藤坂峠

森と断崖と海の峠

読み方ふじさかとうげ
標高510m
位置三重県度会郡南伊勢町・大紀町
道路三重県道46号線
水系村山川・宮川

実走日2014年9月28日(日)
地図などGoogle Maps地図院地図

藤坂峠は、熊野灘に面した集落(かつての南島町の中心集落)と内陸の街道(国道42号線)を結ぶ狭路にある峠である。剣峠棚橋峠と同じ並びにある峠でもある。

峠道は主要地方道に指定されてはいるものの、かなり未整備で、けっこうワイルドな/淋しい雰囲気を楽しむことができる。一部だけだが海の眺めもよい。

おれが持っていった2013年版のツーリングマップル関西昭文社)には、峠付近は広く開けていると書いてあり、なだらかな草原の中の道、というようなのを想像していたが、そういうのは全然ない。そこにあるのは断崖と海の眺めである。

県道46号線の入口

おれはこの峠の南側(海側)に、海沿いの国道260号線をえんえんと東から走り抜いてやってきた。そう書くとイヤイヤながらのように思われるかもしれないが、ちょっと地の果て風味があって楽しい道ではあった。特に寄り道した礫浦(さざらうら。2014年11月27日の表紙写真の付近)や阿曽浦のあたりは恐ろしいほど風情に満ちていた。まあ何にせよリアス式海岸なのでけっこう疲れる。

東宮からトンネル連発を抜けて下ってくると、河内川を渡ったところで右に県道46号線が分かれており、この先藤坂峠幅員狭小のため大型車(4t以上)通行不能ですのかなりでかい標識がある。ここが藤坂峠の峠道の入口だ。

ちなみに、藤坂のトンネルを実現しようという看板も脇に建っている。


林の中のコケの生えた道を行く

道は最初から狭い感じだ。河内川の土手の上を少し行き、集落を抜けるといきなり折り返して上り始める。道幅は狭めの1.5車線ほどか。杉林の中の区間もあるものの、全体としては明るい感じだ。尾根の近くを、尾根を左に見つつ進む。

剣峠と同様に路面の中央にはコケが生えている。剣峠と違うのは、こちらにはガードレールがある箇所もあるところと、水音がしないところだろうか。あと、路傍にはゴンズイの赤い実と黒い種をぽつぽつ見かけるが、これも剣峠では見なかったと思う。


湾を眺める

しばらく上ると標高220m地点あたりでヘアピンで折り返すところがある。ここでは展望が開け、湾を眺め下ろすことができる。

ここからは尾根は道路の右側に移る。ちらりと左側の樹間の遠方に白茶けた山肌を見上げる。そういえば国見山鉱山とかいうのがあるのだった。地形図によれば、採掘しているのはせっかいだ。


断崖の道

そこからは尾根の左側をひたすら進むのだが、ガードレールはあまりなくなる。断崖の中腹に設けられた桟道のような感じの区間が長く、なかなか怖い。実際、休憩しようとして足をついたところ、左足が路肩の外側に出てしまい、あやうく滑落しそうになった。

左側にはちらりちらりと海が見える。さっき見えた国見山鉱山はもう見えない。


橋とアンテナを見上げる

黙然と進むとやがて目の前が開けた。左手前方の間近に橋のようなものが見える。そして正面の山頂にはアンテナがたくさん建っている。

それを過ぎると水音がしてきた。左側に沢も近づいてくるのだが、それとは別に右側の斜面に煉瓦が積んであって穴が開いており、水が流れ出しているところがある。飲んでいいのかどうかはよくわからない。すぐそばには小さな地蔵様がある。


橋から海を眺める

じきにさっき見た橋にさしかかる。確かに橋だがこれはまさに桟道だ。左手の眺めが開け、大変気持ちいい。


鞍部の切り通し

それを過ぎるとすぐに鞍部だ。深く広くて明るい切り通しだ。

鞍部は十字路(正確には五叉路かもしれない)になっているが、右折はNTTのアンテナ山への道だし、左折は鉱山への道だから、実質的には分岐になっていない。正面のこれから下る方角は、近くに高い尾根がなく広い感じの眺めになっている。


林の中を下るトリカブト

下り始める。眺望が開けるところはない。路面には落石がやや多い。ヘアピンカーブが連発し、これから下る道を見下ろす箇所が多い。

途中、道端にトリカブトが群生している一角があった。それを過ぎると今度はカーブの外側のやや離れたところにイノシシがいて、ブウッと唸って逃げていく。かなりでかい。あんなのに突撃されたら軽く宙を舞うだろう。

ほとんど1車線しかない薄暗い林の中の道をすいーっと進んでいくと、キセキレイがおれの前を飛んでいく。おれから逃げようとしているのだが、濃い林の中へは逃げ込みにくいのか、おれの進行方向に逃げていくため、数百mほど追いかける羽目になる。それをやっている間、ツッピーツッピーと声がしたのは、シジュウカラか。

2013年版のツーリングマップル関西には、カーブになぜか熊のぬいぐるみが!と書いてあるが、おれが気づいた限りそれはなかった。しかし、そういうあからさまに過渡的な状態を地図に載せるとは……そのセンスをおれは買う!

やがて道は藤川の谷底を進むようになる。このときは気づかなかったが、木屋の集落を過ぎると左側に水場がある(藤越の記事を参照)。

七保峠への道を左に分けてしばらく進むと大きめの集落に出る。すぐそこに弩級幹線国道であるところの国道42号線が走っているはずだが、あまりそういう雰囲気は感じない。

よく注意しないと見落としそうだったが、県道747号線への分岐に到着。山深い感じがするが、標高は60mあまり。

© 2015-2016 tfi72. All rights reserved.
2015年2月19日初版 / 2016年11月10日更新