地蔵峠
山村の風景が美しい未整備峠
読み方 | じぞうとうげ | |
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標高 | 1160m | |
位置 | 長野県長野市 | |
道路 | 長野県道86号線 | |
水系 | 信濃川 | |
実走日 | 2006年9月2日(土) | |
地図など | Google Maps・地図院地図 | |
同名峠 | 地蔵峠(東北)・地蔵峠(関東)・地蔵峠(伊那東部)・地蔵峠(木曽) |
裾花川筋と土尻川およびそれが注ぐ犀川の筋を隔てる尾根(虫倉山系)を越える峠のうち、最も東側にあるのがこの地蔵峠である(他には大洞峠や岩井堂峠などがある)。主要地方道になってはいるが、道は整備されておらず、通行もほとんどなく、静かである。
大洞峠や岩井堂峠と異なり、北アルプスの眺望は全くない。しかしその両者を上回る、美しい信州の山村の風景と空気がここにはある。
おれは裾花川沿いの国道406号線から分かれて上り始めた。分岐には道路標識の類は全くなく、単なる集落道とほとんど区別がつかない。これでは知っている人しか入ってこれないだろう。
最初の勾配はかなり急だ。集落の中を上っていくとすぐに戸隠連峰とその向こうの高妻山、そして集落の眺めが出てくる。道の雰囲気は素晴らしく、楽しい気分で上る。道は1車線である。しばらくは耕地の中の上り(一本松峠の南側のような)が続く。
やがて平出の集落を通過する。急坂ヘアピンの中にある小さな集落。のどかなものだ。ロケーション自体は飯能の山伏峠の八ヶ原と似たようなものかもしれないが、雰囲気はこれだけ違う。
その集落を過ぎて振り返って見た眺めは忘れることができない。道路には右側から木の枝が覆いかぶさっている。そのまま目を左に転じていくと、枝の先は青い空に続いていく。その下には小さな平出の集落。そして左手遠くには飯縄山。
県道86号線の入口の標高が590m、平出の標高が880m程度、鞍部の標高が1160mだから、ここがだいたい上りの中間地点といえる。
ここまで書いていなかったが、この峠の勾配ははっきり言ってめちゃくちゃきついのだ。しかしここへ来て少し上りは緩くなる。
岩井堂峠とは異なり、薄暗い林の中の区間もある。またあまり眺望はないのだが、ちらと戸隠方面の眺めが開けるところもある。右手が戸隠連峰とその向こうの高妻山、左手が(戸隠連峰の一部かもしれないが)西岳だ。
最後はやはりカラマツが出てきて、右カーブの鞍部に到着。平出からここまで、他の通行者は皆無だった。
鞍部には北側に少し広いスペースがあり、地蔵峠と刻まれた石碑や案内板などが設置されている。その向こうには戸隠連峰が見える。
地蔵尊は見当たらない。案内板によると、下りの途中に地蔵岩というものがあり、大きすぎて気付かないかもとのこと。これが由来だろうか(ここで書いておくが、結局下りの途中では見落とした)。
与太話だが、ここの木の標柱には標語が書かれていて、そのうちのひとつにゴミを見て 花が泣くというのがあった。ん? 自由律標語……? でもこうして覚えて帰ってきたのだから標語として成功なのかもしれない。
地蔵峠の北側はかつての戸隠村だが、南側はかつての七二会(なにあい)村である。どちらも上水内郡。
土尻川筋方面の山村の眺めがなかなかよい。篠ノ井か屋代の方面の市街地の眺めもある。山村の眺めなどは県道401号線でも嫌というほど味わえるのだが高度が違う。
くねくね道を軽快に下って、集落が始まる(こちら側にも平出という集落名があるのが面白い)。やがて小川村から山腹を進んできた県道401号線に合流し、そのまま市場(七二会の中心街)に進入する。道は広い。標高は600mあまり。
道なりに進めば広い道のまま国道19号線に下りることができるが、おれはあくまで県道86号線での降下を試みた。やはり1車線の田舎道。薄暗い感じで展望はない。やがて笹平(昔スキーバスがダム湖に落ちる事故があったところ)で国道19号線にぶつかる。標高は400mほど。
2006年9月29日初版 / 2015年1月8日更新