中山峠
田舎になりきらない微妙な峠
読み方 | なかやまとうげ | |
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標高 | 710m | |
位置 | 群馬県吾妻郡高山村・渋川市 | |
道路 | 群馬県道36号線 | |
水系 | 利根川 | |
実走日 | 2017年4月30日(日) | |
地図など | Google Maps・地図院地図 |
中山峠は、吾妻川の支流の名久田川の上流にある盆地から、一気に吾妻川の本流筋に出るところにある峠である。道としては、盆地から渋川への近道になっているから、おそらくは使いでのある道だろう。峠としては、盆地側は緩やか、吾妻川本流筋側は急坂になっている。
ところで、この峠の真下には上越新幹線の中山トンネルが通っている。高崎から北上していくと2番目にある長いトンネルだが、トンネル内に急カーブがあって、毎回毎回160km/hまで減速させられてしまうので、新潟県出身東京都在住のおれとしては、宿敵とは言わないにしても、少々邪魔に感じるトンネルでもある。そんな急カーブができてしまった原因は、トンネル工事の最中に異常出水があったせいだと言うのだが……。
おれは赤根峠を越えて盆地に下りてきた。そこで書いた通り、ここにはその名も中山盆地という道の駅がある。ここは少し高いところにあって周囲の眺めがよく、南側にはこれから越える中山峠の鞍部が見える。その右側にある三兄弟のようなぽこぽこした山(三並山(みなみやま)と呼ぶそうだ)の眺めもよい。
この写真には、三並山のもっとも左の山しか写っていない。名前は小野子山。三並山の全体は、赤根峠の最後の写真に写っている。
峠まではたいした標高差に見えないが、実際のところ、この地点の標高は560mもあるので、峠までは150mほどの上りしかないことになる。しかし、かなりの逆風が吹いているので、あまりやる気は出ない。
さて出発。いざ走り出してみると逆風はそこまで強いものではないが、しかし吹いていないわけでもない。あまり峠道らしくない人里の風景の中をじりじりと上っていく。道端には思い出したように桜並木があるところがある。
道の両脇の草地にはタチツボスミレがかなり多いが、中にはアカネスミレもあるようだ。珍しいのかどうかはよくわからない。
帰ってきてからこのスミレの名前を知り、赤根峠でアカネスミレを見た!と、ひとりでうけていたのだが、よく写真を見たらそれは赤根峠ではなくてこの中山峠のものだったのであった。まあよくあること。
道の左側に、場所にそぐわないアパートのような建物があったと思ったら、それを過ぎたところに群馬パース大学の看板が出ていた。大学! ということはさっきのは寮だろうか。
帰ってきてから調べると、これは同大の旧高山キャンパスというものであるらしい。移転してしまったようだ。
それ以外にもゴルフ場があり、老人ホームがあり、右手奥には牧草地があり、背後の雪山の眺めもあるので、なかなかどうとも形容しがたい混沌とした峠道になってきた。
ぐんま天文台への道を分け、じきに道は下りに転じた。ここが鞍部だろうか。しかし何の看板もない。少し休んで下ることにする。
この峠の地下の暗闇で、トンネルマン達が出水に遭遇し、からくも脱出し、水没した区間は無残に放棄され、そして今なお新幹線のルートにその傷跡が残っているのだ。それを思い起こしてはみるものの、それが信じられないほど穏やかな雰囲気で……と書きたいところだが、それは嘘であって、おれは峠を下りてきてしばらくしてからそう言えばあのへんでトンネルが……と思い出したのだった。まあ、それほど穏やかな峠だったのだ。
新幹線の線路の標高は310mくらいなので、400mも下の話ではある。
ほんの少し行ったところに、右手に三国街道と書かれた看板が出ていた。この道は高崎で中山道から分かれて三国峠を越えて越後に至る街道です、という説明がある。へえー、ここを通っていたのか。やはり利根川の渓谷沿いに行くのは当時の技術では難しかったのだろうか。あるいは単に近いからか。
このあたりの坂道をなぎなた坂と呼ぶようで、歌碑があり、杖をだに 重しと詠める なぎなた坂というかるた風の看板もあって、ああこの坂は上毛かるたにも入ってるんだね、と少しじんとしたのだが、帰って調べたらそんなことはなかった。騙されやすいおれ。
下っていくと集落があり、正面に関東平野、そしてその右手にぼこぼことした新緑の丘陵地帯とその向こうの榛名山が見えてくる。おおー。なかなかの雰囲気だ。あとはこれを見ながらガンガン下るんだね、と思ったがそんなことはなく、それからまた道は林の中のヘアピンになったりする。
再び正面が開け、さっきよりも近く高崎か前橋かの市街地が見えるようになると、道の下りは鞍部近くよりも本格的になってきたような気がする。
一気に加速して50km/h以上で進み、国道353号線にぶつかる。標高は210mあまり。
2017年9月28日初版