仁田山峠
人の行く裏に道あり花の山
読み方 | にたやまとうげ | |
---|---|---|
標高 | 460m | |
位置 | 埼玉県飯能市 | |
道路 | 林道原市場名栗線 | |
水系 | 荒川 | |
実走日 | 2006年4月9日(日) | |
地図など | Google Maps・地図院地図 |
仁田山峠は、かなり説明しにくい位置だが、飯能市の名栗の東側の尾根にある峠である。鞍部を越える車道は静かな舗装林道で、どちら側から上ってもどうという手応えはない。終わり。
……で済みそうな峠のように地図上からは見えるのだが、決してそうではない。広々とした展望、意外と山深い雰囲気、さらには名栗側の桜並木と、特筆すべき点はたくさんある。探訪派自転車乗りの足慣らしや散策には適したいい峠である。
ちなみに、この峠の鞍部をまともに越えようとすると、たぶん徒歩道を担いで上がらなければならないのだろうが、おれが今回走ったのは車道で山腹伝いに鞍部に出るあまあまなルートである。でもこっちの方が標高は高い。
おれは飯能市の市街地の方から、つまり東側からこの峠に向かった。市街地を抜けて県道70号線を進む。既にこのあたりは入間のあたりとは違い、雰囲気がゆったりとしている。
6kmほど進んで、右折して県道350号線に入る。道幅は狭い2車線、早くも完全な田舎道である。桜、ハナモモ、レンギョウ、コブシなど、いろいろな花が咲いているが、中でも最も目立つのは鮮やかなミツバツツジである。どの家でも咲いている。
やがて左から倉掛峠からの道が合流してくる。右折してさらに山に分け入っていく。分岐が多いが、だいたいは竹寺か子ノ権現を目指していけばよい。そうはいっても最後までそうやって進むと道を間違えるのは天目指峠と同じ。
製材所がある小さな集落を抜け、川沿いにじりじりと標高を稼ぎ、山中(という集落)でついに反向して山腹に上りつく。ここは林道原市場名栗線の起点でもある。標高は310mあまり。
上りは明るい林の中で、木々の間に空が透けて見える。早くも尾根下道のような感じであるが、実際少し上っただけでいきなり展望が開ける。460mの最高所付近だ。
普通、関東のこの手の展望はどこがどこだかよくわからないものだが、ここからの眺めにはよく見ると西武ドームの光る屋根があるのでだいたいの方角の見当はつく。この写真は逆光でいまひとつだが。
そこからは静かな山腹をアップダウンして進む。山腹はよく手入れのされた針葉樹林である。左手の谷の眺めは、ここまでの道のりに対比するとやけに山深い。
やがて浅い切り通しの鞍部を通過。標高は401m。ここからは道は一気の下りになる。ぽつぽつと桜が道端に咲いている。正面に入間川の谷を隔てた尾根が見える。
じきに目の前がぱっと開けて、見事な桜並木が始まる。目の前だけでなく足元まで満開である。
おれが写真を撮っていると、おれと同じ向きに下ってきたMTBがこんにちはー。わっすごいという声を残して桜のトンネルを通り過ぎていく。そりゃ知らずに来れば驚く。
というか、このマイナーな峠に、桜のことを知らずに偶然桜の季節に通りかかったのだとしたらそれもまた驚きだが。ちなみにおれは桜の咲いていない時期に来たことがあったので桜並木があることはあらかじめ知っていた。
その桜のトンネルの中のヘアピンを下ると、すぐに栃屋谷で県道53号線にぶつかって峠道は終わる。標高は230mあまり。街道である県道53号線からは、少し入っただけで見事な桜の山があるようには見えないところが心憎い。
2006年5月5日初版 / 2010年4月7日更新