地芳峠
四国カルストに上る急峻な未整備国道峠
読み方 | じよしとうげ | |
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標高 | 1090m | |
位置 | 高知県高岡郡檮原町・愛媛県上浮穴郡久万高原町 | |
道路 | 国道440号線 | |
水系 | 渡川・仁淀川 | |
実走日 | 2009年6月16日(火) | |
地図など | Google Maps・地図院地図 | |
関連書籍 | 日本百名峠 |
地芳峠は高知県と愛媛県の県境にある国道の峠である。峠のどちら側にも特に大きな都市はなく、交通量は極めて少なく、道自体も未整備な区間が多く残っている。細かいところはいろいろ違うが、京柱峠に似ているといえば似ている。
この峠は四国カルストの縦走路の入口にもなっている。それにもかかわらず交通量が少ないのは、四国カルストに上る道は別にあって(特に天狗高原に直登する公団幹線林道は立派である)、そちらが使われているからだろう。
地芳峠の峠道には険しい雰囲気がなかなかあるし、眺望も悪いというわけではない。しかしやはり、もしもこの峠を通るならば、四国カルストに立ち寄らないともったいないような気がする。天気がよければぜひ。
なお、2010年11月13日に大規模な新道(地芳道路)の全面的な供用が開始された。峠は2990mの長大な地芳トンネルで抜けている。おれが行ったときにはまだ一部分のみの供用で、トンネルも通れなかった。
おれはこの峠へは南の檮原(ゆすはら。ただし現地では梼原という表記ばかり見る)側から上った。檮原の市街地は小さいながらもスーパーがあり、食料の調達は可能である。標高は500mほど。
しばらくの間は整備された2車線の道が続く。ところどころ旧道も残っている。渓谷は美しい。しばらく行って越知面では少し集落が開ける。左折していよいよ四国カルストの山脈に正対する。
そこからは旧道が右に分かれており、おれはそれを走った。恐ろしく立派な新道の高架橋の下を折り返し、新道に上りつく。途中、井の谷の集落へ行く道との分岐が少々わかりにくかった。
新道に出ると正面に四国カルストらしい草原の稜線が見える。そしてその山腹を行く道筋も。それほどの遠さも標高差も感じない。行ったろうじゃないかの気分である。
そこからは少しの間、旧道をつぶして新道にした区間がメインである。少し行き、夫婦橋の手前で先をよく見て右の旧道にそれる。そして新道の下を2回くぐって永野の集落へ。あまりにも立派な新道のせいであまり山里の風情を感じない。
地芳トンネルの手前で旧道が再度新道の下をくぐるところで、←地芳峠 地芳峠(近道)→というような標識が出ている。いったいどうしろというのだろうか。瞽女ヶ峠みたいだ。少し考えて、右の近道を選ぶ。標高は660mほど。
集落の中の急斜面を折り返して上る。道路の勾配自体が極端に急だということはないが、地形は急峻である。標高が750mを越えたところで国道に再合流。暗い林の中を上って今度は峰の段の集落へ。名栗の山伏峠を思わせる道筋だ。それにしてもこの峠は上っても上っても眼下に永野付近の新道が見えるのであまり上った気がしない。
交通量はとても少ない。
そこからはまた林の中が多い。下から見たときは草原の中の道筋が見えたんだがなあと思う(あとで調べるとそれは牛越の尾根下を行く県道であって、地芳峠の峠道ではない)。林の中には白い可憐な花を枝がしなるほどたくさん咲かせた木が多い。最初は何なのか見当がつかなかったのだが、あとで考えるとこれはウツギだろう。
鞍部の手前には折り返して上ってきた道の眺めがいい箇所がある。やがて広々した鞍部に到着。
左には駐車場のような空き地と除雪基地のようなシャッターのある建物がある。水道もあるからこの空き地で野営をやってやれないことはないかもしれない。石碑は2つあるが、一方は四国カルストでもう一方は地芳荘である。
峠の上りはこれで終わりだが、おれは四国カルストを縦走して天狗高原まで行こうと考えているので、あと350mかそこらの上りが待っているわけだ。休憩して気合を入れ直す。
四国カルストの縦走路は地芳峠の峠道そのものではないので、簡単な説明にとどめておく。おれは地芳峠から天狗高原まで行き、天狗高原ではキャンプをして、翌朝また地芳峠に戻ってくるという行程で進んだ。
何しろ眺望はいいし、カルスト台地の異様な雰囲気は面白いし、環水平アーク(当時は彩雲だと思ったが)だのブロッケンの妖怪だの雲海だのは見られるしで、大人げなくはしゃいだ半日となったのであった。
翌朝はのんびり走って天狗高原から地芳峠までは30分ちょっと。下りが主体だからこうなのであり、地芳峠から天狗高原まではもっとかかる。
さて地芳峠に戻ってきて北側へ下り始める。北側は鞍部を過ぎても少し上りが続くがそれは長くはない。
やがて道は下り始める。眺望はほとんどない。薄暗い林の中が多い。上りで見たウツギはここにも多い。地芳谷川の谷に下りていくと、すっと気温が下がるのを感じる。
何箇所かでトンネルの工事か何かをしている。おれは快調にそれをクリアして下る。今度は気温がどんどん上がってくるのを感じる。下界は暑いぜ……などと思う。
やがて古味の県道52号線の分岐に到着。標高は570mほど。おれは県道52号線に入って獅子越峠を目指す。
そういえば結局新道がこちら側ではどこで合流したのかわからなかった。……このときはそう思ったのだが、新道が未開通であることをあとで知り、驚き呆れた。うーむ、それでこの交通量とは……。
2009年9月3日初版 / 2015年1月8日更新