塞神峠
山岳を眺め山村集落を抜ける意外と大スケールな峠
読み方 | さいじんとうげ | |
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標高 | 450m | |
位置 | 埼玉県秩父郡長瀞町・大里郡寄居町 | |
水系 | 荒川 | |
実走日 | 2011年12月11日(日) | |
地図など | Google Maps・地図院地図 | |
関連書籍 | 峠 秩父への道 |
みかん山のある寄居町の風布は、西側から南側にかけて500m級の尾根に取り囲まれている。それを越える車道の峠は3つあり、北から葉原峠、この塞神峠、そして釜伏峠である。
この3つはそれぞれ似てはいるものの個性がある。この塞神峠に関していえば、3つの中ではずば抜けて西側の山岳の眺めがよい。東側の山村集落の中の下りは急峻で、標高の高い峠ではないのにかなりのスケール感がある。
なお、峠の東側には有名な名水日本水(やまとみず)がある。
おれは西側からこの峠に上った。長瀞町の県道82号線を北上し、右折して風布への道に入る(長瀞町側にも風布という地名があるのだ。ややこしい)。入口にはいくつか標識が出ているが、塞神峠の名前はその中には見当たらなかった。おれは地形図を見て判断する必要があった。
道は2車線あって広いが通行はほとんどない。勾配は意外ときつい。谷底なので路面には陽が当たらず、陰気な雰囲気である。
しばらく行くと長瀞八景 山萩ゆれる塞神峠の案内板がある。眺めも素晴らしく、町内を眼下に、空青く晴れた日には、遠く浅間山、谷川岳、赤城山などの顔もうかがうことができます
と書いてある。
また少し行くと左に折り返すようにコンクリート舗装の道が分かれており、蕪木 仙元峠 塞神峠←という看板が出ている。地形図を確認するとこのまま直進してもここで曲がってもどちらにしても同じところに出るようだ。じゃあこの陰気な道路を行くのはやめて、一気に山腹に上がるか。そう考えて左折する。
1車線の、路肩に落ち葉の積もった陽の当たる急坂をぐいぐいと上る。ヘアピンカーブで折り返しての上りもある。途端に楽しい気分になってくる。
やがて右後ろに向こうの尾根が見えてくる。御荷鉾山あたりが見えていたらしい。それを過ぎると小さな蕪木の集落となる。ユズが実り、サザンカが咲いている。その集落を過ぎると薄暗いヒノキの林の中となる。
そのうちに、右からやってきた大鉢形を経由して上ってきた道に、折り返すようにして合流する。少し行くと林の中を抜け、西側に山並みの展望が広がる。
さてここの眺めだが、前方(右手)奥の真っ白な山は浅間山である。その左手に御荷鉾山と赤久縄山がある。正面のもっとも目立つ山は城峯山あたりの山で、その左奥の平たいぎざぎざの山は両神山。その左には甲武信ヶ岳あたりから雲取山あたりまでの2000m級の甲武国境の山並みが続く。
素晴らしい眺めだとは思ったが、何というかそれほどぶち抜けた感動を感じなかったのも確かである。なぜだろうか。
出発し、右に折り返す。もうさっきほど幅広の眺望はないが、明るい道が続く。再びヘアピンを折り返して鞍部へ。
鞍部は三叉路になっており、稜線沿いに釜伏峠に行く道がある。路傍には立派な塞神峠の標柱や案内看板がある。また火の用心と書かれたドラム缶があって水が満たされていたのだが、その表面には厚さ1cmくらいの氷が張っていた。
さて下り始める。すぐにスギ林の中の強烈なヘアピンカーブにさしかかる。右手の木々の間に関東平野が見える。また釜伏モードか、と思ったが、ある程度開けたところもあるので、釜伏峠よりはましだろう。
釜伏峠では、関東平野が木と木の間にちらちら見えているのに展望が開ける箇所はない、というもどかしい思いをした(釜伏峠の頁を読んでいただければわかります)。
やがて扇沢の集落を通過する。名水、日本水があり、ポリタンを満載した車が何台も停まっている。まあ最近はすっかりこういうものには興味はなくなった。そのまま通過する。
書籍峠 秩父への道によると、日本水の本来の水源はここではなくて、釜伏峠の近くの釜伏山の山頂の直下にあって、この扇沢の水場はそこから900mの距離をホースで引っ張ってきているのだそうだ。
それを過ぎてすぐに左への分岐がある。これから葉原峠に転戦するつもりなので、そちらを行けば近いのだが、葉原峠へは風布の谷底から上りたいので、入らずに通り過ぎる。
なかなか味のある扇沢の集落の中をぐるりと旋回しつつ一気に高度を下げ、このまま谷底なのかと思ったらそうではなく、またしてもスギ林の中を折り返し連発で下る。途中で数えると、今走っている道を含めて道が4段見える箇所があった。扇沢と風布の標高差はそこまではないと思っていたのでとても印象的だった。
それが終わると風布の集落に入る。標高は200mを上回ったあたり。
2012年3月8日初版 / 2012年11月29日更新