牧の戸峠
やまなみハイウェイの最高所の峠
読み方 | まきのととうげ | |
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標高 | 1330m | |
位置 | 熊本県阿蘇郡南小国町・大分県竹田市・玖珠郡九重町 | |
道路 | 熊本県道11号線・大分県道11号線 | |
水系 | 筑後川 | |
実走日 | 2017年5月29日(月) | |
地図など | Google Maps・地図院地図 |
牧の戸峠は観光道路やまなみハイウェイがくじゅう連山を横切るところにある峠で、やまなみハイウェイの最高所でもある。
走ってみた限り、くじゅうの登山口としての位置づけには確固としたものがありそうだが、やまなみハイウェイを軸として考えると、ただの通過点という方が近いのではないだろうか。もちろん、自転車で走るぶんには、明らかな峠になっているので、存在感はあるにせよ。
この峠の名前は、地図には牧ノ戸峠と書かれていることが多いと思う。しかし、現地で見た道路標識には牧の戸峠とあったので、ここではそちらの表記をとることにする。
おれは牧の戸峠を南から越えた。
この峠の南側の麓は、保守的に考えれば、坂が本格的になる直前の瀬の本高原だということになるだろう。しかし、そこから話を始めると、ちょっと盛り上がりに欠ける内容になってしまいそうだから、そのもっと手前の、阿蘇の外輪山を越えたあたりからの話を書こうと思う。
ということで、峠越えの前日から始める。宮地から県道11号線で城山展望所を経由して外輪山に上りつく。城山展望所を過ぎると林は終わって草地になり、勾配も緩くなる。そしてその草地の向こうにこれから向かうくじゅう連山が見えてくる。この山並み自体は日の尾峠からも見えていたが、だいぶ近づいた感じがするし、あたりが草原なのでかなり雰囲気は異なる。
やがて県道45号線が左に分岐する。そちらには名所大観峰があり、正面から来てそちらに曲がっていく車も多い。おれも、時間と体力に余裕があるので、そこから大観峰までを往復することにする。この地点の標高は760mほどで、大観峰の標高は900mほどあるから、少し上りであるが、そんなにきつくはない。とは言え、そんなに楽でもない。
ちなみに、城山展望所に上り始める麓の標高は500mを切るくらいであった。
県道45号線を走りつつ、この風景は北海道によく似てるな、と思う。牧草ロールを積んだトラックがつんとする匂いを振りまきつつ追い抜いていき、それもまた北海道を思わせる。
大観峰については、あれこれ書くことはしない――これは牧の戸峠についての記事なので。しかし、眺望が素晴らしく、行く価値があったことは確かである。
県道11号線に戻って北上を再開する。相変わらず草原の中を進む。アップダウンは多いがそうきつくもない。直線区間が多いがカキリと向きが変わる地点も多く、そのたびに、少しずつ大きくなってくるくじゅうの位置も変わる。そのくじゅう連山の向かって左側の山体にはコンクリートの被覆があるのが見えるが、おそらくあれは牧の戸峠の上りの道だろう。
この写真にもそのコンクリートの被覆は写っているが、このサイズではほとんど確認できない(すみません)。左側にある林の右端のすぐ上あたりにある。
路傍には昨日の俵山峠と同じくアザミが多いが、ヘラオオバコもよく見る。
道は阿蘇市から産山村に入ってすぐに南小国町に移る。そのへんは林の中であり、セミの声がわーんと響いている。このあたりは地形的には尾根道になっていて、左は筑後川(東シナ海に注ぐ)、右は大野川(瀬戸内海に注ぐ)の流域であるが、あまり険しさは感じない。
その林を抜けるとまた草地で、牧草ロールが転がっている。くじゅう連山はいよいよ近く、さっきから見えているコンクリートの被覆の前をバスが上がっていくのが見える。
この写真では、さすがにそのコンクリートの被覆はわかるはず。正面やや左側にある。
このあたりの上りは少々きつい。上り切ると瀬の本高原で、園地がある。相変わらずセミの声がする。三愛レストハウスという施設があり、かなり賑わっている。ガソリンスタンドやヤマザキショップもあり、閑雅な高原という想像とは、この一角だけは異なっている。
まだ早い時間だが、おれはここから左にそれて茶屋の原キャンプ場(2018年6月7日の表紙写真参照)に行き、翌日の峠越えに備えてキャンプをすることにした。
ここからやっと峠越え当日の話である。
キャンプ場から瀬の本まで戻って左折して県道11号線に入り、峠を目指す。交差点の標高は950mほどある。月曜日の朝なので、昨日の午後と比べると別の場所であるかのように静かである。
走っていて少し異様に感じたのは、この県道11号線のすぐ右脇に国道442号線が並行して通っていることだった。そんなんなら交差点を少し北側に作るんじゃダメだったのか。まあ十字路にすることが大事だったんだろうか。
少し行くと大分県に入り、久住高原ロードパークを右に分け(バリケードがされていて入れないようになっていた。地震災害のせいだろうが詳細は見ていない)、牧草地は終わって林の中になる。少し行くと左に湯坪温泉や筋湯温泉に行く県道40号線を分ける。
昨日からずっと熊本・大分県道11号線を走ってきたわけだが、ここの道路標識でおれは初めてやまなみハイウェイの文字列を見かけた。熊本県内では使わない名前なのだろうか。
さてそこからはワインディングでの上りが始まる。昨日大観峰の近くからも遠望したアレだが、実際に走ってみると驚くほど勾配は緩い。すいすいと上っていくことができる。
この写真では、少し見づらいが、正面上方の斜面にコンクリートの被覆がふた筋ある。
標高1180mあたりまで来ると左手に阿蘇方面への雄大な眺めが出てくる。ただ例えば一昨日(俵山峠を越えた日)あたりと比べると空気が澄んでいないようで、風景は少し白っぽい。春らしいと言うよりは、夏らしい空の感じである。
それを過ぎて右にヘアピンカーブを折り返したところに駐車場があり、そこからも同様の眺めがあるが、木があるのでさっきの路肩からの方が眺めがよかったように思う。
これはそのさっきの路肩からの眺めである。正面やや右側の山並みは阿蘇五岳であり、右端に大観峰あたりの建物がある。手前には、麓の三愛高原レストハウス(中央右寄りの赤い屋根)や国道442号線の橋、そして牧草ロールの転がる牧草地などが一望できる。このときは知らなかったが、左手遠くに見える山影は、大分宮崎県境の祖母傾あたりのもののようだ。
このあたりからは少し勾配がきつくなったように感じるが、別に大したことはない。
道端には木の花はあまり見られないが、草の花は多い。ウマノアシガタの黄色い花が多いが、ハルリンドウもある。そして鮮やかな紫のスミレ(おそらくホコバスミレ)もある。
加えて、どことなく神秘的なものとして、この付近では白い綿毛が風に巻き上げられて空を飛んでいる。タンポポなどではなくて、何かの木だったようだが。
やがて牧の戸峠の鞍部に到着。牧の戸峠 標高1330mの道路標識と牧ノ戸峠の看板(九州によくあるコンクリートのアレ)がある。
ここには駐車場があるが、道路の静かさのわりに車がたくさん停まっていて驚く。くじゅうの登山口になっているのでそのせいらしい。あとここには峠の茶屋もある。
道路の左側(駐車場と茶屋の反対側)には展望所があるようなので、歩いて行ってみる。距離は案内標によると200mだ。歩いて行った先には東屋がある。
ここからはくじゅうの山(あとで知るがメインで見えていたのは三俣山)や下っていく先の路面が見えるし、阿蘇方面の山々や牧草地もちらりと見えている。時季になるとくじゅう連山はミヤマキリシマでピンクに染まる! という話を聞いたことがあり、今はその時季なような気もするが、少なくとも、ここから見るくじゅう連山は全然ピンク色には見えない。
しばらく休んで出発。林の中であるが、少し行くと行く手の盆地状の眺めが少しある。草地があり(あとで知るがタデ原湿原)、その向こうにはバルタン星人のような双耳峰(あとで知るが由布岳)がある。
ワインディングを下りてその盆地のような中に入っていく。長者原(ちょうじゃばる)という地名のようだ。右側にビジターセンターがある。標高は1030mあまり。
ここからはさっき見下ろしたタデ原(タデわら)湿原に入ることができる。これについてもつらつら書くことはやめておくが、天気がいいとか、植物に興味があるとかであれば、寄ってみるべきだろう。このときはウマノアシガタやサワオグルマやハルリンドウの花が目立った。もちろん、振り返って見るくじゅうの眺めもよろしい。
さて自転車に戻り続きを走ることにする。ゆったりとした下りが続く。道端には、上りでは少ししか見かけなかったハルリンドウが雑草のようにたくさん生えている。
少し行くと右側に田んぼが広がる。まだかなりの標高(860mほど)であることを忘れそうな風景だ。それを過ぎると少し上り、朝日台に到着する。ここからはさっき見たのよりもさらに広くくじゅうの山々を見ることができる。前景が田んぼなので、どこかのどかな風景でもある。
ここからもまだまだやまなみハイウェイは続いていくが、道路沿いの眺めがいいのはこのあたりまで。これ以降は林の中の区間が多いのだ(それはそれで北海道を思い出させるものではあるが)。だらだら書いてもしかたないので、この記事もここまで。
2018年1月11日初版 / 2018年6月7日更新