栂坂峠
整備された普通の峠
読み方 | とがさかとうげ | |
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標高 | 680m | |
位置 | 奈良県宇陀郡曽爾村・宇陀市 | |
道路 | 国道369号線 | |
水系 | 淀川 | |
実走日 | 2015年9月19日(土) | |
地図など | Google Maps・地図院地図 |
栂坂峠は奈良県の北東部にある、東西方向の街道上にある峠である。この街道がどういう用途でよく使われているのかについては、地元民ではないのでヘタなことは言えない。少なくとも、国道369号線と368号線をつなげたその街道の道筋はまっすぐ東西に伸びていてきれいだが、峠連発だし、奈良盆地の桜井から伊勢湾岸の松阪まで大きな都市がないのも事実だ。
峠道としては、まずまず整備が行き届いていて、あまり面白味を見出すことはできない。変わったところ(でもないか)を挙げれば、異様にロードレーサーが多いということは言える。
この記事では、おそらく多数派のこの峠の用途には合っていないだろうけれども、三重県の名張を出発地としての栂坂峠越えを紹介したい。それは、この峠が名張川の最上流域にあるので地形的にはそれが自然だというのもあるし、それ以外にこの峠について書くことがあまりないということもある。
名張という街は、地図を見るとぎょっとするほどの住宅地だが、立地自体はけっこう山深い。県道81号線で青蓮寺(しょうれんじ)ダムを目指していくと、すぐに山道になる。道はけっこうレーサーの比率が高い。道端にはツユクサとクズが多い感じか。あとツリガネニンジンが少々。ぐいぐいと上る。
少し行くと右側にダムの堤体が見えてきた。おお……これはアーチダムだな。
上り切るとダムの上を行く道との分岐である。県道81号線はこの先の弁天橋という橋が通行止だとかで、ダムを渡って迂回しなければならない。それでダムの上を行く。アーチダムだからゆったり右カーブしている。右手やや遠くには名張の市街地を見下ろす。左側には赤いランガーの弁天橋が見えている。
なお名張市街にある名張駅の標高は200mくらいで、ダムの堤頂の標高はおそらく280mくらい。
ダムを渡るとぐっと上り、交差点を左折してダム湖沿いに行く。上って下って進んでいくといくつかぶどう園がある。
やがて水色の同じくランガーである青蓮寺橋が見えてきた。それを渡って県道81号線に戻る。
そこから少し行くと香落渓(かおちだに)となる。渓流もそうだが頭上の柱状節理の絶壁、そして深い緑がいい感じである。交通量も少ない。レーサーももういない。道は広狭あっても2車線あったと思う。なおけっこうシェルターはある。
しばらく行くと香落渓は終わり、山中の小さな集落で奈良県曽爾村(そにむら)に入る。写真を撮っていると、向こうから歩いてきたおじさんハイカーにこれを行くと青蓮寺湖ですか?と尋ねられる。その通りだが、歩くにはかなりの距離だぞ。
出発しようとすると、まあ読者にはどうでもいいことだが、自転車にトラブルが発生していた。フロントディレーラがシートピラーを軸として回転してしまっており、とてもではないが走れる状態ではない。しょうがないので工具を出して直す。こんな障害、発生したことないぞ……。初めて自転車で入る奈良県からの、(ちとギャング風な)挨拶だった。
再出発する。少し行くと正午になり、恋はみずいろのメロディーが谷間に流れた。
この曽爾村は、看板によると日本で最も美しい村連合のメンバーのようだが、確かになかなか美しい景色の村だ。青蓮寺川があり、向こうには草原の曽爾高原があり、吊橋が架かっていたりする。田んぼは黄色で、コンバインが断続的にクラクションを鳴らしながら稲刈りをしている。
やがて曽爾村の中心街にかかる。県道はそれをバイパスしてしまうが、おれは村の中心部を抜けていく。すると国道369号線にぶつかる。さて栂坂峠の本番だ。標高は430mあまり。
道は2車線あって整備された感じである。交通量はまあそんなに多くはないと思うがレーサーは多い。少し行った山粕の集落では集落の中を通ってみたがとても迷いやすい。
また国道に合流して上る。広い2車線がまっすぐドーッと上っている。面白みはない。途中、法面をゲンノショウコの花が埋めているのを見た。大部分は赤花だったが一輪だけ白花が混じっていた。
やがて右に旧道が分かれる。旧道も2車線あって広い道だ。見ていると、やってくるロードレーサー達はみな新道(長いトンネルがある)を走っていくのでちょっと驚いてしまう。えぇー……まあ、他人のすることだ。
じきに鞍部に到着。林の中の切り通しだ。市村界の標識と伊勢本街道の標識があるが、ここが栂坂峠であることを示すものはない。路肩には赤花のゲンノショウコとヤマジノホトトギスが咲いている。
さて出発。1箇所だけヘアピンカーブがあるが、おおむねまっすぐな感じの道だ。林の中の狭い2車線で、上りよりも狭い。
この写真では、折り返して下ってきた道の白いガードレールが、自転車の上に写っているのだが、何だか知らないが縮小したら全然わからなくなった。心眼で見てください。
新道の橋の下をくぐると室生から来た道にぶつかる。室生寺方面へ下るならば直進でいいが、おれはこれから染谷峠に転戦(というほどのものでもないけど)するので左折である。この地点の標高は579m。
2015年12月24日初版