しらびそ峠
大迫力の南アルプスと山村の景観が強烈な観光峠
読み方 | しらびそとうげ | |
---|---|---|
標高 | 1910m | |
位置 | 長野県飯田市 | |
水系 | 天竜川 | |
実走日 | 2002年10月13日(日) | |
地図など | Google Maps・地図院地図 | |
関連書籍 | 信州百峠 |
しらびそ峠は南アルプスの西側の前衛の尾根にある峠である。道路は未整備だが舗装はされている。南アルプスをはじめとしてとてもスケールの大きな展望があり、南側の麓には秘境めいた雰囲気の下栗という集落があって、いろいろと楽しい峠道だと思う。まあ、自転車で行くのはいろいろと苦労が多いわけだが……。
よくないところは、峠とはいいながら、鞍部の反対側に下りることができないこと(つまり、尾根の同じ側に下りるしかない)。そして、観光化されていて交通量が多いこと。後者については、地蔵峠のような静けさを期待して行けば、確実に肩透かしを食うと思われる。
最初おれは全然知らなかったのだが、しらびそというのは針葉樹の名前である。実際に生えていたかどうかは、……わかりません。
おれはこの日の朝、大鹿村の大河原を出て、地蔵峠に上り、その鞍部で少し休憩を入れてからこの峠への登坂を開始した。
明るい林の中を上っていく。分水嶺の南側なので陽が射している。ちらちらと右側に上村川の谷とその向こう側の山並みが見える。広々した景観だ。やがていったん道は下りに転じて分岐に到達。まっすぐ行けば程野に下りるわけだが、おれは左側にそれてしらびそ峠を目指す。
上るにつれて、上村川の谷の向こうの稜線が徐々に低くなっていき、その向こうに中央アルプスの稜線が見えてくる。この鉛直方向のスケール感が何ともいえない。最高の道路といえるだろうが、交通量が多い。程野から上ってくる自動車が多いようだ。
上り勾配はそれほどきつくはない。少し盛りには早いが紅葉が青空に映えている。標高のせいか青空は恐ろしく青く、気温は高くないが陽射しが強烈だ。
やがて目の前に鞍部とその右側の建物が見えてくる。建物はハイランドしらびそだろう。
やがて鞍部に到着。左側に小さな駐車場があるが車でいっぱいだ。
鞍部の向こうには、谷を1つ隔てて南アルプスが峰を連ねる素晴らしい眺望が広がる。左から荒川岳、あたまの丸い大沢岳、そしていちばん高い兎岳と並ぶ。ちなみに、これ以降もしばらく南アルプスの眺めのいい区間は続く。
この駐車場にはしらびそ峠 標高1833米の看板がある(たぶんこの数値は正確だと思う)。鞍部ではのんびり昼食でも食べようと思っていたのだが、車がひっきりなしに出たり入ったりして、あまり休憩には適していない。それで、今日の最高所のしらびそ高原への坂を上る。これが案外きつい。
やっとたどり着いたしらびそ高原は完全な観光スポットで、車やバイクが次々にやってきて、人がぞろぞろと東屋に歩いていく。おれはコンロとコッヘルを取り出し、木のベンチに腰掛けて、南アルプスを見つつの昼食とする。
ずっとあとで気づいたことだが、こんな標高(1910m)でガスコンロを使ったのは初めてだ。あたりまえのことだが、空気が薄くて燃えにくいとかいうことはなかった。
さて出発とする。左側に谷の開けた断崖上を走る。相変わらず南アルプスの展望が続く。そして、空が信じられないほどに青い。
やがて今度は稜線の西側に移る。南アルプスのような大物はいないがこちらも雄大な眺めだ。彼方に特徴的な形の山が見える。御嶽かと思ったがわからない。
この辺から下り勾配は強烈になってくる。がんがん下りを走ると下栗に到着。集落の上端に展望台があるが、眺めはそれほどでもない。写真をものにしようとしている人が多かったが、おれはそのままゆったりと下ることにした。
下栗は、斜度40°の急勾配に立地する集落で、日本のチロルなどといわれている。
当時のおれはチロルといえばチョコであって、どういうたとえなのかよくわからなかったわけだが、アルプス(日本のじゃないよ)の地名だそうで。
この集落のすごさは写真で知っていたつもりだったが、実際走ってみるとまったく言葉を失うほどだ。急坂にけっこう大きめの集落が続き、しかも道は完全1車線。集落の景観と南アルプスとのマッチもよろしい。
下栗の写真は信州百峠の口絵に載っていたので事前に見たことがあった。色彩鮮やかではないが、とてもいい写真だと思う。
この写真に写っている最も高い山は聖岳のようである。しらびそ高原で最も高い山として見えていた兎岳はその左。ちなみに実際の標高は聖岳の方が高い。
おれはこのあと上町(当時の上村の中心集落)に向かって下った。かなり長い感じがした。上町に出ると標高は550mほど。
2003年1月30日初版 / 2015年1月8日更新