芝平峠

カラマツ林に包まれた静かなダートの峠

読み方しびらとうげ
標高1450m
位置長野県茅野市・伊那市
道路林道金沢線(諏訪側)・県道211号線(伊那側の麓)
水系天竜川

実走日2011年5月6日(金)
地図などGoogle Maps地図院地図

芝平峠は、茅野市の青柳と伊那市の芝平の間にある峠である。カラマツ林の中を進み、眺めもまあまあいい。ダートもあるが走りやすい。全体としてはそれほど変わったところのない、標準的な峠といえそうだ。

カラマツ林に入るところ

おれはこの峠には茅野市の青柳から上った。国道20号線に歩道橋のあるあたりが入口である。入ったところに金鶏金山という看板があったと思う。青柳駅の標高は866.5mなので、600m弱の上りとなる。

集落を抜けると正面にカラマツの新緑に覆われた山が見える。田植えを待つ田んぼから、美しいカエルの声が聞こえてくる。道なりに進むと集落は終わり、道はそのカラマツ林の中に飛び込んでいく。

真新しい舗装の1車線路が続く。路面をゴムの板や蓋のない溝が横切っていたりする。勾配はややきつい。高木層はカラマツが多いが、それより下にはヒノキなども目立つ。明るい林で、宮川沿いの集落や八ヶ岳方面の山々が樹間にちらちらと見えるが、展望ポイントはない。


樹間に眺めのある道

しばらく上ると、林の中に展望所があった。丸太が置かれ座れるようになっており、山岳展望図もあるものの、肝心の展望は木々に遮られまったくない。それだけ木がよく育ったということなのだろうか。ただ、ここでは終わりかけの八重桜がさかんに花を散らしており、人知れぬ花見スポットとしてはいいのかもしれない。

そこからは樹間の眺めがやや増える。


好展望ポイントからの眺め

しばらく行くと突き出すような左カーブの好展望ポイントがようやく現れる。カーブの内側に階段があり、それを上ると眺めはなお素晴らしい。左は霧ヶ峰、右は八ヶ岳。そして手前には色とりどりのカラートタンの屋根の集落と高原野菜畑が広がる。


たむしば? の木とダートの道

それを過ぎると、じきに舗装は切れてダートとなる。手が入っていて走りやすいダートだ。この辺からは樹間はいっそう明るい感じになる。花としては唯一、コブシのような白い花のみが目立つ。花の下に若葉が出ていないから、タムシバかもしれない。地面には白い花びらがたくさん散らばっている。

やがて金沢峠へ行く道への分岐(標高1288m地点)に到達する。金沢峠へ行く道には林道猿ヶ入線という標識、今まで上ってきた道には金沢林道という看板、これから向かう道には金沢併用林道という標柱がそれぞれある。タイヤの跡はみな左折、つまりおれが向かう芝平峠に向かってついている。


千軒平

なおも上る。途中で青柳から直登してきた道を合流させるが、そちらはゲートが下りている。また金沢支線林道という標柱もある。

樹間はしばらく明るいが、やがてそれは背後に去る。

登坂が一息つくと、やがてシラカバがびっしり生えた湿地帯に出る。金鶏金山付近略図という案内看板が建っている。それによるとこの辺では武田信玄の手により金の採掘が始められ、その遺構が数多く残っているようだ。一方でこの湿地帯は千軒平と呼ばれ、茅野市唯一の高層湿原だともある。いずれにしても、シラカバ林の風景は明るくもどこか不気味で、柳蘭峠を思い出させるものがある。


鞍部鞍部から見る八ヶ岳

それを過ぎるとじきに鞍部だ。尾根道が通っており、そちらは舗装である。先日行った二本木峠の鞍部によく似ている。

あたりは見事なカラマツ林だが、まだ新緑という感じではない。その木々の上に八ヶ岳が頭をのぞかせているのが見える。

さてここから芝平への下りだが、10月20日まで工事中のため全面通行止とある。やれやれと思いつつ突っ込むことにする。結論をいうと、おれは運よく通過はできたものの、基本的にはできない状態だったのだが。


ダートのヘアピンカーブを下る

カラマツ林の中を急激に下る。ヘアピンカーブがあるが、とても規模が小さいので、どこか微笑ましい感じでもある。じきに道の左側に山室川の沢が寄り添い始める。山腹走行が長かった諏訪側とは異なる展開だ。

やがて工事現場に到着する。重機が道をふさいでいるのはいいものの、その先で切り倒した松の木が路上を完全に覆っており、井川雨畑線の山伏峠以来のジャングルジムモードとなる。これは道路そのものというよりは法面の工事なのだろう。手を松やにだらけにしながらどうにかクリアする。工事の昼休みの時間帯でよかった……。


芝平の集落

県道終点の地点まで来るとダートは終わる。ここから先は舗装ではあるが、かなり荒れた路面も混じっている。道幅は1車線。いずれにしても楽しい道だ。沢の流れは美しく、ぽつぽつある集落は花がいっぱいだ。桜もかなり残っているし、シデコブシ、ミツバツツジ、レンギョウ(まだ咲いているのだ)、そして草ではスイセンなど。特に分校の跡地の(いかにも学校らしい)桜は印象的だった。

それにしても意外と長い道のりである。だんだんと風景は開けてくる。山室川が刻む深く幅の広い谷に向かって作られた棚田を眺めつつ行く。正面右側には白い山が霞に隠れつつ見えてくる。方角からすると中央アルプスだろう。

やがてやや下方に美和ダムが見え、非持(ひじ)で国道152号線に合流する。標高は820mほど。

ちなみにここまで書いていなかったが、この峠道の交通量は極少だった。

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2011年6月30日初版 / 2015年1月8日更新