新小屋峠

大山南東の高原から平野に下りていく峠

読み方しんごやとうげ
標高990m
位置鳥取県日野郡江府町・倉吉市
道路鳥取県道45号線
水系日野川・天神川

実走日2013年6月10日(月)
地図などGoogle Maps地図院地図

新小屋峠は大山の南東にある烏ヶ山(からすがせん)のさらに東側の尾根を越える峠である。南側はゆったりした高原状の地形であるが、北側は断崖になっている。

この頁では、この峠を大山の南側の日野川の水系と北側の天神川の水系を分ける立派な峠として扱うけれども、これは地元の人にとっては違和感があるかもしれない。新小屋峠という名前は、鞍部自体を指すローカルな名前であって、この頁の前半は鏡ヶ成への上りだし、後半は地蔵峠じゃないのか、と。現地で新小屋峠という名前を見なかったわけではないけれども、その可能性はあるような気がする。

林の中のワインディングエゴノキの花

おれは鍵掛峠から下りてきた御机からこの峠を目指した。御机は大山の南麓にある少し開けた感じの集落で、標高は610mほどある。

まるで鍵掛峠からの下りを逆に進むような林の中のワインディングの上りである。鍵掛峠の下りと同様のスピード抑制道路で、カーブでは路面のしましまの他にチャッターバー(平行四辺形の道路鋲)もある。交通量は多いとはいえないが少ないともいえない。

チャッターバーは鍵掛峠の下りにはなかったと思う。

変化のない林の中の道だが、ワインディングの連発なので、眼下にこれまで上ってきた道が3段見える箇所がある。なお路傍にはエゴノキやヤマボウシの花が見られる。


抜け道

しばらく黙然と進むと、標高770m地点あたりで右に細い道が分かれていた。自動車通行止、ただし農耕用を除く、の標識が出ている。ふむ、これは、地形図に出ている、広域農道に抜ける道だな。

別にこれまでの道に不満があるわけではないけれど、静かな抜け道があるならその方がいい。それでその道に入る。1車線で林に包まれた谷をめぐる。林を抜けると畑地が広がり、すぐ広域農道に合流する。


広域農道タニウツギ

左折して、開けた畑の中のストレートがちな道をじりじりと上る。かつて見返峠から下るときに一気にかっ飛ばした道である。左手の、つまりさっき抜けてきた林の向こうからぶいぶいとバイクの音が聞こえる。

やがて県道45号線に再合流する。開けた風景の中の広い2車線の上りの道が続く。やがて烏ヶ山展望駐車場に到着。烏ヶ山を眺めつつ休憩する。この駐車場にはタニウツギがたくさん植えられていて満開である。おれの故郷の新潟では植えるのはあまり見かけないが(新潟では縁起が悪いと考えるむきが多いらしい)。

やがて明るい林の中になり鏡ヶ成に到着する。標高は920mあまり。午前中に着いたが実はここで1泊である。そういう計画なのだが、実際にやってみると、大山寺を朝出てここで行程終了というのは何なんだと自分でも思う。

この日の午後は、周辺を散歩したり、軽く山に登ったりして(見返峠で書いた擬宝珠山など)、おしまい、となった。


鞍部直下

そういうわけでここからが峠を越えた6月10日の話である。

鏡ヶ成を出て新小屋峠を目指す。林の中のワインディングだが勾配は緩い。昨日の午後にバイクがぶいぶいいっていたのが信じられないほど静かだ。

タニウツギの花が多い。ナナカマドもある。草ではギンリョウソウがぽつぽつある。ナルコユリもある(アマドコロかもしれない)。

やがて鞍部に到着。倉吉市の標識以外何もない鞍部だ。


右手に眺望のある道を下る

下り始めるとすぐ、右手に眺望が開ける。狭い平野が広がり、斜めに海岸線が走っているのもわかる。またそれらの手前の山間には広い平らな草地も見える。道は明るい林という感じで爽快だ。花にはややヤブデマリが多くなる。

この写真では、自転車の右奥に見えているのが平野であり、その上の白い部分との境界が海岸線である(海は白く写っている)。


東から見る大山

しばし下ると、ごく小さな集落のようなものがあり、県道45号線は道なりに左折、野添へは直進、となっている。別に直進しても麓には出られるのだが、道なりに行くことにする。

ふと振り返ると左後方に大山が見えている。雲は晴れ、山腹が見えているが、やはりこちら側(つまり東側)から見ても荒廃した崖が尾根まで続いているのが見える。自転車を停めてしばし見入る。足かけ3日間大山を間近に見てきたので、それをあとにすることには少しセンチな何かがある。

自転車を再び走らせ、東大山大橋で西鴨谷川の深い緑いっぱいの谷をまたぐ。直後に東大山展望駐車場というのが林の中にあるが、特に眺めはよくなさそうに思える。

その後は軽く少しだけ上る。このあたりからはタニウツギは姿を消し始め、代わりにウツギが増えてくる。季節の流れを早回ししているようなものだろう。


一向平方面の眺め

やがて道は尾根の北側に出てまた下り始める。今度は左側の眺めがよくなる。足元に一向平(いっこうがなる)の農地を見下ろし、向こうには海岸線を見る。

一向平展望駐車場というのを皮切りに、このあたりには妙に駐車場が多い。名前も混乱しているように思われる。少し行くと地蔵峠展望駐車場(この名前の駐車場も2つあったような気がする)で道は180Rの右カーブをし、尾根から下りる。


畑の中の直線の下り

県道34号線を左に分けて、長く続く下りを行く。あたりは開拓地っぽい緩斜面の畑である。北海道の上紋峠を滝上に向かって下りていったあたりのサクルー原野のような、淋しい雰囲気が少しある。

少し行くと集落があり、農道が左に分岐している。おれは農道を選んだが、あまり人家の多くない段丘の上を行く走りやすい道だった。一方で、県道45号線をそのまま走れば、倉吉線の廃線跡やサイクリングロードがあったと思われるので、どちらがよかったのかは何ともいえない。

その農道の分岐点の標高は279mであった。

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2013年8月8日初版