新稲荷峠
おどろおどろしさもある緑の濃い峠
読み方 | しんいなりとうげ | |
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標高 | 680m | |
位置 | 福島県耶麻郡西会津町・喜多方市 | |
道路 | 福島県道383号線 | |
水系 | 阿賀野川 | |
実走日 | 2007年10月6日(土) | |
地図など | Google Maps・地図院地図 |
飯豊連峰の南麓の、わざわざ来るのでなければ通りかかることは絶対にないであろう山奥に、この新稲荷峠はある。樽口峠のような眺望はないだろうけどもしかしたら、と思って行ってみたがやはり特に眺望はなかった。
では特に行く価値はないのか。まあそうも言えるかもしれないが、ある意味で人通りのない山奥の東北の峠の典型でもあり、悪く書く材料もない。
ところでこの名前について。稲荷峠というのはこの峠の少し南側に確かにある。それに対して新しく開削した車道の峠なので新がついているのだろう。新がついている峠というと岐阜県の新軽岡峠が有名だろうが、ここにもあるよ、ということで。
おれは阿賀野川沿いの国道459号線を新潟側からやってきた。この道路はとても静かでどこか北海道風なので、興味のある人はぜひ走ってみよう。
この道路は福島県に入ってまもなく阿賀川(福島県内での名前)を離れて奥川の上流域に進路を変える。意外なほどあたりは開けていてのどかな田園となっている。その中に白亜の廃墟があり、奥川中学校とのこと。
真ヶ沢(まかざわ)で国道459号線を分けておれは県道383号線に入る。ちなみに国道をそのまま走ると水そば(味を付けないそば)で有名な宮古の集落がある。
この県道は2車線区間がけっこうあり、国道459号線よりもいい道なんじゃないかとも思える。きつくはないが上りが続く。ちらと正面に飯豊連峰が見える地点もある。極入(ごくにゅう)を過ぎると集落はなくなる。
やがて県道は橋を渡って新稲荷峠に向かっていくが、おれはすぐ先の弥平四郎の集落を覗いてみることにした。子どもの頃に地図で見て抱いた、不思議な名前とすごい山奥の立地という印象、そして大人になって知った、飯豊登山の基地という印象の双方に、惹かれるものがあった。
弥平四郎へは県道の橋のたもとの分岐から少し進めば到着だ。正面に飯豊連峰が見えるどんづまりの集落、というイメージだ。事前に抱いていたイメージとはだいぶ異なっている。ちなみに標高は430mほど。
さて引き返して新稲荷峠への上りにかかる。道幅は1.5車線程度。舗装は真新しい。ずっと沢水の音が寄り添う。木は植えてあるスギの木の他にはトチノキが目立つ。
それにしてもこの峠は路面で鮮やかな色の虫(たぶんムカデ)が死んでいたり、これまた鮮やかな色のイモムシやらでかいカエルやらがたたずんでいたりと、おどろおどろしさが感じられる。しまいには変な形の枯れ枝さえも暗示的に見えてくる。高野聖(泉鏡花)の世界のようだ(天生峠参照)。
折り返して上り始めると沢音は遠ざかり、秋の虫の声と鳥の声が相対的に大きくなってくる。しばらく行くと右手に折り重なる山影が見えてくる。
やがて急な左カーブの切り通しの鞍部に到着。眺望は特にない。
下りも道の状況は似たようなもので、飛ばすことはできない。途中、金属製のバーエンドグリップがかんかんに冷えていることに気づく。考えてみるとこの自転車で初めて迎える秋である。
しばらく下ると本川の水面が道路のすぐそばになる。水は澄んでいる。やがて本川を支流とする一ノ戸川にぶつかり(標高は350m)、今度はそれに沿って下る。一ノ戸川が阿賀川に合流するほとりに山都の街がある。そこまで下れば標高は200mを切る。なお途中にはいいでのゆという温泉施設がある。
2008年9月18日初版 / 2010年4月7日更新