槻木峠

秘境のダンプ街道のしあわせ峠

読み方つきぎとうげ
標高750m
位置熊本県球磨郡多良木町
道路熊本県道143号線
水系球磨川・大淀川

実走日2010年3月27日(土)
地図などGoogle Maps地図院地図

槻木峠は、球磨川沿いの人吉盆地と、尾根の向こうの槻木の集落を結ぶ峠道である。かなり険しい峠であるが、人吉盆地に中心部がある多良木町に、峠の反対側の槻木が属していること、槻木から人吉盆地とは反対の側に下ってもほとんど人気がないことから、槻木の人々の生活道路になっているものと推測される。

険しさと槻木の集落の秘境めいた雰囲気はいいのだが、峠を越えるダンプカーがかなり多いので、静かな峠という雰囲気はあまり出ない。

道路としては、改良工事をやりかけてはいるものの、抜本的に峠全体が改良される日は当分来ないだろうと思われる。

標高430m付近から見る立派なカーブ

おれは人吉盆地側からこの峠を目指した。多良木から県道143号線で南東に向かう。枝河内の集落のあたりは狭い2車線であるが、集落を抜けると広い整備された2車線になっている。

旧道は完全に放棄され、それを押し潰すように新道が盛土されて通っている。確かに勾配はきつくなく走りやすいが風情はない。

ワインディングを進み、上ってきた道と盆地の方面の展望を左手にちらと見る。カーブした豪快な橋を渡って進む。ダンプが多い。先で改良工事が進んでいるからだろうか……と、このときは思った。


未整備部分鞍部付近の離合所16番

ある程度上ると、右手に新道があるがバリケードでふさがれ、道はスギやヒノキの林の中の1〜1.5車線の上りになる。そのあたりに槻木トンネル早期着工を!というようなことが書かれた看板がある。

狭い道なのだが、さらに新旧の道路が錯綜していて、走っていてわけがわからなくなる。相変わらずダンプはたくさん走っている。そのためか、離合所が各所にあり、札が立っていて番号と次の離合所までの距離が書いてある。番号は1から始まって増えていく。ダンプを走らせている企業が設置したものだろう。

少し行くと道路の新旧錯綜は終わり、古い路面が多くなる。あまり明るくはない道が続く。あたりにはあまりヤマザクラはないようだ。ヤブツバキはぽつぽつ見かける。鞍部の直前になると右手に盆地方面への展望がかろうじてある。

離合所16番のあたりが鞍部のトンネルの手前である。そこからは左に林道が延びている。


トンネルの槻木側

鞍部のトンネルはやや狭いが、短くて向こうがはっきり見通せるので問題は少ない。それを抜けると、電話ボックス、槻木の案内図(携帯電話の使える範囲が書いてあるのが面白い)、そしてしあわせ峠なる槻木小学校PTAの銘のある木の看板がある。……いくらおれが現地主義であってもその名前はない。


槻木側への下り

下りは、穏やかな谷への眺望が少しあり、上りよりは開けた印象である。離合所はこちらにもあり、実際ダンプはどかどかこちらにもやってくる。この道路や林道の改良工事のせいではないらしいとわかる。

途中、ここのみ坂湧水というものが右側にあった。ヤマメのイラストの入った立派な立札が出ている。水質検査の結果が立札に貼ってあるのが面白い。


槻木小学校

やがて槻木の集落が始まるが、密集度は低い。しばらく下ると県道143号線は右に分かれていき、そこからは県道144号線になる。標識によると須木へは右折なので少し驚く。直進すれば国道265号線(輝嶺峠経由)で須木へ行けるのだが。

離合所は38番かそこらまであったが、この分岐の先にはない。ダンプもまったく来なくなる。

陽射しの中に静かな山村があり、桜以外にコバノミツバツツジも見かける。そんな中の、桜をいっぱいに咲かせた槻木小学校はとてもまぶしい。

ぽつぽつと山村が続いていたが、やがてそれはなくなる。ひたすら槻木川沿いの下りが続くのだが、アップダウンが多く、川下りをしている気はしない。道は未整備で通行もほとんどない。山腹にはヤマザクラが多くて美しい。こうしてみると槻木峠は尾股峠の兄弟のようなものかもしれないなあ、と思う。


綾北川

しばらく行くと足元の槻木川(綾北川)は流れなくなって緑色の水を湛えるようになり、田代八重(たしろばえ)ダムが近づいてきたと知れる。このあたりに県境があり宮崎県に入ったということはあとで知った。

やがて不気味なほどに人気のないまま、国道265号線に合流する。標高は400mほど。ここから綾北川沿いに下る県道360号線は通行止と看板が出ている。

こうしてみると槻木の集落は下流側とはまったく接点がないことがわかる。そうすると槻木峠は槻木にとってはある意味生命線であり、しあわせ峠という看板が建ってしまうのも何となく納得が行く。だからといって自分がそう呼ぶわけではないのだが。

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2010年5月13日初版