赤崩山
落葉樹林帯を抜ける県境のダート峠
読み方 | あかくずれやま | |
---|---|---|
標高 | 1040m | |
位置 | 福島県喜多方市・山形県西置賜郡飯豊町 | |
道路 | 林道五枚沢線(福島県側から鞍部まで)・林道赤崩線(鞍部から谷地平まで)・林道葡萄沢線(谷地平から葡萄沢の谷底まで) | |
水系 | 阿賀野川・最上川 | |
実走日 | 2007年10月7日(日) | |
地図など | Google Maps・地図院地図 |
赤崩山は、喜多方市の北部、昔の熱塩加納村と、山形県の飯豊町を隔てる稜線上にある山である。ここで取り上げるのは、その山頂の直下の鞍部を越える林道の峠である。峠としては国道121号線の大峠の西隣にあたる。鉄道好きな人には磐越西線沿線と米坂線沿線を結ぶといえばわかりやすいか。
天気があまりよくなかったせいもあろうが、どこか陰鬱な峠道という印象だった。それともそれは秋の東北の風趣というものか。なお青崩峠と同じく名前通りの崩れが存在し、道はそのそばを通過する。
この日は山都の森林スポーツ公園のキャンプ場を出発。五枚沢川沿いに賢谷まで進み、そこから県道335号線で村杉経由で進む。走れど走れど人気のない森の中の狭路なのでいささかあせる。川上りのはずだが異様にアップダウンがきつい。工事区間もある。
やがて塩ノ沢で突き当たりに到達。左折して北上する。最初だけ少し下る。しばらく行くと峠の前の最後の集落である五枚沢を通過する。標高は410mほど。このへんの道はやや複雑なので大縮尺の地図があれば助かるだろう。
五枚沢の集落を過ぎると、林道五枚沢線の木の標柱が立ち、ダートが始まった。いきなりである。
だんだん空は曇ってくる。川沿いの林の中のまずまず走りやすいダートが続く。交通量はいたって少ないが、それでも前日に走った新稲荷峠よりは多いかもしれない。路傍にはトチノキやホオノキに交じって、ブナの木も目立つ。白っぽい地衣類に幹を覆われた、少々陰鬱な感じの木である。
私事だが、これは自転車を2007年春に新調してから初めての大荷物ダート峠越えだった。そもそも、前年の貉ヶ森山はテントがなかったから、フル装備でのダート峠越えは大弛峠以来か。ランドナー時代と違ってリアに荷物が偏っているのでパンクの危険が高いわけだが、この日は途中でポンプを忘れたのに気づき背筋が寒くなった覚えがある。
ヘアピンカーブを繰り返して上り、谷底から離れる。やがて正面に鞍部が見えてくる。もうあまり標高差は感じない。鞍部の脇には赤っぽい崖が見える。赤崩山。なるほど……。
上がるに従って、路傍には赤く色づいたウルシの木が目立ってくる。左手には深い谷が広がり、背後の方面に山影の折り重なる眺めが見える。あちらはまだ晴れらしい。
やがて鞍部に到着。鞍部のすぐ手前の右側には、下からもよく見えていた赤い崖がある。
ここは水系の境であり、県境でもあるが、標高は970mで、今回の最高所ではない。
鞍部から少し下ると左に道が分かれている。まっすぐ行けば沢沿いに里へ下りることもできるようだが、おれは左折して葡萄沢沿いの降下を目指す。
左折すると左手に湿地帯を少し見る。地形図には谷地平という名前が出ている。曇天の下のそれは陰鬱でまた少々不気味でもある。
そしてまた上りが開始される。湯峠と同じように地面にゴムの板がはめられている。のんびり上ると、道端には赤い葉のウルシの木だけでなく、赤い実をつけている木もあるのに気づく。少なくともそのうちの一部はナナカマドのようである。札幌や松本に住んでいたときには街でよく見た木だけに懐かしい。
少し行くと再度鞍部に到達。ここが1040mの最高所であり、谷地平のあった広河原川筋とこれから下る葡萄沢の属する置賜白川本流筋の分水界でもある。
ゆっくり下っていくと右手にこれから下っていく道のりが見下ろせる。広い舗装路のようである。
やがて葡萄沢の谷底の舗装路に到着。広くて路面のきれいな舗装路だ。左手を見ると立派な飯豊トンネルが口をあけている。これ、通過できるのだろうか。
ここからは舗装路を快走で下る。人気のない立派な谷間の道路に、左側の崖からこぼれ落ちてきた岩屑が散らばっている。何だか少し不気味な感じだ。路面はところどころ斜面から流れ出てきた薄い水の膜に覆われており、その上を高速で通過すると時間差で顔面に水しぶきを浴びる。
やがて立派なゲートがあった。ここまでの道は10月6日15時から全面通行止だったらしい(いや、反対側にはそんな掲示はなかったけれども)。おれは自転車を担いでゲートを突破する。
そこからは置賜白川沿いの下り。少しだが田園が開けて稲刈りなどをしているところもある。意外と集落は大きく、また民宿も多い。米沢盆地までの下りはおおむね快走だがかなり長い。
2008年9月4日初版 / 2010年4月7日更新