大洞峠
山村の静けさと北アルプスの展望が調和した峠
読み方 | おおどうとうげ | |
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標高 | 1000m | |
位置 | 長野県上水内郡小川村・長野市 | |
道路 | 長野県道36号線 | |
水系 | 信濃川 | |
実走日 | 2011年4月6日(水) | |
地図など | Google Maps・地図院地図 | |
関連書籍 | 信州百峠・峠への挽歌・峠で訪ねる信州 |
大洞峠は虫倉山系の西端にある峠である。同じ虫倉山系に属する岩井堂峠や地蔵峠とは異なり、大洞峠にはその両者にはない素晴らしい北アルプスの展望がある。その一方で、峠としての手ごたえにはやや欠けるかもしれない。
この近くでいえば、北アルプスの展望は確かに白沢峠にも大望峠にもあるのだが、大洞峠にはそれらとはまったくかけ離れた静けさ、そして山村集落と大迫力の山脈が調和した、変に穏やかな空気感がある。それはおれにとってこの峠を屈指の大好きな峠にしているものでもある。
なお、行くならばぜひ午前中に峠の南側のアルプス展望広場には到達したい。午後には北アルプスは逆光になるからだ。
大洞には、信州百峠でも峠への挽歌でもおおどうとルビを振っているのでここでもそう書いて載せているが、両者よりも新しい峠で訪ねる信州ではおおぼらと書いている。どちらが正しいのかというところだが、2007年5月24日の信濃毎日新聞のサイトの記事では、大洞高原におおどうとルビを振っているので、おおどうとうげで間違いないだろう。
おれは小川村の中心集落である高府からこの峠を目指した。いきなりじりじりと上り出し、高府の集落と県道31号線を見下ろす。10%の勾配標識もあるが、それほどの急坂には感じない。やがて高府の眺めは背後に去り、爺ヶ岳、鹿島槍などの白い峰々が手前の尾根の向こうに姿を現す。道路は2車線あり、集落もぽつぽつと続く。
この写真では、右端が鹿島槍、その左が爺ヶ岳、さらにその左が蓮華岳。
斜面に開かれた田んぼとリンゴの果樹園の脇を上っていく。途中にはヘアピンカーブもあり、これまで上ってきた道を見下ろしたりもするものの、集落もあるので険しい峠道という雰囲気にはならない。家々は古めかしいものが多い。
この付近で撮影した実ったリンゴと北アルプスの写真が、写真集安曇野・白馬山麓に載っているので、興味があればぜひ。
上るにつれて少しずつ谷の向こうの白い北アルプスの存在感が増してくる。また途中から白馬三山も見えるようになってくる。
この写真では、中央が鹿島槍、その右が五龍岳、さらにその右のあたまの丸いのが唐松岳。白馬三山は写っていない。
成就の集落を過ぎるとスギ林の中になる。しかしそれほど薄暗い感じはしない。それを抜けるとアルプス展望広場に到着である。標高は800m程度。
アルプス展望広場からは、鹿島槍を中央に、広い範囲の北アルプスを眺めることができる。安曇野で見るのと違って手前に盆地がないので、はるかに森厳に感じられる。
この写真では、右端に白馬三山(左から白馬鑓、杓子岳、白馬岳)が見える。また左手奥の真っ白な山々には、野口五郎岳のような県境の山や、大天井岳や常念岳のような松本盆地でおなじみの山も含まれている。
山岳眺望案内板があり、トイレもある。平日なのに、あるいはだからなのか、自動車でやってきて立ち寄っていく人が意外と多い。またひとりだけだがサイクリストも見かけた。
アルプス展望広場の眺めはいいものの、そこだけがとりわけ眺めがいいというわけでもない。その後も好眺望の道が続く。
じきに三重塔の高山寺に到着だ。斜面にようやく切り開かれたという感のある小ぢんまりとした境内に、白い北アルプスを背景として三重塔が立つ。
眺めのいい区間はまだまだ続く。やがて日本記で瀬戸川沿いから上ってきた道(2003年12月24日の表紙写真参照)を合流させ、県道401号線を分ける。ここからは高原的な雰囲気だ。ここまで緩かった勾配は俄然きつくなる。
日本記(にほんぎ)というのは地名である。この辺には他にもさっきの成就や味大豆(あじまめ)、次木(なむぎ)など、変な地名が多い。これは書籍峠への挽歌でも紹介されていた。
やがて星と緑のロマン館を過ぎ、少し行くと林の中で最高所を過ぎて下りになる。どこが鞍部でどこが市村界なのかよくわからない。展望もない。路肩の残雪の量は一気に増える。
すぐに正面に戸隠が見えてくる。そして鬼無里の集落も。10%の勾配標識がある。道は高府側よりもやや狭く、勾配もきついように思える。
ヘアピンカーブを繰り返して下る。戸隠のほかに北アルプスも見えるが、五龍岳から白馬三山くらいの範囲だ。穏やかな山村風景の中を下る。11%の標識もある。おそらくはこちら側から上るとそれなりにきついのではないか。
やがて町(鬼無里の中心集落)で裾花川を渡り、国道406号線に合流する。標高は670mあまり。左折すれば白沢峠だし、右折すれば大望峠や長野市街だ。
2003年4月26日初版 / 2011年5月19日差替