山毛欅峠
無人のハイウェイ峠
読み方 | ぶなとうげ | |
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標高 | 720m | |
位置 | 山形県西村山郡朝日町・大江町 | |
道路 | 林道真室川・小国線 | |
水系 | 最上川 | |
実走日 | 2015年7月11日(土) | |
地図など | Google Maps・地図院地図 |
山毛欅峠は愛染峠と同様に朝日連峰の東側にある峠で、また同様にあまり人気のないところにある峠である。町から町へ、集落から集落へという連絡路としての利用価値はあまりなさそうだ。北側にある古寺鉱泉が秘湯として知られており、ぽつぽつ観光客を集めてはいるが、おそらくそこへ来る人の多くは北側(山毛欅峠の反対側)から来るだろうと思われる。そういうわけでほとんど通行はない。
では朝日連峰の自然の中の静かないい峠か、というと、どうだろうか。麓はともかく峠道自体はよく整備されていて、今ひとつ風情は感じられない。
ちなみに、十部一峠の鞍部で出会った地元のバイクのおじさんは、この峠道についてああ、あれは高速道路だねぇと話していて、そのときはどういう意味だろうと思ったのだが、実際に行ってみるとなるほどという感じだった。
なお、この峠の北側には、川沿いに下りる車道がないので、自然と北隣の地蔵峠との連発になる。しかしあまり山毛欅峠と地蔵峠の間のくぼみは深くなく、大した落差はないので楽だろう。
おれはこの峠を南から(朝日町側から)越えた。この峠は愛染峠の北にあり、それと連戦するのに都合のいい位置にあるが、今回はそうはせずに最上川沿いからはるばるとこの峠を目指した。前に愛染峠を越えたときも山毛欅峠との連戦はせずに最上川沿いに下りてしまったので、今回は最初のうちはそのときと同じ道を逆向きに走ったわけである。
最上川の左岸には県道9号線という道が通っており、山毛欅峠と愛染峠に行くには、そこから西にそれて県道289号線を行くわけであるが、南から来たのであれば、松程トンネルというトンネルを抜けてすぐの交差点で左折をすると少し近道ができる。田んぼの中をゆっくり上る。正面は深い緑の山だ。
太郎で県道298号線にぶつかってショートカット路は終わり。標高は210mほど。
しばらく集落が切れない中をじりじりと進む。やがて右にAsahi自然観(スキー場などがある)に行く道が分かれる。ここから先は朝日川沿いのとても狭い道になっている。その入口にはオカトラノオが群生している。珍しいものではないけれど、自生のものは初めて見たと思う。
さて行こう。朝日川の渓流沿いの道で、水音はとてもよく聞こえるが、さっきまで最上川沿いで響いていたセミの声はしないようである。
少し行くと今度はオオバギボウシが群生しているのを見る。これも自生は初めて見た。ぽつぽつと膨らんだユリのつぼみを見かけるが、咲いているものはないので、どんな花なのかは残念ながら見当がつかない。一方で、もうとうに花は終わっているが、おそらくはチゴユリのであろう葉はたくさん見かける。
しばらく行くと橋を渡って朝日川の左岸に移る。このあたりだったか、正面に残雪の山が見えた。朝日連峰に間違いない。木川ダムを過ぎると舗装が荒れ始める。荒れている区間もある、ではなく、ずっとほとんどダートのように荒れっぱなしである。
やがて大規模林道の入口に到着。標高は380mほど。ここを直進すると細い県道で愛染峠に向かい、右にそれると大規模林道で山毛欅峠に向かう。右を見ると広く明るい舗装路がドーッと一気に上っていて、日陰がなくどう見ても暑そうである。
ちなみにここには大規模林道の標識が出ていて、それによると名前は大規模林道 真室川・小国線 大江・朝日区間となっている。
人通りのほとんどない2車線のドーッとした道を行く。猛烈に暑い。想像通り日陰はほとんどないのだが、法面を盛大に削っているので場所によっては逆に日陰が連続する区間もある。
途中で右に旧道とおぼしきダートが分岐しているが、入口にはロープが渡してあって閉鎖してある。入口の脇には地蔵峠 林道とか書いた標柱がある。
道端には水色のエゾアジサイがぽつぽつある。東北の日本海側の峠であるからタニウツギがいっぱいあることを想像していたが、ほとんど見かけることはなかったように思う(初夏の花だからもう咲いてはいないにせよ、株自体を)。
未成熟な赤とんぼをよく見かける。上っていくとヒグラシの声がする一角もあった。
全然眺望のない道だ。釣瓶落峠に雰囲気は似ている。
しばらく行くと右手上方に鞍部が見えてくる。たいした距離ではないが、ともかくつらい。途中でハンドルに突っ伏して休憩を入れる。こういうことをするときは調子が悪いのだ。暑すぎたのだろう。
やがて鞍部に到着。伐採作業中と書いてある林業会社の看板以外、看板の類はない。
下りも道は似ている。下り始めてすぐ左側に駐車場があり、看板が出ているが、スノーモービルで山に入るのはご遠慮ください、くらいのことが書いてあるだけだ。
その直後、正面遠くに残雪の山が見えてくる。今調べると月山とかではなく障子ヶ岳という山のようだ。そのあたりには道端に丸太が大量に井桁に積んであり、そばを通ると木の香りがする。
そのあとは右側の眺めが少し開けるところもあるが、下りは短い。道はじきに少し開けた谷間に出る。古寺(こでら)の集落だ。もっとも、集落というほど人家がたくさんあるわけではない。左には魚の孵化場か何かの大きな建物があり、右には古寺緑地休養施設がある。標高は540mあまり。
なおこの地点は古寺鉱泉への入口でもあり、秘湯というわりにはぽつぽつ自動車の出入りを見かける。
ちなみにおれは古寺緑地休養施設で野営をした。立派な名前だが、要は無人のキャンプ場である。なかなかの穴場だと思う。
2015年8月20日初版