ヤビツ峠

清純な自然と都会の陰翳を併せ持つ峠

読み方やびつとうげ
標高761m
位置神奈川県愛甲郡清川村・秦野市
道路神奈川県道70号線
水系相模川・花水川

実走日2005年9月17日(土)
地図などGoogle Maps地図院地図

ヤビツ峠は、宮ヶ瀬湖から緑豊かな丹沢山地を抜けて秦野に抜ける県道の峠である。素朴な名前、深い緑、狭い未整備な道、清水、雄大な展望、……などなど、峠として魅力的な特徴を兼ね備えて、地元ではかなり有名なようで、多くの人が訪れているようだ。

率直なところ、おれはこの峠が好きではない。それは、何だか750mくらい隆起した皇居のまわりのランニングコースみたいで少しも峠らしい風情を感じないからなのだが、このような表現でうまく伝わるとも思えない。

宮ヶ瀬公園

この峠の北側の麓は宮ヶ瀬湖畔である。おれはこの日は宮ヶ瀬湖へは相模湖からアップダウンをいくつか越えて来た。ひとつひとつはどうということのない坂なのだが、特段道路が面白くないせいかけっこうきつく感じた。

宮ヶ瀬湖は宮ヶ瀬ダムによる人工湖である。雰囲気は明るく、湖畔には駐車場や土産物屋や芝生の公園などがあって賑わっている。さらには人工虹を発生させるための大噴水があり、ロードトレイン ミーヤ号まで走っているとのこと。自転車乗りには休憩適地だし、家族連れにもいいところだろう。

ちなみに、日本ダム協会のサイトによると、宮ヶ瀬ダムは、浦山ダム(有間峠参照)と並んで、堤高が156mもあり、日本屈指の大ダムである。

その駐車場を過ぎて少し行くとヤビツ峠の峠道の入口がある。右折して入る。標高は300mあまり。


中津川の渓谷

さて右折するといきなりローリング走行禁止なる看板が出ている。おれは5月にもこの峠を訪れていて、そのときは実際にそれをやっている連中に会ったのであるから、実態に即した看板であることは間違いない。

脱線だが、東京に移住して久しい友達にヤビツ峠の名前を出したところ、ヤビツ峠? 壊し屋の出るとこでしょという反応だった。壊し屋というのは、夜中にカップルの乗った自動車を襲って破壊したりするアウトローな連中らしい。

川沿いに1車線程度の幅しかない未整備な道路が続く。自動車も多いが、最も多い通行者は自転車である。キャンプ場がぽつぽつとあり、道端にぽつぽつと路駐している自動車を見る。

それにしても緑は濃く、直射日光下の水はエメラルド色に澄んでいてその美しさは例えようもない。


北側の上り

しばらく上ると札掛の集落がある。どこかこの雰囲気は山伏峠の雨畑側に似ている。標高は450mほど。ここまでの上りはとても緩く、これなら相模湖から宮ヶ瀬湖までのほうがきつかったというくらいなのだが、ここからが本番である。同時に行政区域も清川村から秦野市に移る。

写真だけ見ると静かな峠かもしれないが、交通量は全体を通してけっこう多く、しんとした感じにはなかなかならない。四輪車、二輪車、自転車、歩行者、どれをとっても峠道を包む自然と比べて明らかに不釣合いな水準で多い。


鞍部

初のヘアピンカーブをクリアして進むと、青山荘を過ぎてやがて名水護摩屋敷の水に到着。

石造りの噴き出し口はムードがあるけれども、(よくあることだが)大量のポリタンクやらペットボトルやらを周りにびっしり並べている人が多くて近づけない。それでおれは清水を横目で見つつフロントバッグから取り出した生ぬるい清涼飲料水を飲む。

噴き出し口は2つあって、一方には滅菌していないから沸騰させてから飲むようにという掲示が出ている。どちらにしても自転車乗りはちゃんと飲料水を持っていった方がいいと思われる。

清水を過ぎると林を抜け出して明るい感じになる。勾配も緩くなり、ペダルを軽く踏んで鞍部に到着。駐車場と立派なトイレと営業していない売店がある。立派なヤビツ峠 761mの木の看板もある(いかにも写真撮影向きだ)。


秦野側の下り

鞍部の南側に踏み出すと一気に展望が開ける。足元の秦野の街から彼方の海までの雄大な眺めである。それを左手に見つつ一気に下る(おそらく勾配はそれほどでもない)。道幅は上りよりも広く、2車線ほどある。

だんだん眼下の街が近づいてくるさまは、どこか飛行機の着陸のときに似ている。この眺望と背後の山の感じは四十八曲峠を思い出させるし、またこの峠の前後の対照的な様子は極楽峠にも似ている。


菜の花台

下りの途中、標高550m付近の左カーブの外側に菜の花台という公園がある。芝生やベンチや展望台などがあり、観光地ぽいが休憩適地だ。逆光気味ではあるが、伊豆半島らしい山影が見える。

菜の花台から少し下ると蓑毛という集落の中の一気の下りになる。集落の中を全速力で下るのはなかなか怖い感じだ。またこちら側から上るとこの区間はかなりきついに違いない。

やがて秦野の街に着く。秦野の標高は100mほどである。

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2005年11月1日初版 / 2012年11月29日更新