高篠峠
静かでシンプルな林道峠
読み方 | たかしのとうげ | |
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標高 | 748m | |
位置 | 埼玉県秩父市・秩父郡横瀬町・比企郡ときがわ町 | |
道路 | 林道定峰線(秩父市側)・林道大野峠線(ときがわ町側) | |
水系 | 荒川 | |
実走日 | 2011年5月15日(日) | |
地図など | Google Maps・地図院地図 | |
関連書籍 | 秩父の峠 |
高篠峠は、秩父盆地から定峰川をひたすらさかのぼったところにある峠で、反対側は刈場坂峠と同じく都幾川筋である。
隣にある定峰峠よりは標高が高いぶん手ごたえがあり、また交通量も少なく、眺めのいい箇所もあるので、なかなか楽しい峠になっている。
高篠というのは地名で、かつて秩父郡高篠村というのがあった(高篠峠と定峰峠の秩父側の共通の麓にあたる)。今でも高篠小学校という学校があり、交差点の名前にもなっているのでそれとわかる。
おれは秩父盆地側から上った。しばらくは定峰峠へ行くのと同じ道である。1ヶ月前に定峰峠に行くときに通ったときは木々がいろいろと鮮やかな花を咲かせていたが、今回はそれらはほとんどない。しかしアヤメ、シャガ、オオアラセイトウなどの草花が美しい。
やがて定峰峠へ行く県道11号線は左カーブで斜面に上りついていってしまうが、そこに高篠峠へ向かう道の分岐がある。標高は320mあまり。
そこからは1.5車線ほどの舗装路が定峰川沿いに続く。さっきまではバイクが多かったが、この峠道に入ってからは途端に少なくなる。皆無になるわけではない。
道沿いにはフジの花が目立つ。ヤマブキは終わりかけだ。木苺や山桑は地味に花を咲かせている。そしてとにかく、ミズキのクリーム色の花がとても多い。
標高400m地点あたりで、ヘアピンカーブを繰り返して定峰川の谷底を離れ、斜面に上りつく。下枝を落としたヒノキの高木の並ぶ中のヘアピンカーブは、田口峠に雰囲気がよく似ている。ぶどう峠の長野側もそうだろうか。
後方にときどき遠い山並みが見えるものの、定峰峠のように麓の集落を眺めるようなところはない。林の中の区間と外の区間を繰り返す。陽射しが強く、山腹の緑のモザイクが鮮やかだ。
かなり上っても、道筋はなかなか谷川から大きくは離れない。気がつくとあれほどたくさんあったミズキの花はもうほとんどない。しばらく上ると左手に広大な皆伐跡地があり、その周りをぐるりとまわる形で山腹に取り付く。するとじきに鞍部だ。
鞍部は駐車場のようなスペースがありやや広い。林の中で展望はない。高篠峠の標柱があるかと思ったが発見はできなかった。
峠の歴史という看板があり(顔振峠と同じシリーズだ)、そこには高篠峠の文字がある。この看板によると、この峠道は(かつての経済の中心地であった)越生に連絡する数ある峠のひとつであると同時に、札所一番への巡礼地としても使われた記録がある……という。秩父の札所の話だとすると、確かにこの峠の麓の定峰川沿いに札所一番の四萬部寺はある。
さて下り始める。下り始めてすぐ、左手に関東平野の眺めが広がる。さいたま市のあたりだろうか、中には高層ビル街もある。足元には桜の花びらが散らばるが、見上げてもどこに桜の木があるのかはわからない。
それを過ぎるとやや明るい林の中のワインディングの下りになる。最初が左で次は右。そしてまた左で右で……。非常に執拗なヘアピンの連続で、むしろ痛快に感じるほどだ。その中をけっこうな数のロードレーサーが上ってくる。この峠はかなりマイナーな部類だと思っていたのだが、それはおれが地元の事情に疎いだけか。
やがて刈場坂峠から来た道にぶつかる。標高は420mほど。シャガがいっぱい咲いており、またそばに山恵水という清水がある。しかし煮沸してから飲用するようにとも書いてある。これはあれか、実際にどうなのであれ、そう書くのがお約束なのか。
その突き当たりを左折して下る。都幾川沿いの道は爽快だ。竹の谷(たけのかい)の集落を過ぎ、宿(しゅく)まで来ると谷はやや開ける。標高は130mあまり。
2011年9月1日初版 / 2012年12月20日更新