棚橋峠

海のすぐ近くなのに異様に険しい峠道

読み方たなはしとうげ
標高290m
位置三重県度会郡南伊勢町・大紀町
水系棚橋川・宮川

実走日1995年2月28日(火)
地図などGoogle Maps地図院地図

紀伊半島はどこを走っても勾配ばかりで楽ではない。山の中はもちろんだが海沿いの道もそうで、自転車で紀伊半島の海沿いをまわれば、朝から晩までアップダウンを繰り返す日もありうる。

この棚橋峠は、おれが行った1995年当時は、そんなアップダウンのうちのひとつで、その中ではかなり大きい方だった。今では長大な紀勢南島トンネルをはじめとするトンネルが開通しているので、この峠をわざわざ越える必要はなく、通過は随分楽になったはずである。

峠道は、伊勢湾に注ぐ宮川の集水域が熊野灘のすぐそばまで迫る中を行く険道であり、海のすぐ近くとは思えない雰囲気がある。

近くに錦峠という峠があり、紀勢南島トンネルがない当時は、この棚橋峠は錦峠とセットで越えなければならなかった。標高は錦峠よりも棚橋峠の方が高いのだが、しばらくの間、棚橋峠という名前を知らなかったので、このページは錦峠という名前で掲載していた。しかし、2013年版の昭文社ツーリングマップル関西棚橋峠という名前が載っているのに気づいたので、掲載名を変えることにした。

峠道の始まり付近の左カーブ

この日の朝は南伊勢町の五ヶ所浦という集落(当時は南勢町の中心街だったが、合併後も中心街らしい)の公園で迎えた。とても意外なことに、この公園にはおれ以外のキャンパー(若夫婦)がいた。車に家財道具一切を積み、自転車(確かランドナー)をくくりつけて、東京から石垣島への引越し旅行の途中とのことだった。その旦那さん曰く、君も早く自転車旅行なんてやめた方がいいよ。僕みたいになっちゃうからさ

……そんな(思い出の)五ヶ所浦から、海沿いのアップダウンを西へえんえんと走り抜き、古和浦に到着。道の整備状況は突然悪くなり、峠越えが始まる。


下段の道を見下ろす

最初のうちからかなり上の方の道が見え、天生峠かこれは?と思いつつ上る。その高度差をクリアすると、まるでグラビアのページをめくるようにまた上の道が見えてくる。

交通量は多くはないが、ないわけでもない。道がかなり狭いので、普通車同士でもすれ違うのに難儀をしている。五ヶ所浦の公園の彼は、紀伊半島で、国道を自転車で走っていたらバスとすれ違えなくて、しかたなくサイドバッグを外してやり過ごしたという体験を話していたが、実際にこういうところを走ってみると、ありそうな話にも思える。


棚橋トンネル入口付近からの眺め

想像以上にきつい勾配と闘うことしばし、棚橋トンネルに到着。ここが棚橋峠の鞍部となる。

ここからは今まで上ってきた道と棚橋川の谷、そして緑色の海が見えた(写真は撮っていない)。しばらく山中を走っていたので、にわかには緑の水面が海だとは気づかなかった。


棚橋トンネル錦峠の鞍部

この棚橋トンネルは非常に狭く、照明もない恐怖のトンネルである。それでも大型車が走っていたりするからびっくりだ。おれは覚悟を決めて全力で突破した。

棚橋トンネルを抜けると下りになり、標高は200mを切る。突き当たりを左折して少し上ると錦峠の鞍部(標高は219m)に到着。ここからは海岸の錦の集落まで一部を除きガンガン下る。ちなみに、錦からさらに西に進めば紀伊長島町に出るが、その間にも、異様にきついアップダウンがもう一発ある。

© 2003-2016 tfi72. All rights reserved.
2003年1月23日初版 / 2013年12月26日差替 / 2016年9月22日更新