日の尾峠
阿蘇の尾根を横断する林道峠
読み方 | ひのおとうげ | |
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標高 | 980m | |
位置 | 熊本県阿蘇郡高森町・阿蘇市 | |
道路 | 林道日ノ尾線・林道桜ヶ水線 | |
水系 | 白川 | |
実走日 | 2017年5月28日(日) | |
地図など | Google Maps・地図院地図 | |
関連書籍 | 日本百名峠 |
日の尾峠は阿蘇の高岳と根子岳の間の尾根上にある峠である。根子岳は阿蘇山の本体から少し離れた感じのする山であるが、高岳と同じく阿蘇五岳のひとつではあるから、日の尾峠は阿蘇山を横断する道にある峠である、と言ってしまってもよさそうだ。
大観峰から見た阿蘇を釈迦の寝姿と言ったりするそうだが、それにならうと、この峠は釈迦の喉あたりにある。
阿蘇山を突っ切る、と思えば、それだけで非常に価値があるように思われるが、それだけではない。おれは全国津々浦々を走ったわけではないけれども、少なくともその中では、この峠は類まれなレベルで眺望のいい峠である。
ところで、この峠道は林道らしいが、ダートは残っていない――つまり、全舗装である。しかしコンクリート舗装の区間がかなりあり、道幅も狭いので、いわゆる快走路ではない。
この峠の名前は日ノ尾峠と書かれていることも多いようだ。おれは現地で見た看板の表記を取っておくことにする。
これは峠を越える前の日の話である。
俵山峠では根子岳は見えなかったが、下ってきて県道28号線を高森に向かって東進していくと、だんだんとそれは阿蘇山に向かって右の奥の方に見えてきた。何だか異様なほどにあたまがギザギザした山である。
高森駅まで来ると標高は540.6m。この先は上りになるので、峠の麓はここだということにはなるだろうが、前日のうちに、峠に向かう途中にある鍋の平キャンプ場(キャンプ村という表記もあり)に入っておくことにする。
鍋の平キャンプ場への道は、率直なところ、とてもわかりにくい。ただ、キャンプ場の入口にある集落の名前が前原であることを覚えており、かつ、このへんには交差点に小さい道路案内図が備え付けられていることもあり、何とかなった。
牧草地の中を前原に向かうと、正面に高岳と根子岳が見える。その間にある鞍部が日の尾峠なわけだが、こうしてみるとたいした上りは残っていないように見える。
日が暮れちゃうじゃないかとあせりつつ、どうにか鍋の平キャンプ場に到着。標高は770mほどある。ちなみに、買い物は、高森の市街地よりは、町役場の近くの国道325号線沿いの方が不自由がないと思う。……高森に限らず、駅前商店街にはもちろんがんばってほしいのだが、事実を書いておけば。
前日の話はここまで。
翌朝は峠に上るわけだが、気がかりなのは、キャンプ場の先に、この先は工事のため通行止、という看板が出ていたことである。工事現場は4.7km先で、路線名は林道桜ヶ水線で、期間は6月10日まで、とある。正確なところはわからないが、これは峠の向こう側だと思われる。まあここまで来たわけだから、行くだけ行ってみて、ダメならダメで引き返して国道265号線に迂回することになるだろうか。もちろん工事の邪魔はしたくないし。
さて出発。道はコンクリート舗装である。キャンプ場を過ぎるとすぐ、道端に茶色い牛がいるのでびっくりする。牧草地の中なのだ。
高岳を見つつ開放的な草地の中を上る。振り返ると南側の外輪山を見ることもできる。根子岳は、あまりに近すぎるせいか、もうあまり見ることはできない。
少し行くと道は林の中になり、ゲートがある。通行止という意味ではなく、牛が逃げ出さないようにという意味のようである。ゲートにはタイヤがついていて、ロープを外すと回転できるようになっている。通ったあとにはゲートとロープを元に戻す。まあここで牧草地は終わりで、ここからは本格的な峠道ということだ。
そこから道はけっこうな勾配で上る。ヘアピンカーブなどもあるが、左に寄り添う川も砂防ダムなどを交えてどんどん標高を上げてくるので、ずっと川沿いのままである。道端には、昨日の俵山峠と同様に、ノバラ(?)、ハコネウツギ、ガクウツギあたりの花が多い。
キャンプ場と鞍部の標高差は200mくらいしかないので、そんなに上ったなという感じがしないうちに鞍部の直下まで来る。
ここにはヘアピンカーブがあるが、ヘアピンで標高を稼いだ直後に下ってしまうという変な展開が待っている。まあ、下ってしまうのは沢を橋なしで横切るからなのだが。ちなみに、このヘアピンを過ぎたところからは路面はアスファルト舗装になっている。
あと、この付近では、別に珍しくもないが、ミズキの花も見かけた。
鞍部に到着。やや薄暗い切通しである。日の尾峠の名前の入った案内看板、九州自然歩道の看板、日ノ尾林道の標識などがある。案内看板には、この峠は古来から阿蘇と南郷を結ぶ重要な道でした、とある。
上記の阿蘇というのはカルデラの北側の谷(黒川筋)である阿蘇谷のことで、南郷というのは南側の谷(白川本流筋)である南郷谷のことを指している。例えば宮地は阿蘇谷で高森は南郷谷である。
鞍部のすぐ先にはバリケードがあり、全面通行止と書いてあるのだが、期間が5月31日までだったり、規制が8時から17時までに限定されていたりと、キャンプ場にあった看板と内容が異なっている。まあ……行くのみだ。
出発。少し下っていくと右手の展望が開け、思わず声が出る。草に覆われた険しい外輪山が谷の向こうに見え、その向こうにくじゅう連山が見えている。
ゆっくり下っていくとさらに眺めは広がってくる。左手にはカルデラの中の集落や水田が見え、その奥には外輪山の壁があり、その上にはおそらく大観峰のであろう建物が見えている。手前にはこれから下る道筋も現れてくる。
またときどき手前側の高岳を見上げる地点もある。控えめに言っても、おそろしく眺めのよい峠だ、ということになるだろう。
ちなみに通行止になっている区間は2つあった。それぞれキャンプ場と鞍部にあった看板に対応しているもののようである。どちらも実際には工事はやっていない(日曜だからか)。見る限り、工事の内容は、舗装工事のようである。しかも舗装化それ自身は完了しているように見える。
小さい集落のようなものがあって、そこからは草地の向こうに高岳と楢尾岳を見る。
そのへんからは道は再びコンクリート舗装となり、林の中の、まるでわざと掘り下げたような連続する切り通しを下っていく。あとで地図を見て知ったが、このあたりではすぐそばに鉄道の豊肥本線が通っている。
やがてその道の出口に出る。ここの標高は560m弱。さらに北上して宮地駅まで行くと標高は538.6mで、これは奇しくも高森駅の標高とほとんど同じである。ここまで来ると盆地の中という感じが強くなる。
2017年11月30日初版