十石峠
濃い自然の中の隘路峠
読み方 | じっこくとうげ | |
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標高 | 1351m | |
位置 | 長野県南佐久郡佐久穂町・群馬県多野郡上野村 | |
道路 | 国道299号線 | |
水系 | 信濃川・利根川 | |
実走日 | 2006年5月3日(水) | |
地図など | Google Maps・地図院地図 | |
関連書籍 | 信州百峠・峠で訪ねる信州・日本百名峠 |
十石峠は、南佐久と上州を結ぶ峠のひとつであり、おそらくその中では最もメジャーな峠である。国道でもあり、1日あたり10石の米の輸送路という由来を持ち(書籍信州百峠による。これはかなりさかんな往来を意味するらしい)、さらには矢久峠と同じく秩父困民党の転戦路でもある。
と書くと歴史を漂わせる重厚な峠のようだが、現在の峠道にはそのような雰囲気はない。むしろ明るく豊かな緑が印象的な峠である。
現地で見た道路標識によると、この峠の読み方はじっこくとうげではなくじゅっこくとうげである。かつては、実際はそんな発音はしないだろ、と思いつつ、現地主義ということで後者で載せていたが、これを改めてじっこくとうげとすることにした。ちなみに書籍では信州百峠と日本百名峠はじっこくとうげ、峠で訪ねる信州はじゅっこくとうげとなっている。じゃあまぁ前者かなぁ……。
この峠の長野県側の入口は佐久穂町の海瀬(かいぜ )である。海瀬の標高は760mほどだ。
南隣のぶどう峠の入口である小海は山峡の町であるが、海瀬は何とか盆地の端という感じである。国道299号線を東へ進む。整備された2車線の道がだらだらと続く。周囲はあまりひなびた感じにはならない。背後には蓼科山が見える。
佐久東小学校を過ぎると、道は広狭混在になる。ぶどう峠と異なり、分け入るにつれて背後の山がよく見えるようになったりはしない。しばらく進むと古谷(こや)ダム。雨川ダム湖(隣の峠である田口峠の麓にある、異様に水の色の美しいダム湖)のようなものを期待していたが水は特にきれいということはない。堤頂の標高は998.5mだそうである。見回すとあたりはカラマツが多くなってきている。
さらに少し進むと臼石の看板があった。道端の公園に、もともと少し違う場所にあった、甌穴のあいた岩が置いてある。
それを過ぎると今度は乙女の滝。自転車を停めて見に行く。名前通りの上品な感じの滝であるが、名前の由来はわからない。
なおこの辺の道は本当に1車線しかない。また付近に第34号カーブの看板がある。ぶどう峠や田口峠にもあった、臼田建設事務所の県境から番号を振っていくカーブ番号である。
上るにつれて林にはアカマツが混じるようになってくる。意外な感じだ。振り返ると久々に北アルプスが谷間に頭を出している。もっとも臼田や海瀬ではよく見えていた山なのでありがたみはあまりないのである。
たいした急坂もないまま、やがて広々した鞍部に到着。左手に展望塔、右手に木の峠標柱がある。
展望塔からは北アルプスはよく見えないが、上越国境の山々の眺めがある(大迫力ではない)。しかし土地勘がないこともあってどれがどの山かさっぱりわからない。
下り始める。いったん軽く下ってからまた上る。そしてまた下り始める。左手に、浅間と上越国境の山が見える決定的な展望があるが、その前を送電線が横切っている。やれやれ。
やがて右手にこれから下る道を見下ろす。なかなかの高度差だ(約200m)。山腹にはヤマザクラの他にミツバツツジも多い。庭木としてはいくらでも見かけるが山にはあまり見られなくなったという、明るい赤紫の美しい花である。路肩にはその花が山になって積もっている。そして黄色っぽい新緑がどんどんと空に向かって伸びていこうとしている。そんな光景の中を行く。
道は狭く、離合のために停まっている自動車に追いついてしまうこともしばしばである。ぶどう峠から来た道が合流すると峠道は終わる。標高は600mあまり。
2006年6月2日初版 / 2015年1月8日差替