法華津峠
海と耕地の大風景のある峠
読み方 | ほけつとうげ | |
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標高 | 420m | |
位置 | 愛媛県西予市・宇和島市 | |
水系 | 肱川・成谷川 | |
実走日 | 2014年9月14日(日) | |
地図など | Google Maps・地図院地図 |
予讃線(鉄道)で宇和島に向かったことのある人は、宇和島の手前で、それまでの盆地の風景が一変し、トンネルと明かり区間がちらちらと断続する中に宇和海を見つつ猛烈な勢いで下るという、けっこう印象的な箇所があったのを覚えているのではないだろうか? (正直に言えば、おれはその向きに乗ったことはないが。)
その区間をトンネルを使わずにクリアする車道がこの法華津峠の道である。と来れば、どうだろうか、眺めがよさそうに思えるのではないかと思うけれども、そしてそれは実際その通りなのだ。
しかし、ここからの眺めは、単に雄大な海の眺め、というのとは全然違う。もっと、人間の営みを目の当たりにするような、温かくて愛しい、そういう眺めだと感じた。八幡浜あるいは大洲と宇和島の間を、狭苦しくて交通量の多い国道56号線で行こうとする自転車野郎は、ぜひこの記事を読んで考え直してもらいたい。
ところで、この峠の名前の読み方は、国土地理院によればほけづのようだが、現地で見たのはほけつだけだった。まあどちらでもいいのだろう。
おれは峠の北側の西予市側から、峠の南の宇和島市に向かって峠を越えた。峠の北側は肱川の上流域の盆地になっていて、海が近いのにもかかわらず標高はけっこう高い。例えば卯之町駅の標高は207.8mもある。
卯之町駅の前の国道56号線を南下し、予讃線の下をくぐったところで右にそれ、県道45号線に入る。広いが交通量の少ない静かな道だ。
少し行くと左に集落道のようなものが分かれており、←法華津峠展望台の標識が出ている。大縮尺の地図を持ってきていないのでこれはありがたい。左折してそれに入る。
道幅は1.5車線ほどか。おそらくは国道56号線の旧道なのだろうが、舗装は真新しい。スギ林の中の区間があり、茶畑の脇を行くところもある。ツクツクボウシの声がする。国道56号線の騒音も。まあ典型的な里山の峠道という風情だ。
田んぼを見下ろしたりしつつ行くとやがてツクツクボウシの声は薄れていく。
やがて鞍部に到着。錆びた法華津峠 標高436Mの標識があり、道路の風格を少し感じさせる。
ここは林の中の切り通しで、眺望はまったくない。
ほんの少し下ると右に林道が分かれており、↑法華津峠展望台 0.3kmの看板がある。それに従って少し下ると林の中のカーブに東屋と法華津峠の石碑がある。えーこれが展望台なんですか、何にも展望ないんですけど! と思ったが、展望台はそこから少し右に入ったところにあった。
大きな木の法華津峠の看板やコンクリートの展望台がある。その先は岩場になっていた。青い宇和海とそこに突き出た半島、そして小さな島が見える。思わず、うぉっとか何とか声を出してしまったのだが、岩場の先端部におじさんが座っていて恥ずかしい思いをした。
ところで、ここの岩場には歌碑があり、自転車を入れて写真を撮ろうとするとどうしても入ってしまう。この写真にも写っている。
しかしちょっと待って、冒頭に書いた通り、ここの眺めの本当に素晴らしいところは海じゃないのだ。
岩場の縁に近づくと、それまで気づかなかった足元のみかん畑が突然目に入ってくる。その中を縦横に縫う道筋も。耕して天に至る……を見下ろしている感じだろうか。
見ているとその中をカーブして伸びている線路の上を気動車が上がってくる。カメラでその様子をズームアップしてのぞいてみると、まるで鉄道模型のシーナリーのように見える。
もう少し用語を使って書くと、上がってきたのはキハ32の単行だった。ちなみに線路はこの写真の下の方に写っている(この写真の時点では列車はいない)。
さて出発としよう。随所で海を見、みかん畑をかすめて下りていく。予想通りだが上りよりも開放的な道だ。路傍にはみかん畑モノレールのレールや車両をぽつぽつ見かける。海に飛び出すようなカーブではまだキョウチクトウのピンクの花が咲いている。そんな、人里の縁の部分を下るような道が続く。
やがて谷の中で国道56号線にぶつかる。標高は70mほど。おれはここから宇和島の市街地には出ずに西の法花津湾に出ることにした。国道を南下して県道271号線に入ればいいのだが、そこまで南下しないで予讃線の下をくぐる、とても狭いショートカット路があり、それを通った。
2014年10月16日初版