椎矢峠
九州の脊梁を横切る大物ダート
読み方 | しいやとうげ | |
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標高 | 1440m | |
位置 | 宮崎県東臼杵郡椎葉村・熊本県上益城郡山都町 | |
水系 | 耳川・緑川 | |
実走日 | 1996年3月23日(土) | |
地図など | Google Maps・地図院地図 |
椎矢峠は、秘境椎葉と通潤橋の矢部(山都町)を結ぶダート林道の峠である。当時の昭文社の九州・沖縄ツーリングマップには、通り抜けられる車道の峠としては九州一の高所と書いてあったのだが、どうだろうか。当時は、以下に書くように、四輪車の通過は難しそうだったし、標高も同じ椎葉のぼんさん越よりも低いのだが。
峠道としては、山また山の雄大で単調な風景の中を、ひたすら山腹を折り返して上るという、典型的な大物峰越林道である。ロングダート(30km以上)である点を除けば、四国の黒尊スーパー林道によく似ている(鬼が城山を参照)。
おれは椎葉側から峠を目指した。椎葉ダムの女神像公園で野営をして出発。この公園は地図上は上椎葉の集落(標高370m)のすぐそばに違いないが、そのはるか上方にあって、標高は500mもある。関係ないが、テントの中で炊事をしていると、突然この公園におじいさんが現れ、ひえつき節を熱唱して立ち去っていった。毎朝練習しているんだろうか。
日向椎葉湖畔の1.5車線の舗装路を坦々と進む。尾前の集落まではけっこう交通量があったが、ここで不土野峠への道と別れると交通量はほぼ0に。道は1車線となり、坂はいきなりきつくなってきた。右側の耳川の渓谷がなかなか美しい。
耳川を渡り、少し進んで道はダートに。同時に坂は緩くなった。路面はまあ普通。山は冬枯れのままで、ほとんど生命の気配がない。道は深い谷を見下ろしつつうねうねと折り返して上る。その谷を挟んだ反対側の見上げるような斜面に、これから上る道のガードレールが見える。
稜線に近づくあたりは坂もきつく、土砂崩れもそのままで岩がゴロゴロしている。同時に眺めがよくなってくる。眺めといっても山山山の中に今まで走ってきた道がうねっているだけの単調なものだが、いずれにせよ大展望なのは確かだ。
頂上では、右側に椎矢峠と書いたペンキの剥げかかったコンクリートの標識があった。ここからは前後の眺めがよい。行く手にも重畳の山々。ほとんど冬枯れのうえに、遠くは青白く霞んでいるので本当に寒々とした光景だった。
矢部側は椎葉側よりも道は荒れていた。全くスピードが出せないようなのであきらめてのんびり下った。全然ペダリングをせずに風に吹かれるのでとても寒い(結局下りには2時間ほどもかかったのでなおさら)。
眼下にこれから走る道が見え、あまりの高度差に思わず息を呑む。
この写真では、右の方にこれから下る道が見えている。
道は山腹走行から水面に近い走行、そしてまた山腹走行に移り、トンネルをくぐると突然目の前が開けて、真っ赤な巨大なアーチ橋(内大臣橋)が見えてきた。そのあとすぐにダートは終わり。なお内大臣橋の標高は260m。
で、この写真が内大臣橋。確かに大きいのだが、それ以上に、そのすぐそばに集落があることに驚く。この近くの矢部という町(現在は山都町)もそうだが、かなりな山奥に人が住んでいて感心してしまう。
2012年3月に再訪したときには、内大臣橋の塗装は薄い水色に変わっていた。案内看板には、1999年度から2000年度にかけて欄干の嵩上げと色の塗り替えをやった、とあった。
この内大臣橋付近は道がわかりにくいので、できれば大縮尺の地図を持っていこう。道の選択を誤ると、無駄な谷下りを味わうことになる。おれは内大臣橋を渡って少し進んだあと国道218号線の旧道で矢部の市街地に出た。
2002年1月7日初版 / 2012年4月12日更新