顔振峠
眺めのよい田舎道観光峠
読み方 | かあぶりとうげ | |
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標高 | 500m ※鞍部の標高です。 | |
位置 | 埼玉県飯能市・入間郡越生町 | |
道路 | 埼玉県道61号線(吾野から風影に上る途中まで/笹郷から越生まで)・林道奥武蔵2号線(風影から鞍部まで) | |
水系 | 荒川 | |
実走日 | 2009年9月13日(日) | |
地図など | Google Maps・地図院地図 | |
関連書籍 | 秩父の峠 |
顔振峠は、有名な奥武蔵グリーンライン上の峠のひとつである。グリーンライン上には名前のついた峠はたくさんあるわけだが、これはそれらの中でもっとも南東側に位置する。
おそらくはそれらの峠に共通するのであろう、軽快な田舎道と、斜面上の山村集落と、好眺望と、そしてそれらが混ざって生まれる独特の雰囲気が、この峠にもある。この峠はかなりの観光峠であるが、この雰囲気はそれによって損なわれてはいない。
かなり変わった峠名であり、読み方であるが、後者について少し。こうぶりと読む人もいる。活字としてはかあぶりの方をよく見かけると思う。書籍秩父の峠には、近年こうぶりとよく読まれるようになっているが、この読み方の初出は1910年の地形図であり、それ以前はかあぶりかかあふりだったようだし、今でも地元の年輩者はかあぶりと言っているから、この本でもそうする、と書いてある。
おれは南の飯能側から上った。峠道の入口にある吾野駅の標高は185.3mである。駅には西武鉄道により奥武蔵ハイキングマップという無料のパンフレットが置かれており、おれはその顔振峠版を手に入れてから峠に向かった。
このパンフレットでも振り仮名はかあぶりだった。
最初は県道61号線を行く。国道299号線から入って少し行くと道は右折し、峠道の開始となる。この地点には→顔振峠というような標識が出ているので間違えにくいだろう。
最初は秋の虫の声をサラウンドで聞きながら山村集落の中を行く。それが終わると渓流と林の中の上りだ。爽やかな気分だが、交通量はそこそこ多い。途中、水場が右側にある。
道端には薄紫のアジサイがたくさん咲いており、随分遅くまで咲いているんだなと思ったのだが、よく見るとこれはタマアジサイで、もともと花期が遅い種というわけだった。
林の中なので見通しはよくないが、これから上る一段上の道を見上げる箇所がところどころにある。それらをクリアしていくと、やがて集落が現れた。風影(ふかげ)である。サルスベリ、コスモス、フヨウ、ヒガンバナなど、初秋ながらに花盛りである。それに加えてどこからかキンモクセイの香りも漂ってくる。
雰囲気ある山村集落の中を進んでいくと、右手に展望が開けた。複雑に入り組んだ山並みの向こうに、右手には特徴的な武甲山、左手には奥多摩の川乗山や大岳山が見える。
少し行くと奥武蔵2号線の林道の標識があった。花立松ノ峠でも見た名前だが、ここが起点ということらしい。少し行くと交差点に出る。道なりに進んで左に折り返して上る。やがて顔振峠に到着だ。茶店が何軒もあり、観光ムードがある。
峠の由来を記した石碑や案内看板もある。案内看板は天目指峠にあったのと同じシリーズだ。この峠の名前の由来には、義経と弁慶が上るときに眺めが美しいので振り返りながら歩いたから……という説があることは前述のパンフレットや吾野駅の看板で知っていたが、ここの案内看板によるともっともっともらしい説があるようだ。冠(かむり)が転じたのではないかというのがそれで、確かに当たっていそうに思える。
鞍部からの眺望をおなじみのへぼい連結写真で。さっきの風影からは見えなかった平野の切れ端が見える。
さて出発。どう行こうか悩むところだが、来た道を下り、交差点で左に切り返して越生に下る道を選ぶ。ここからは権現堂線という林道のようだ。
少し行くと阿寺の集落の手前あたりで右手前方に平野の大展望が開ける。思いのほか大きく西武ドームが見える。都心部やおそらく横浜のあたりであろう高層ビル街も見える。そしてその間には意外なことに丘陵地っぽい林のようなものが茫漠と広がっている感じである。
それを過ぎ、阿寺の集落を通って少し下りて少し上って交差点へ。直進すると鎌北湖の方へ向かう道だ。おれは越生へ下りるので左折だ。
ここからは林道笹郷線である。明るい林の中の道で、左側には崖がある。それほどの落差はないが、これから下りる道が足元に見える。
しばらく下ると見覚えのある山村風景になった。前に花立松ノ峠に行くときに通ったところである。どこか巖道峠の北側の麓に似ていなくもない。
そのまま県道61号線を走り通すと越生の市街地に出る。越生駅の標高は67.3mである。
2009年10月5日初版 / 2015年1月8日更新