四十曲峠
美作・伯耆国境の出雲街道の峠
読み方 | しじゅうまがりとうげ | |
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標高 | 750m | |
位置 | 岡山県真庭郡新庄村・鳥取県日野郡日野町 | |
道路 | 国道181号線(伯耆側の中腹以下) | |
水系 | 旭川・日野川 | |
実走日 | 2011年10月19日(水) | |
地図など | Google Maps・地図院地図 | |
関連書籍 | 日本百名峠 |
四十曲峠は古い街道である出雲街道の美作・伯耆国境にあって、現在はその下を国道181号線が1863mという長大な四十曲トンネルで抜けている。そう書くと面白くなさそうだが、まあ待ってください、おれが走った(というか歩いた)のは旧道である徒歩道である。
ちなみに、トンネルの直上には車道の旧道もあるので(実際に今も通れるかどうかは知らないが)、この徒歩道は少なくとも2代前の道となる。
徒歩道としては、……、廃道みたいなものなので、特に伯耆側から上るのはおすすめしかねる。
おれは美作側からこの峠に上った。味のある新庄宿を出て嵐ヶ乢を越え、二ツ橋の集落に出る。茅葺の渋い建物もある雰囲気のある山村だ。標高は640mほど。
ここの交差点には旧四十曲峠1.5km↑の標識がある。またこの交差点には六体地蔵があり、四国の六地蔵峠を思い出さずにはいられない。
さてそのひなびた小さな集落を通過する。Y字型に道が分かれているが右に進む。やがて浅い谷間の行き止まりのようなところで牛が放牧されている脇を通り、道路は終わる。
その先は、踏み込むのがためらわれるようなものすごい藪だ。途方に暮れつつも進む。もちろんペダルで進むどころではない。押して進むのみである。100mほど進むとなぜか藪は薄くなった。何となく轍も残っており、坂もカーブもきつくない。
じりじりと20分ほど進み、やがて鞍部に到着。出雲街道 四十曲峠の新しそうな看板が出ている。ふう。とりあえず道は間違っていなかったということだ。
一息つき、下り始める。しかし下る道はどこが道なのかもよくわからないほどの藪である。特に笹が多い。上りと違ってかなり急なヘアピンカーブが多い。これが四十曲峠の名前の由来か、とも思うが、徒歩道だからといってこれが往時の峠道だと考えるのはナイーブに過ぎるだろう。
それにしてもこの下りは難儀だ。ヘアピンカーブがあるだけではない。勾配もきつい。小さな崖崩れもある。倒木もある。太い枝が落ちているのなどは数えていたらきりがないほどだ。荷物を減らしておいて本当によかった(新庄郵便局でキャンプ用品などを取り外して発送しておいたのだ)。そして、この峠を美作側から越えたのもよかった。
この写真は、かなりましな箇所での写真である。本当にひどい箇所での写真も載せようかと思ったのだが、木の枝ばかりでどこに自転車があるかわからないような状態だったので割愛した。
やがてファーンという連続的な音が聞こえるようになってくる。しばらく行くと自動車の音もときどき聞こえてくる。道迷い遭難という言葉が頭をよぎり始めていた頃なので、ちょっとほっとする。
ファーンという音がいよいよ大きくなってくると、じきに国道の路面が見えてくる。やがて四十曲トンネルの手前(トンネルに向かって左側)の国道の脇に出る。鞍部から歩いた時間は30分ほどだっただろうか。想像のついたことだが、ファーンという音の正体はトンネルの中の換気ファンの音だった。
下りてきて振り返ると、どこが徒歩道の入口なのかもよくわからないような状態である。服にはびっしりと草の実がついている。10分ほどかけて丁寧にそれらを取り除く。
それをやっている間、通りかかる車はあまりないが、長い四十曲トンネルがすぐそこにまっすぐ続いているので、かなり遠くから走行音が聞こえてくる。なおトンネルの入口の標識によれば標高は599mである。
下り始める。広い2車線だが対向車線には登坂車線があったりする。少し行くと左カーブの赤い見事な鉄桁の橋が見えてくる。板井原(いたいばら)橋だ。その橋を渡る途中、右下にこれから下る路面が見える。
おれが持っていった昭文社の2005年版のツーリングマップル中国・四国には、この付近にいたいはら R
と書いてあり(R はレストラン・食堂)、食事処の名前がいたいはらってのはヤヴァかろう、と思っていたのだが、実際にはいたいばらだったのであった。
橋を渡り終えると短いトンネルがあり、それを抜けて右に折り返すと正面に板井原橋、左下にこれからくぐっていくシェルターが見える。なかなか豪快な道だ。なおこの辺の路面はコンクリートである。
やや大きな谷底の下りの2車線路が続く。しばらく行くと金持の集落があり、金持神社がある。のぼりがたくさん出ており、観光地となっているようだ。もっとも読み方はかもちだ。
やがて根雨に出る。根雨も出雲街道の宿場町の雰囲気を残している。根雨駅の標高は185.4m。意外とある。
2012年10月18日初版