筒井峠

無人の狭路峠

標高530m
位置滋賀県犬上郡多賀町・東近江市
道路滋賀県道34号線
水系淀川

実走日2013年10月13日(日)
地図などGoogle Maps地図院地図

筒井峠は琵琶湖に注ぐ犬上(いぬかみ)川をさかのぼっていったところにある峠で、峠の反対側は同じく琵琶湖に注ぐ愛知(えち)川の上流域となっている。

主要地方道だし、地図上の道筋もけっこう便利そうに思え、それなりの幹線道路なのかと思っていたが、実際に行ってみると全然そんなことはなく、非常に静かな田舎道だった。まあそもそも一部は通行止でもあったのだが……。

筒井峠というこの峠名は、地図では昭文社のツーリングマップルでしか見かけたことがないが、現地でも見かけることはなかった。どこから来たのだろう。

……探訪派の自転車乗りでなければどうでもいいことだとは思うが、微妙にサイコ風味もある峠だった。

無賃橋

おれはこの峠を犬上川筋側から越えた。県道13号線の無賃橋(面白い名前)で犬上川の左岸に移って川をさかのぼり始める。あたりの風景はどこか懐かしい。川にはほとんど水がなく、白い石がごろごろしており、橋脚には流木が引っかかっている。ふむ、琵琶湖南岸の山は古くから荒廃していたとは聞くが、これほどか。関係ないのかな。

走るとあっという間に風景はひなびてきた。静かである。無心にじりじりと上っていく。おれはここへ来る前に彦根城に寄っており、そこはものすごい人出だったので落差が鮮やかである。


萱原の集落たがゆいちゃん

名神高速をくぐると犬上川左岸の道も終わりである。橋を渡って県道226号線に突き当たる。そこを右折して犬上ダムを目指す。

山村を行く道の雰囲気になってきた。川相の集落あたりからは道もやや狭いところが出てくる。この周辺はやたら飛び出し坊やが多く、集落があると必ずヤツがいるのだが、ここでは多賀町マスコットキャラクター たがゆいちゃんのものもよく見かける。飛び出し坊やだらけなのは行政ぐるみなのか。

ダムの手前の萱原の集落を過ぎると、薄暗い林の中にでかいLEDの掲示板が建っており通行止 崩土 この先という字を点滅させている。いや、それならもっと手前で出しててほしいんですけど……。まあ、これは気にしないでおこう。


犬上川の渓流沿いに行く県道229号線との分岐

それを過ぎると犬上ダムに上りつく。釣り人がほんの数名いるだけで静かなものだ。その静かな湖岸を縫って進む。道幅は1.5車線くらいか。どこか宮崎の渡川ダム(五郎ヶ越参照)を思い出す。なお湖畔の標高は250mほど。

ダム湖が終わると犬上川の渓流沿いの上りである。なかなか爽快である。深い谷ではなく雰囲気は明るい。一部に路肩が崩れているところがあるが特に通行に不自由はない。一方で、通行止をいいことにということか、道幅をいっぱいに使って丸太を伐り出す作業をしているところもある。

さて道は最後はぐぐっと一気に上って県道229号線との分岐にたどり着く。標高は390mほど。通行止区間はここで終わりである。道路地図を見ていたときには、この辺は平地もあり道路ももっと立派なものなのだと勝手に想像していたが、全然違った。


河床橋?標識

少し休んで出発。最初は薄暗い林の中である。最初の左カーブで谷川を渡るのだが、何と河床橋(というんだっけか)になっている。大山の(鍵掛峠参照)とは異なり水も流れている。これは雨の日は通行止かもしれない。

この地点にはちょっと変わった道路標識もあった。凹凸ありの上に水が載ったデザインで、河床橋(同)を表しているのだが、これ、公式なものなのだろうか。


左側が開けてくる

それを渡って上っていくと林の中から抜け出し、左前方の眺めがやや開けてくる。峠道を峠に向かって詰めているのに行く手が開けてくることには、このときは少し不思議なような変なような感じがしたのだが、よく考えるとそんなのはよくあることだ。折り返して上っているのだから。

道端では名前も知らない植物の実がたくさんなっている。その中ではミズキの実だけははっきりとわかる。


ありがとうございます鞍部直前の電柱

ところで、この道ではときどきカーブミラーの柱にありがとうございますというステッカーが貼られている。さらにはありがとうございます専用の標柱まである。意図がわからないだけになかなか不気味だ。

開けた眺めに背を向け、鞍部が近づいたところで、口を大きく開けたクマの絵姿が電柱に貼られているのが目に入り、思わずペダルを踏む脚が止まる。なんて悪趣味な貼紙なんだ……。しかしよく見ると、これは別に描いたものではなくて、よくある黄色と黒のしましまか何かがボロボロになったものらしかったのであった。いずれにしても、夕方の無人の峠でこれを見るのは心臓に悪いんで、勘弁していただきたい。


鞍部

さて鞍部に到着。右側が少し広くなっており、記念碑 陸上自衛隊県道改良工事と書かれた石碑、奥永源寺 木地師街道と書かれた木の看板、惟喬親王御陵と書かれた看板や鳥居がある。峠の標柱のようなものはない。

一方で、この峠にはかなり多数のサルがいた。こちらを見ると逃げ腰ではあるが一目散というわけではない。こちらもあまりゆっくり休む気はせず、さっさと下り始める。

少なくとも、峠道で会った人よりもサルの方が多かったのは間違いない。


鞍部直下の集落

下り始めるとすぐに人家が現れる。左手上方に水色の三角屋根が多数見えたので、ペンション街かなと思ってよく見ると、わらぶき屋根をトタンにふき替えた民家だった。

1.5車線程度の道で山村を縫って進む。川がそばに寄り添う。だから犬上ダムまでの上りに雰囲気は似ている。やがて政所郵便局の脇で国道421号線にぶつかる。標高は291m。

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2014年1月16日初版