二本杉峠
超絶落差うねうね峠
読み方 | にほんすぎとうげ | |
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標高 | 1100m | |
位置 | 熊本県上益城郡美里町・八代市 | |
道路 | 国道445号線 | |
水系 | 緑川・球磨川 | |
実走日 | 2012年3月26日(月) | |
地図など | Google Maps・地図院地図 |
二本杉峠は、緑川流域で熊本平野の端にある砥用(美里町)から、球磨川の大支流である川辺川沿いの五家荘へと抜けるところにある峠である。
国道なのだがかなりの区間が未整備のまま残っている。地形は砥用側が特に急峻で、道幅は狭く屈曲も多く勾配もとてもきつい。そして同時に道筋と平野への眺めがとてもよい。走っていてたいへん楽しかったのだが、地図からはこれほどとは予想できなかった。九州にはこんな面白い峠がまだまだゴロゴロしているのだろうか。
二本杉峠の名前は現地でもよく見かけたが、単に二本杉と書いている例も現地ではけっこう見かけた。ということは、峠の近くに特徴的なスギが2本生えているとかの地点があって、そこを二本杉と呼んでいるのだろうか、と思ったのだが、走った限り特にそういうものはなさそうに思えた。
おれは砥用からこの峠を目指した。国道218号線から国道445号線に入る。この地点の標高は170mあまり。
最初は道は整備された2車線である。いったん上ってまた下り、そしてまたドーッと上る。勾配はそこそこきつく、脇を流れる津留川も既に渓流である。正面にこれから上るのであろう道のガードレールを見上げる箇所がある。
山村集落が続くが、その途中で整備済み区間は終わり、1.5車線の道になる。振り返ると10.5%の勾配標識がある。下津留の集落からは道は折り返して上る。
さて折り返して上り始めるが勾配は緩くならない。楽しい気分にはなってきたが、これは相当きつい。やがてさっき通ってきた集落を見下ろして進む。それが過ぎるとこれから上る道、そしてこれまで上ってきた道の眺めが連発するようになる。こんなに道筋がよく見える峠道は珍しいのではないだろうか。
なお、折り返し始めてからは二本杉峠までの距離を示す標識が1kmおきに現れるようになった。最初は9kmくらいだったと思う。また路傍には薄い木材を組んで作った小さい赤い鳥居が頻繁に建っている。もちろん意味は放水禁止だろう。
道沿いの植物はスギが多いがヤブツバキなども多く、逆光気味に見ると葉っぱが太陽光を反射して林は全体的に白っぽく光って見える。なおアオキの赤い実も見かけた。
徐々に背後の眺めはよくなってきて、ついには平野も見えてきた。特に標高700mから800mあたりにかけてのヘアピンの連発での道筋の眺めは本当にすごい。見えている道が何段あるか数えてみると、眼下に3段、上方に3段、現に自分がいる1段の合計7段あった。松田優作ばりに何じゃこりゃあという言葉が口をついて出る。いや本当に。
またこの付近には七郎次水源という湧水もある。いい峠だ。これ以上何を望むのか。FM音源くらいか。
どんどん平野の眺めは広がってくる。一方で路肩では霜柱を何箇所かで見かけるようになる。吐く息も白い。
やがて二本杉展望所に到着。それほどワイドではなくおそらく90°くらいの眺めだろうが、いい眺めの一言である。遠くに熊本平野や緑川の水面が見え、上ってきた道が手前の皆伐跡地を横切っているのも見える。
展望案内板によると雲仙普賢岳は左端に見えるはずなのだが、残念ながら今日は霞んで見えない。おれが持参した2012年版のツーリングマップル九州(昭文社)には天草も見えると書いてあるが、雲仙が左端なのに本当に見えるのか。
二本木展望所からさらに少し上ると鞍部に到着する。椎矢峠と同じシリーズの変な曲線を描いた輪郭の峠の標識がある。鞍部は案外広く、土産物屋やトイレ、岩を配置した広場がある。土産物屋では食事もできるようだった。
ちなみにここには(そしてここ以降の五家荘のあちこちには)FOMA使えますという看板がある。うっさいよ! おれはauだよ。アンテナは立たんよ。悪いか。
下り始める。道は広くなる。走りやすいがかなり寒いので飛ばす気にはあまりなれない。山深く谷底に近いところを走る感じで、これから下る先を見るような箇所はあまりない。途中で電光の温度計があったが、表示は何と5℃。本当かね。
しばらく下ると梅の木轟(とどろ)の入口に到着。ここにはまるでロープを渡したような少したわんだ歩道の橋が架かっている。案内看板によると名前は梅の木轟公園吊橋だが、桁を吊っているケーブルの類はないので、吊橋ではないはずだ(とそのときは思った。下記参照)。長さは116mとのこと。
調べてみると、これは吊橋の一種であって、stressed ribbon bridge というタイプであるらしい。
その橋を渡って300mほど歩くと梅の木轟に到着する。なかなか見事な滝なので、特に暑い季節などはぜひ立ち寄るといいだろう。
さて自転車に戻って続きを走る。ここから先は道は未整備になる。1車線ぎりぎりのところもあって、さっきまでとの落差が激しい。
やがて前方の対岸に大規模な治山工事の跡を眺め、大小屋谷の筋に迂回して下る。真新しいシェルターをくぐり、谷を渡って旋回し、シェルターを見上げつつ下る。すると下屋敷の集落である。背後に大小屋谷の筋に迂回する直前の道を見上げる。
ここまで下ると標高は610mあまり。まだまだ下りは続くのだが、おれはここで左にそれてぼんさん越で椎葉へ向かったので、二本杉峠の下りの話はここまで。
2012年5月24日初版 / 2020年9月3日更新