塩沢峠

地獄の超急坂峠

読み方しおざわとうげ
標高1140m
位置群馬県多野郡神流町・藤岡市
道路群馬県道46号線
水系利根川

実走日2007年6月17日(日)
地図などGoogle Maps地図院地図

塩沢峠は神流川の北側の尾根を越える峠である。同じ稜線上のそれほど離れていないところに塩之沢峠というのがあり、とても紛らわしい。と書くのはきっとおれで百万人目だろう。

おれがこの塩沢峠に行こうと思った理由は、北側の麓に名無村という名前の集落があったからである。とても素敵な名前なので、ぜひとも訪ねたくなった。

それは措いておいて、実際に行ってみると、峠としては、県道の割にかなり未整備であり、眺めも大変によく、なかなか盛りだくさんな感じだった。しかし何といっても特筆すべきなのはその勾配のきつさである。

超急坂一歩手前のあたり

神流川沿いの国道462号線から塩沢ダムの標識を見て曲がって、塩沢峠の上りを開始する。標高は330mあまり。最初は幅の広い2車線でめりめり上る。交通量は少ない。目の前には緑が鮮やかな山塊が迫る。

しばらく行くと塩沢ダム。古風な(古風に作ってある新しい)管理棟の建物が建っている。ダム湖はとても小さい。ダム湖を過ぎるあたりに万願の水という看板が出ていた。おれは通り過ぎてしまったが、右側に短い旧道区間があり、そこに清水があるようだ。

やがて道は狭くなる。と同時にとんでもない激坂がスタート。コンクリート舗装の区間もある。恐ろしいほどの急坂をクリアして進むとまた目の前に白いコンクリート舗装が……。これは今回が大荷物であることを差し引いても太良ヶ峠以上だろう。林になっているので日陰があるのがせめてもの救いだが、それにしてもあまり暗い林ではない。


栗木平を過ぎたあたりの緩勾配ストレート

ところで今まで押して越えた峠といえば山口県の欽明路峠と対馬の無名峠と青崩峠だけであるが、対馬のときは変速のケーブルが切れていたのだし、青崩峠のときは徒歩道だったのだから、もしもここで押してしまったら欽明路峠以来12年ぶりの屈辱である。というか何で欽明路峠なんかで押してしまったんだろ。……いっぱいいっぱいなのでそんなことが頭の中をぐるぐる回る。

栗木平(非常に小さい集落)まで来てヘアピンカーブが現れると嘘のように勾配は緩くなる。その手があるなら最初から出さんかい! ……と思う。

道は走りやすくなるが、それでも相変わらず陽射しは強い。ふと気づくと、道沿いにはあまりスギなどの針葉樹がなく広葉樹が多い。それが明るい原因かもしれない。ちなみに道沿いには全く花は咲いていない。


上りながら南側の山々を見る

基本的には明るい林の中を進み展望はないのだが、やがて南側に幾重もの尾根がちらちらと見えてくる。この雄大さからするとこれは甲武国境のものだろう。

しばらく進むとまた勾配がきつくなる。右側に雄大な展望が徐々に開けてきて、鞍部に到着。塩沢峠 1073mの木の看板などがある(この標高はたぶん正しい)。御荷鉾林道への合流点なのでぽつぽつ乗用車や二輪車が通っていく。


鞍部から南側への眺望

さてここからの眺めであるが、まず左側の彼方には武甲山(秩父市の裏山で、石灰石採掘のために盛大に切り崩されている山)が霞んで見えている。右の方に視線をずらしていくと雲取山、大洞山、唐松尾山といった甲武国境の2000m級の山々が並んでいる。そして右手前のテーブルのように切り立った山は両神山である。


北側への眺め

ここからは少しの間稜線を行く。標高もじりじりと上がっていく。やがて分岐があり、おれはそれを右にそれて下り始める。右手には雄大な山また山の風景が広がる。道沿いの山腹にはカラマツが見える。明るく不気味な柳蘭峠を思い出す。

やがて北東の関東平野の眺めが出てくる。その向こうにはおそらく上越国境の山々もうっすらと見える。意外と展望のいい峠なのだ。それらを見つつ、道は広いが砂が多いので慎重に下っていく。


名無村の標識名無村

やがて道は鮎川の谷底に到達し狭くなる。もうさっきの高原風の雰囲気はない。ただの小さい山村集落である会場(これも変わった名前。かいしょと読むらしい)を過ぎ、富岡へ下る県道46号線から離れておれは県道177号線に入る。

次はとうとう待望の名無村(ななむらと読む)。標識を過ぎ、ヘアピンを下ると静かで落ち着いた小さな集落がある。花が咲いていて美しい。

それを過ぎて少し行くと右に藤岡の名水という看板が出ている。自転車を停めてほんの少し下ると水場がある。鮎川の対岸に滝があり、その奥の洞窟から引いてきたものだという。冷たくておいしい。ありがたや。近くのオドケ山に関する伝説が書かれた看板もあり、何となくホロリとする。

ここからは鮎川の谷底の狭い下りが文字通りえんえんと続く。こちら側のアプローチは相当長いようである。

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2007年9月14日初版 / 2010年4月7日更新