落を過ぎても道端の田んぼは続く。人家がなくなるとキリの花はほとんど見かけなくなるが、代わりにフジの花と桃色のタニウツギの花が登場。
当時、タニウツギという名前がわからず、母親に尋ねるとああ、ずくなしの花ねという返事だった。ずくなしというのは方言で根性なしくらいの意味だが、タニウツギは切花にしたときに水揚げがよくないのでそう呼ばれているとの由。
柳津町に入っても上りは続く。やがて浅い切り通しの鞍部を通過。鞍部であることを示す標識はない。
下りは本当に名前通りにスギ林の中。チープな大すべり台のような細かいヘアピンをクリアしていく。こちら側には全然集落はないが、一部に田んぼはあった。
やがて林の中の突き当たりに到着。国道400号線は右折である。
すぐに今度は三島町に入って、西方の集落にさしかかる。山腹にあるわりには道がまっすぐで不思議な感じ……と思っていると、地図に西方宿の文字を発見。宿場町だったのか。それらしいものは何もなくて、むしろ北海道の集落みたいと思ったりもしたのだが……。
西方宿からさらに下って、只見川沿いの会津西方駅に到着。古くて簡素な木造駅舎があった覚えがあったのだが、プレハブの駅舎に変わっていた。この駅の標高は240.3m。
むかしむかし、鉄道ジャーナルという雑誌に東京から帰ってみれば故郷の駅は無残…という記事が載っていた(1985年9月号)。これは古い駅舎を取り壊して貨車改造駅舎にしてしまった駅についての記事なのだが、その駅は同じ只見線の会津坂本駅だった!
2006年7月14日初版 / 2010年4月7日更新