五郎ヶ越
全方位が林業開発された開放的な峠
読み方 | ごろうがこし | |
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標高 | 720m | |
位置 | 宮崎県東臼杵郡美郷町・西都市 | |
道路 | 宮崎県道39号線 | |
水系 | 小丸川・一ツ瀬川 | |
実走日 | 2007年10月27日(土) | |
地図など | Google Maps・地図院地図 | |
関連書籍 | 九州の峠 |
この五郎ヶ越はかなり説明しにくい場所にある。同じ日向灘に注ぐ小丸川と一ツ瀬川の間の尾根を越える峠である。この周辺は充実した林道網で有名であるが、実際あたりには人の手の入った山と林道がたくさんある。そんな中を抜けるこの峠道の景観は、ある意味異様でもあるが、峠道の感触に明るさとのびやかさを与えてもいる。
この峠の名前は、書籍九州の峠によると、侍の一行に五郎という者が馬を貸してくれたことに由来するそうである。
おれは海沿いの高鍋の町から小丸川をさかのぼり、途中から支流の渡川(どがわ)沿いに谷を詰めてきた。それにしても行楽シーズンの土曜日だというのに行楽客は誰もいない。途中で見た渡川ダムのダム湖にしても、とても美しいのだが他の地方で見かけるダム湖のような華やかさがない。もちろん別にいいのだけれども。
渡川ダムのダム湖を過ぎると上渡川と呼ばれる地区で、ぽつぽつと集落がある。
しばらく渡川沿いに進むと、やがて県道39号線は左折して谷底を離れる。峠道の始まりである。左折地点にはそれとわかる標識が出ているので間違うことはないだろう。標高は370m。
上りは最初だけ薄暗い林の中だが、あとは眺望の開ける明るい道となる。見えるのは林業開発の手の入った山と、さっき上ってきた渡川沿いの集落ばかりだ。幅は狭めの2車線。勾配はそれほどきつくない。交通量も多くない。
ちなみに道とその脇の林の間にはネットが張り巡らされている箇所も多い。最初は動物よけかとも思ったのだが、おそらくは人の立ち入りを防ぐためのものだろう。
谷間を走る区間はなく、ひたすら山腹をトラバースしていき、徐々に眺めの向きが変わるのだが、どの方角も同じように開発された山ばかりが見える。
しばらく行くと林の中になるが薄暗くはならない。鞍部が近くなると再び背後の眺めがよくなる。
ヘアピンを上り切り、薄暗い切り通しの鞍部に到着。ここは美郷町と西都市の境界にあたっており、その標識があるほか、美郷町に下りる通行者向けに百済の里の標識もある。また路傍には西南の役 西郷隆盛退軍の路・五郎が越の標柱も建っている。あちこちにあるなあ、退軍路。
書籍九州の峠によると、この鞍部の切り通しの上にはお大師様が祀られている
というが、確認しなかった(というか、忘れていた)。同書の記述によると、西都市側から上ってくると左側にあるということだ。つまりこの写真だと右側になる。
さて西都市側への下りである。こちら側は特に眺望はないようだ。あっという間に谷川の水準にまで下りてしまう。そして集落がぽつぽつと始まる。標高320m地点で林道米良椎葉線との分岐を過ぎて、ごくゆっくりと谷は広がっていき、左手に雪降山の威圧的な岩峰を見上げるようになる。
北側は小丸川水系の渡川の川筋だったが、こちら側は一ツ瀬川水系の銀鏡(しろみ)川の川筋である。この川筋には野営の適地はなさそうなので注意しよう。
2007年11月16日初版 / 2010年4月7日更新