花立松ノ峠

険しいが穏やかで静かな雰囲気の峠

標高620m
位置埼玉県入間郡越生町・飯能市
道路林道猿岩線(越生町側から鞍部まで)
水系荒川

実走日2009年4月29日(水)
地図などGoogle Maps地図院地図

花立松ノ峠は、顔振峠刈場坂峠と同じ稜線上にある舗装林道峠である。有名なグリーンライン(尾根道)上の峠ということにもなるが、その中では普通の地図に名前が出ていないからマイナーな部類に属するだろう。

おれが行ったのはシーズン中の好天の休日だが、交通量は少なく、静かな山の雰囲気を満喫できた。眺望もなかなかいいし、険しい峠としての感触もある。なかなかいい峠だと思われる。

県道61号線からそれる交差点

おれは越生側から上った。JRの越生駅の標高が67.3mであるから550mくらいの上りである。

越辺(おっぺ)川沿いの県道61号線をゆっくりと上っていく。芝桜やツツジに彩られた静かな集落が断続する。交通量はそれほど多くない。

おれは、目指す峠道は黒山三滝のすぐ脇の道という、(間違ってはいないが、この場合決定的にアウトな)思い込みで走り、しばらく進んで県道61号線をそれて黒山三滝まで行き、車道がそこでぷっつりと切れていたので呆然としてしまった。

正しくは、黒山三滝まで行ってしまってはダメで、その手前で県道61号線が越辺川を渡った直後で右折しなければならないのである。木の道標があり→龍穏寺とあるところである。標高は150mあまり。


スギ林の中の登坂

さて少し行くと林道猿岩線の入口に到着。気合を入れ直して登坂を開始する。気づくと路傍はシャガの白い花でいっぱいである。スギ林の中をヘアピンで上っていくと小さな集落があり、あたりは少し開ける。後方に低い山並の眺めがある。

しばらくスギ林の中のきつい上りが続く。山腹走だが、立ち止まって耳を澄ますと鳥の声の向こうに電車の走行音のような水音がする。やがて左から黒山三滝からの徒歩道が合流する。おれは自分が上っている峠の名前を知らずにここまで来たのだが、木の道標から、どうやらその名前は花立松峠というらしいと知れる。

道は沢沿いとなり、勾配はいったん緩くなったあとまたきつくなる。標高370m付近で、右に折り返して山腹に上りつくところに水場があり、2本のホースから水が噴き出している。ここにもいつものように商売でもやるのかというくらいに大量の容器を持ち込んで給水している人たちがいたわけだが、今回はおれに順番を譲ってくれるおじさんがいた。ありがとう。記して感謝。


鞍部直下の道を見上げる

さて山腹を上っていくと後方には尾根筋の眺めが出てくる。そのかなり上の方にガードレールが見える。かなりの標高差を感じるのだが、実際には200mちょっとしかない。あとで知るのだがこれは尾根道のグリーンラインではなく、それに合流する直前の、れっきとしたこの峠の峠道である。

少し行くとその眺めともお別れ。左回転で山体の北側に回り込む。樹間に北側の眺めがあるが決定的なところはない。水場を過ぎたあたりからはもう路傍にシャガの花はなく、ヤマブキの黄色い花が多い。終わりかけのヤマザクラもある。


鞍部直下の越生側

道路はやがて左に折り返して山体を越え、少し下る。やがて青木峠のように山腹をガードレールが縫っていく風景が広がる。その路傍にはぽつぽつとヤマザクラが咲いている。道路の下の斜面には高い木がなくて開けており、その中を徒歩道が上ってきている。何となく中国的な風景という印象がある。そして左側には関東平野の眺めが広がる。

この写真だが、よーく見ると、右下にさっき通った200mあまり下の道路が見える。逆にそこでの写真にはこの写真に写っているヤマザクラの木が写っているのだが、わかるだろうか。


鞍部

それを過ぎるとすぐに尾根筋林道の奥武蔵2号線に合流する。傘杉峠に向かう徒歩道の入口に木の道標があり、花立松ノ峠とある。ここから直接反対側に下りる道はないのでどちらに行くか迷うところだが、高山不動尊経由で行くことにする。ゆえに折り返して右折である。

尾根筋林道を軽く上がって下る。明るい雰囲気だが眺望はない。峠道よりは人気があり、ランニングしている人がいるのには驚く。まあそれはヤビツ峠にもいたか。

少し行くと茶屋が何軒かあって高山不動に行く道が左に分かれている。そちらに針路を取る。


高山の集落

そこからはパターンつきコンクリート舗装の超急坂。つんのめって転びそうだ。正面に名栗方面の山々が見え、手前の集落は花でいっぱい。涙が出そうな眺めを前に、もうっ、お姉さん飛び込み前転しちゃうぞ!なる謎のフレーズが頭に浮かぶ。誰、お姉さん。

とてもペダルで上れそうには思えなかったのだが、まさに真逆にペダルで上ってくる自転車野郎がいた。やればできるものなのだろうか。

この高山という集落は、眺めもさることながら、建物がいちいち古めかしくて味がある。この集落にある高山不動尊も、そのたたずまいの地味さが何とも素敵である。これを書きながら思いついたのだが大洞峠の高山寺に似ているか。名前も似ているし。


吾野への下り

高山不動尊を過ぎると、パターンつきコンクリート舗装は終わりである。道幅は1車線しかなく、ガードレールもあまりない。スギ林が続く。路傍にはやはりシャガが多い。やがて道は谷川沿いの道になる。

いくつかの集落を過ぎて進むと国道299号線に合流する。標高は170mあまり。おれは飯能の市街地に向けて下ったが、交通量は多いし、走りやすくもないし、あまり面白い道ではなかったのであった。西武の飯能駅まで下ると標高は106.2mである。

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2009年5月7日初版 / 2010年4月7日更新