十部一峠

山深く長いダート国道峠

読み方じゅうぶいちとうげ
標高870m
位置山形県最上郡大蔵村・寒河江市
道路国道458号線
水系最上川

実走日2009年9月27日(日)
地図などGoogle Maps地図院地図

十部一峠は、ダート国道である国道458号線の峠である。新庄市と寒河江市を結ぶ峠道といえなくもないが、両者の間には川沿いにいくらでもいい道があるので、そういう目的ではほとんど利用されていないだろう。

今となってはダート国道というだけでも大きな価値があるが、実際に行ってみると、その悪路ぶり(いい意味)だけでなく、山深さ、爽快さ、そして景観の美しさと、いろいろ書くべきことがある。豪雪地帯でもあり(山形県ならだいたいどこでもそうだが)、なかなか行きにくいのだが、おすすめの峠道である。

四ヶ村の棚田

新庄の市街からこの峠に向かうには国道458号線をずっと走っていけばいいわけだが、せっかくの機会なので四ヶ村の棚田を経由していくことにした。

県道330号線の烏川大橋で最上川を渡り、赤松の集落で左折する。ここには日本一の巨木 岩神権現のクロベの標柱があり目印になる。しばらく赤松川沿いの狭路を行く。途中で切れてしまうのではないかと思うほど頼りなげな道だ。

やがて平林の集落に到着。目の前が開けて左前方に見事な棚田を見上げる。ここからの道はツーリングマップルでもトレース可能ではあるが、できれば大縮尺の地図が欲しいところだ。おれは鼻欠倉の前を通って豊牧経由で国道458号線に取り付いた。豊牧には棚田の展望スポットがあり眺めは素晴らしい。


湯の台

寒風田で国道458号線に取り付く直前には北東方向に新庄の市街地が見下ろせる。かなり遠く感じる。国道への合流地点の標高は352mで、新庄駅の106.1mや烏川大橋の55mからはそこそこ上っている。

国道458号線は2車線ある。上り切ると湯の台という高原だ。がらんとしていて静かである。道の脇にはそば畑が広がり、ちょうど花の見頃である。

この日はあてもないまま肘折温泉で野営することにした。湯の台の434mの最高地点から下り始め、肘折トンネルを抜けて温泉への分岐に着くと標高は360mあまり。そして温泉街へやめてっとか何とか思いながら猛烈な勾配で下って、標高は290mまで下がる。

肘折の温泉街はなかなか風情があっていいのだが、銅山川の狭い谷間にあるので野営適地を探すのは大変だった。


渓谷沿いのダートを行く

さて翌朝は肘折温泉から上り始めた。国道458号線に戻って少し行くと、早くも道は1.5車線程度になる。同時に、この先 砂利道・幅員狭小区間ありという看板も出ている。

果たして、さらに少し行くとダートが始まった。砂利ダートではなく、路盤が剥き出しのような感じだ。雨後にはぬかるむようなタイプだ。しばらく、ダート部分と舗装部分が交互に現れる。勾配は緩く、ところどころでゆったり下るところもあるので、あまりダートの上りという感じはしない。

通行量はとても少ない。静かな朝の秋の山の雰囲気がとてもいい。路傍にはとてもトチノキが多い。ブナも見かける。ぽつぽつある真っ赤な葉はウルシの類か。


山腹の舗装路を行く

標高400m地点あたりだろうか。路面が舗装のままになる。祓川の左岸に渡ったあたりからはようやく勾配がきつくなってくる。路傍からはトチノキは減り、ダケカンバのような関東の里山の峠ではあまりお目にかかれない木が登場してくる。そんな中、リスが路面を駆けて横切っていく。

しばらく上り、標高850m付近の折り返しをクリアすると、もうまとまった上りはなくなった。麓にダートがあるところと、右に折り返してから稜線のトラバースに入るところは、二十曲峠によく似ている。今まで上ってきた背後の山並が見えるほか、はるか彼方に新庄の市街地がちらりと見える箇所もあった。


ダートからうっすらと月山を見る

やがて大師峠という標識が建っている一角に到着。地形図によれば大師峠というのは少し離れたところの徒歩道の峠であり、ここはそれにつながる尾根筋の基部の鞍部にあたる。

それを過ぎて少し行くと道はまたダートに。今度はけっこうでこぼこの大きいダートである。一部には舗装が剥がれてダートになったとおぼしき箇所もある。手入れをしてないとこうなるのだろうか。あるいは手入れをしていてもこうなのか。

行く手にうっすらと浮かぶ月山の姿を見つつ進むと、道は再び舗装に。あとは快走で鞍部に到着。


鞍部

鞍部にはさっきの大師峠と同類の標識があり十部一峠と書いてある。休んでいると反対側から来た山形ナンバーのバイクのおじさんに声をかけられた。

そのおじさんによると、この峠から左へとかなりの悪路を下りたところには鉱山(永松鉱山)の跡があるそうだ。かつては数千人の人口があり小学校もあったが今は無人だとのこと。また今でも鉱毒水を処理する施設があるとも教えてくれた。


寒河江側の下り

20分ほど話したろうか。そのおじさんはあーさて肘折温泉に入りに行かないとと言って去っていった。こちらも出発することにする。

寒河江側の下りは大蔵側よりもやや開けた感じか。ただ遠くの山並みや市街地は見通せない。しばらく下り、谷底が近づくと短いダートの区間がある。3箇所目はダートそのものは短いものの、その前後がかなり荒れた舗装になっている。これではダートとあまり変わらない。

やがて道はきれいな谷川沿いの道になる。坦々と走って、国道112号線にぶつかる。ここまで来れば標高は160mほど。右に曲がれば月山道路だし、左に曲がれば山形盆地だ。いずれにしても寒河江川沿いにサイクリングロードがあるので活用しよう。

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2009年11月12日初版