尾股峠
薄暗い人口希薄地帯の峠
読み方 | おまたとうげ | |
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標高 | 760m | |
位置 | 宮崎県児湯郡西米良村 | |
道路 | 国道265号線 | |
水系 | 一ツ瀬川・大淀川 | |
実走日 | 2007年10月29日(月) | |
地図など | Google Maps・地図院地図 |
尾股峠は、輝嶺峠とともに、西米良から小林に抜けるルート上にある峠である。旅行者にとっては普通の意味で利用価値のある峠だろう。ではあるが、地図を見れば何となく見当のつく通り、飯干峠と同様の狭路かつ人気のない峠である。
尾股峠には展望は全然といっていいほどない。一方で同じ西米良の峠である井戸内峠や日平越のような峠とは異なり、完全に人里を離れ、都市と都市(といっても西米良と小林だが)を結ぶ道という風格がどこか漂っている。
この峠と輝嶺峠の組み合わせは、伊那の地蔵峠と分杭峠の組み合わせに似ている。ひたすら林の中の尾股峠が地蔵峠的で、展望のある輝嶺峠が分杭峠的という意味で。もっともおれは分杭峠よりも地蔵峠の方が好きだが、尾股峠より輝嶺峠の方が好きでもある。
おれは西米良の双子キャンプ村を発ってこの峠を目指した。まずは国道219号線で西米良村の中心部である村所へ。キンモクセイの香りがいっぱいだ。
村所の交差点を直進し、西進する。道は2車線あり広いが、通行はほとんどない。新しいトンネルが2つほどあり、旧道もあるようだがおれはそのままトンネルを突き進む。やがて国道265号線の分岐に到着。左折してそちらの道を行く。
しばらくは谷間の広くて静かな道をダラダラと上り続ける。やがて前方に同じ向きに坂を上っていくリヤカーを発見。何とそれは徒歩旅行者だった。挨拶を交わして抜き去る。
実際にやったことのある人はわかるだろうが、自転車での峠の上りで徒歩旅行者を抜くのは辛いものである。休んでいて抜き返されるとかなり情けないからだ。
それからまもなくヘアピンカーブが始まり、道は1車線ほどと狭くなった。薄暗い林の中をぐねぐね曲がりながら上るのだが、あまり勾配はきつくない。それにしても、この薄暗さでは、いったい一日にどの程度の時間、路面に陽が当たるのだろうか。
右側に深い谷とその向こうの尾根を見る箇所もあるにはあるが、基本的には眺望のない道だ。鞍部直前のヘアピンの手前で、晴れきっていない朝霧の中に白く霞んだ山(今調べると市房山と石堂山のようだ)が見えたが、眺望らしい眺望はそれだけだった。
やがて鞍部に到着。何の標識も看板もない。鞍部ではちょうどコンクリートミキサー車が切り返して林道に入っていくところだったが、そういえば、さっきのリヤカーの彼(男性である)を追い抜くよりも前に自動車とすれ違って以来、初めて見た自動車である。
少し休んで出発。最初は南側斜面だから明るい感じになるが、下りていくにしたがってまた陽が当たらなくなってくる。完全1車線のヘアピン連発のきつい下りだ。北側にもまして人の気配がない。それにしても、路面にコケが生えている国道というのはどういうことか。九州は気候が温暖にして湿潤で……ということで説明がつくのだろうか。
スピードが出せないせいか下りは相当長く感じる。途中、道路幅をいっぱいにふさいで電話線の工事をやっていたりする。交通量が少ないからどうにかなっているのだろう。
道は下りっぱなしではなく一部にアップダウンも交じる。また改良された区間もある。やがて左側の尾股川が広くなり、田代八重(たしろばえ)ダムのダム湖が始まる。同時に道は堂々とした2車線になる。しかし人気がないのは相変わらずで、改良済みのせいでかえって薄気味悪く感じる。
こうしてダム湖のほとりで峠道は終わる。標高は350mを少し上回るくらい。ここからは綾北川沿いに下る県道、槻木峠を越えて人吉盆地に出る道、そして須木に出る国道265号線の輝嶺峠の峠道があるが、そのいずれもが隘路である。
2009年4月9日初版 / 2015年1月8日更新