輝嶺峠
静寂の中の断崖峠
読み方 | きれいとうげ | |
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標高 | 770m | |
位置 | 宮崎県小林市 | |
道路 | 国道265号線 | |
水系 | 大淀川 | |
実走日 | 2010年3月27日(土) | |
地図など | Google Maps・地図院地図 |
輝嶺峠は、尾股峠とともに、西米良と小林を結ぶルート上にある峠である。地図を見れば、国道のくせに明らかに人気のない淋しい峠道であることがわかる。同時に、この素晴らしい峠名が目を引く。
それで実際に訪れてみると、峠道の淋しさは想像以上のものだった。また、とても眺めがいいというほどのものではないが山がよく見え、輝嶺の名前はここから来たのだろうと思われた。
冷静に書いてはいるが、実はおれはこの峠がめちゃくちゃ好きである。理由は、人の気配のない断崖の道でありながら、どこか穏やかな雰囲気……とでも言えばいいのだろうか。
おれはこの峠には2回訪れた。ここで取り上げるのは2回目に槻木峠との連発で越えたときの話である(ちなみに1回目は尾股峠との連発だった)。
槻木峠から下りてきて国道265号線に突き当たり、右折して輝嶺峠を目指す。標高は400mほど。いきなり1.5車線の傷んだ舗装の登坂が始まる。
最初は左手下に田代八重(たしろばえ)ダムのダム湖を見下ろしたりするがじきにそれもなくなる。最初から断崖上の道であり、左手には深い谷(蝉の谷)があり、その斜面はヤマザクラと見事な造林地に覆われている。
道路は1.5車線程度でひたすら山肌に沿いつつも全体としてはまっすぐ突き進む。大縮尺の地図を持っていても、対照物がないので現在位置の把握は難しい。単調と言えばこれほど単調な峠道はないだろう。
この写真は、そういった意味で、輝嶺峠の東側の道を代表する写真である。
しかしその淋しい単調な道を上っていると、だんだんと気持ちがハイになってくる。雨の中を黙々と走っているときの高揚感に似ている。違うかな。
標高640m地点の橋のあたりからはカーブが現れてくるので、地形図上での道筋のトレースは容易になる。
多少空が広くなり、左後方にこれまで上ってきた道の白いガードレールが続く断崖が見え(青木峠の会吉トンネルと明通トンネルの間の風景に似ている)、谷の向こうに西米良の天包山(井戸内峠の南側にある山)が頭を出してくる。
やがて鞍部に到着。鞍部は右カーブにあり、直進する側には林道があって大森岳林道の看板がある。カーブの外側には大山神と書かれた鳥居がある小さな祠がある。カーブの内側には地蔵尊があるが、なぜかその前には鳥居がある。
鞍部付近から左手を見ると、前述の天包山が最も目立つが、よく見るとその左側に石堂山(井戸内峠の北側にある山。1547m)と市房山(西米良と上球磨における最高峰。1720m)もどうにか見えている。寒い時季には、これらが雪をまとって輝嶺になるということだろうか。
ちなみに尾股峠は石堂山の手前にあるはずだが、さらにその手前の尾根に隠れており見えない。
一方、大山神の祠の裏に回ると、逆光の中に霧島連山が木の陰になりながらどうにか見える。ただ、後述のように、ここよりは下りの途中のほうが見やすい。
さて出発。下りはヤマザクラがよりいっそう多く、とても美しい。これから下る道や、これまで下ってきた道のガードレールが見えるような箇所が多い。また、霧島連山が木に邪魔されずに一望できる箇所もある。テーブル状の最も高い山が韓国岳で、左に見えるのが高千穂峰だ。
ちなみに下りの途中にある国道標柱には小林市輝領峠と書いてある。いや輝領じゃなくて輝嶺なのに。嶺ってのが肝心なとこなのに。
こちら側の下りは、上りと違ってぐねぐね度が高く、単調ではない。しばらく下ると集落が始まり、道は広くなる。
やがて、右からやってきた県道143号線に突き当たり、左折して須木(かつての西諸県郡須木村の中心集落)を目指す。この県道143号線というのは槻木峠の下りで須木へのメインルートとして標識に出ていた道であるが、この交差点でも国道265号線との格の差を見せつけてくれる。
須木まで下るとだいぶあたりは開けた感じになる。標高は370mほどである。
2009年4月9日初版 / 2010年6月17日差替