御霊櫃峠

好展望観光峠

読み方ごれいびつとうげ
標高870m
位置福島県郡山市
水系阿賀野川・阿武隈川

実走日2010年10月2日(土)
地図などGoogle Maps地図院地図

御霊櫃峠は、福島県の会津と中通りを隔てる尾根上にある林道の観光峠である。鞍部からの眺望は素晴らしく、西には猪苗代湖を、北西には磐梯山を(あたまだけだが)、東には郡山盆地をそれぞれ眺めることができる。

観光客のやや多い峠ではあるが、自然境の雰囲気が濃く、峠名には古い(平安時代の)いわれがあり、しかも猪苗代湖側から上るとかなり楽なので、多くの人におすすめできる峠だと思う。

猪苗代湖岸から布引山を見る

おれは猪苗代湖側から上った。国道49号線の上戸から県道9号線を南下する。右手に猪苗代湖が続く。後ろには磐梯山がちらちらと見える。前方の、まるでやすりで削り落としたかのように真っ平らな布引山の稜線の眺めも面白い。また風力発電の風車が並んでいるのが遠目にもわかる。

浜路という集落まで来ると県道は湖岸から少し離れる。湖岸道路というものが右に分かれているのだが、御霊櫃峠に行くならばそれに入らず直進しなければならない。

やがてそば畑の脇に真新しい案内標識が出ており、←御霊びつ峠 6kmと書いてある。櫃がひらがななのは漢字が難しいからだろう。


明るい林の中の上り

さて峠道の開始である。最初はそば畑と黄色い刈り取り中の田んぼの中を行く。じきに道は谷間の上りになる。道は1.5車線ほどで、極端に狭いわけではないものの、随所に待避所がある。やがて民有林林道 ごれいびつ線の標識が出ているのを見る。おそらく本当の林道名は漢字なのだろうと思うが。

やがて折り返しての登坂が始まる。勾配自体は緩やかである。ヘアピンカーブをぐいと曲がるたびに空が広く、尾根が近くなるのは楽しい。地図を見ると道が同じ斜面を折り返しているのがわかるものの、実際に走ってみるとその上下段は目に入らない。木に覆われる区間はなく、道路はとても明るい。ウルシの仲間なのか、葉が赤くなってきた木も一部にある。真っ赤な実をつけているのはガマズミか。


猪苗代湖を見つつ上る

やがてこれまで上ってきたV字型の谷間の向こうに猪苗代湖が見えてくる。湖岸で見ていたときと同様に、青く美しい。

猪苗代湖は常に見え続けるわけではなく、ちらちらと見えるという感じである。


鞍部直下

しばらく行くと、正面に鞍部が見えてきた。駐車場があるようで、車がたくさん停まっている。これまでの交通量(ほとんどなかった)からすると意外である。いずれにしてももう少しだ。


鞍部から西側の眺め

やがて鞍部に到着する。西側には、今まで上ってきた道の眺めと猪苗代湖の眺めが素晴らしい。浜路の集落も見える。ということは浜路でよく見れば鞍部がどこかわかったのか。

猪苗代湖の眺めがいいといっても、美幌峠のように湖の形がわかるわけではない。あくまで谷の奥に水面が見えるだけである。


鞍部から東側の眺め

鞍部の東側の展望も同じように谷間の向こうに市街地が見えるという程度かと思ったのだが、実際に鞍部に到達してみてとても驚く。左から右まで非常に広い角度で郡山盆地が見えている。

鞍部には駐車場のほかにトイレがある。尾根沿いに北へ向かう登山道が延びており、歩いている人が多い。おれもそれを見習って歩いてみる。なかなかきつい坂だ。白い石が敷きつめられていて歩きにくい。道の両脇はツツジの低木であり、眺めはいい。数分上ると広場に到達する。ここからの眺めは最高である。西側には、よく見ると磐梯山が頭を出しているし、東側にはこれから下る道も見えている。


案内看板

さらに尾根伝いに先に進む道もあるが、おれはここで引き返す。鞍部に戻ると、あまり目立たないが案内看板があり、峠名の由来が書いてある。

いわく、前九年の役で源義家に従った鎌倉権五郎景政が、近くの賊徒を征伐したことからその御霊を御霊櫃峠ふもと近くの神社に祀った。その後災害が相次いだため、山中の櫃の形をした大石に神霊をうつして祈願したところ、五穀が豊かに実ったので、それ以来、里人はこの石を御霊櫃石と崇め、この峠を御霊櫃峠と呼ぶようになった

その石が今どこにあるのかについては、何も書いていない。なお、この一帯がヤマツツジの名所であるということも書かれている。


稜線を見つつ下る

さて下り始める。ちらちらと盆地の眺めがあるが、上りと異なり、こちら側には薄暗い林の中の区間が多い。道は強烈に折り返して下るが、上の段のガードレールもよく見える。下草や潅木が少ないせいか。なお、この付近では徒歩道と交錯するので、歩行者に気をつける必要がある。

しばらく下り、集落が始まる。キンモクセイの香りが漂う。高篠山森林公園の前を過ぎ、突き当たりを右折して郡山の市街地へ向かう。振り返るとここにも民有林林道 ごれいびつ線の標識があるほか、←御霊櫃林道と書いてある標識もあるのだが、後者の林道という字には塗り潰した跡がある。もう林道ではないのだろうか。

ここからは田園とまばらな集落が続く。稲の刈り取りが盛んである。道は盆地の中央部までだらだらと下り続けるのだが、峠道としてはさっきの突き当たりのあたりで終わりというところだろう。

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2010年12月2日初版