相津峠

明るくセンチな、林道のような雰囲気の峠

読み方あいづとうげ
標高450m
位置三重県松阪市・三重県多気郡大台町
道路三重県道710号線
水系櫛田川・宮川

実走日2015年9月20日(日)
地図などGoogle Maps地図院地図

相津峠は大台町の三瀬谷の真北にある峠である。三瀬谷には大きな市街地があるし、特急の停まる駅もあるし、けっこう拠点性もあるので、この峠もそういう意味では便利な峠である。

峠としては、明るくて静かな、よくある林道峠という感じか。林道ではなくて県道なのではあるが。その中で、鞍部にある感謝の丘なる展望台の存在がちょっと異彩を放っている。

国土地理院の地形図を読む限り、相津峠というのはこの車道の峠ではなくてその隣の徒歩道の峠の名前である。しかしあまり距離はないし、後述の国道沿いの案内看板でも感謝の丘(相津峠)と書かれていて、車道の峠も相津峠と呼んでよい、と判断していいと思う。

櫛田川と茶畑

おれはこの峠を北から越えた。つまり櫛田川の本流筋からである。櫛田川沿いには国道166号線があるが、この峠の麓付近ではその対岸の県道745号線も使用できる。おれは高見峠から国道166号線を走ってきて、麓の少し手前で県道745号線にスイッチし、それからこの峠の道である県道710号線に入った。

その手前の、県道710号線と745号線の共用区間では、櫛田川とその向こうの茶畑を眺めることができる。とても美しい風景である。


相津の集落

さて県道745号線を左に分けて相津川沿いに上り始める。道は比較的広い。少し行くと右に延命水という水場がある。石(コンクリか)の器があって整備されている感じである。コップがやけにたくさんあるのには笑った。水はほとんど味を感じない。何にせよ、こういう炎天下の水場はありがたい。

さらに少し行くと相津の集落がある。茶畑のある、特に変哲のない谷間の山村だ。その中を流れる相津川の水は、さっきまで見ていた櫛田川と同様に猛烈に美しい。澄んでいる、というだけでなく、色が青いのだ。


明るい林の中の上り

やがてその集落を抜けて谷間の道になる。交通量は少ないが絶無ということはない。集落以降は道は多少狭くなっている。

やがて相津川を渡って道は折り返し、うねりながら斜面を上っていく。明るい林だ。多雪地帯というわけではないだろうが、タニウツギがけっこうたくさんあり、実をつけている。手近な山腹以外の眺めはあまりないが、ときどきやや遠くの三角形にとんがった稜線が見えるところもある。


とがった稜線を見る

やがて鞍部っぽいのを越えるのだが、これは川筋を取り替えただけでまだ相津峠ではない。明るい雰囲気の中を行く。左は開けた谷で右は尾根。青木峠を思い出したが、あとで考えると輝嶺峠にも似ている。左にはさっきと同じようにとがった稜線が見えるのみ。


鞍部看板1看板2

やがて桜並木が始まり、少し開けた鞍部に到着する。左に駐車場があり、地蔵堂、東屋、開通記念碑がある。

そして右側には、ありがとうの心 絶景 感謝の丘という看板が出ている。これ、さっき国道沿いのどこかの案内看板に載ってたな……。よく見ると裏には日本に、ここだけ 展望 感謝の丘とあり、凝ったことに文言が違う。そりゃここだけだろうよ、こんなキテレツな名前の展望台は……。


感謝の丘からの眺め

そう思いつつ階段を上り始める。標高差は30mかそこらだろうか。丘とはいうがちょっと狭苦しい山頂なのだった。向こうには三瀬谷の集落と紀勢道の橋を見下ろす。手前側にはこれから下る道筋が見えている。絶景とまでは言えないような気はするが、いい眺めである。

ここには福の鐘という鐘が設置されていて、ひもを引いて鳴らすことができるようになっている。

その説明看板には愛郷無限と書いてあるのだが、おれは愛情無限と読み間違えて(あとで写真を見て読み間違いに気づいた)、いろいろ変なとこだなあ、まあいいけど、と思ったのだった。変なのはおれのあたまなのだった。

また、感謝の丘の名前の由来を書いた石碑もここにはある。ここは初日の出の名所だそうだ。まあ何にしても、おれも今日このインケツ風味だった日(高見峠参照)に相津峠があったことを感謝しなければならない。


下りの桜並木

さて出発。下り始めにも桜並木がある。逆光線の中で見る、少しだけ紅葉の始まった、峠道の桜の木はどうしてこうおセンチな感じがするのだろうか。半原越葉原峠に似た、ちょっと異世界な雰囲気も漂う。

ときどき展望のある、明るい急なワインディングを下る。右に三瀬谷のダム湖をちらと見下ろすことができる地点もある。これは感謝の丘では見えなかったものだ。

ワインディングが終わるが早いか集落が始まり、集落が始まるが早いか大きな市街地になる。突き当たりが三瀬谷駅だ。標高は91.5m。ちなみに、鞍部を発ってから三瀬谷駅に着くまでは、写真を撮りながらだったにもかかわらず11分しかかかっていない。

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2016年5月12日初版