一息坂峠

大山北麓の山襞にある開けた風景の峠

読み方ひといきさかとうげ
標高520m
位置鳥取県西伯郡大山町
道路鳥取県道30号線
水系下市川

実走日2013年6月8日(土)
地図などGoogle Maps地図院地図

一息坂峠は大山の北麓に刻まれた谷と谷を隔てる尾根の上にある小さな峠で、いわゆる大山環状道路上の峠でもある。

峠道は林の中だったり牧場の中だったりするし、眺めがよく海まで見える箇所もあって、けっこう変化がある。

花見潟墓地

おれは海岸近くにある赤碕の市街地からこの峠を目指した。

この峠に上りつくにあたって赤碕を経由しなければならない理由はないのだが、かつて(1996年夏に)山陰の海岸線を走ったときにここで見た海岸を埋め尽くす墓地の記憶があまりに鮮烈だったので寄ってみたのであった。

炎天下。静寂。あるのは海と墓地のみ。そして永劫に寄せて返す波を見つめるのは死者のみ。そんな終末世界。……とか何とか。

しかし、17年ぶりに訪れて思ったことは……暴走しすぎだろおれの記憶は……。

さて峠に向かうわけだが、このあたりでは道路標識には船上山とか大山とかいう文字しか見られず、どれが一息坂峠に向かう道なのかわかりにくい。結局赤碕駅の東の踏切を渡り、駅裏を通って県道30号線に入る。


赤碕からの上り始めのあたりで見る大山

県道30号線は意外と交通量がない。正面に大山が見えるがもやっているうえに頭には雲をかぶっている。そして印象的だったのはその遠さだ。地図を見た印象でも、1996年に海岸線を走った印象でも、ここは確実に大山の裾野が海に落ちるあたりのはずなのだが、正面の大山はそんなの知らんもんねとでも言いそうなくらい遠い。

路傍では、最初だけ咲き始めのエゾアジサイがあり、鮮やかな青色で目を引いている。スイカズラや、ユキノシタが群生している一角も見かけたがそれぞれ1箇所だけ。全体としては白いウツギの花が多い。

田んぼの脇をじりじり上るとじきに林の中となり、9.9%と9.5%の勾配標識が出てくる。上りきると大山町の町域に入り、道は一度下る。林の中からまた水田地帯に出る。田んぼからくりっくりっと美しいカエルの声がする。正面には大山が見えるが、だいぶ近くなったなあという印象である。


桜並木

またじりじりと上りつつ林の中に入る。少し行くと活性化センターという建物があり、案内板が出ている。このあたりから道沿いに報恩峠の桜並木というものがあるとのこと。

この付近では左に石碑の置いてある徒歩道(文芸の小径という名前だ)が沿い、たんぽぽの黄色い花が咲き、そして桜の並木が始まる。一町松という、道標として植えられた大木の松の木もある。全体としてどことなく、戸隠のバードライン(一ノ鳥居峠参照)のような、明るいのだがどこか淋しくて人工的な雰囲気がある。


牧場から海側を見下ろす

その林を抜けて今度は牧草地の脇を上る。10%とか13%とかの勾配標識があり、実際そこはかなりの勾配であるが、ずっとそんな急坂が続くというわけでもない。眺めがよくなり、正面に船上山が見える。大山は(雲のせいもあるだろうがむしろ)山蔭になってよく見えない。

背後には空との境界が判然としないが海が見えているようである。右後方の海岸近くには風力発電の風車が見える。

牧草地が終わってまた林の中になると鞍部は近い。道端にはガマズミやヤマボウシも見かける。何となくひどく草いきれの匂いのする峠道という印象がある。


石碑鞍部の園地

やがて一息坂峠の鞍部に到着。一息坂展望駐車場が右側に設けられており、展望用の小さな築山があり園地が整備されている。一方で左側には大きくて立派な一息坂峠の石碑もある。

ここからは海側の眺望がまずまずよい。西の方では海の向こうに薄黒く山影のようなものが見えるが、あれは島根半島なのか、まさか、と思う。しかしあとで知ったことだが実はそうだった。何ともスケールの大きな話ではないか。一方、振り返ると大山も見えるものの、頭は雲の中である。

あと、ここの駐車場の名前といい、ここに建っている案内看板上の表記といい、この峠はを抜いて一息坂とも呼ばれているようである。


ワインディングを下る

少し下ってほととぎす橋を渡るとまた少し上る。ここには今度は香取高原展望駐車場があるがさっきとあまり眺めは変わらない。しかし上で書いたように山影が明らかに島根半島だとわかったのはここだった。

そこからはヘアピンカーブなども交えて開けた雰囲気の中を下る。まばらな集落があり、県道54号線が合流してくる。そこの交差点には今度は香取展望駐車場というのがある。何でこんなに展望駐車場だらけなんだと言いたくなる。ちなみにここの眺めはあまりよくない。

この地点の標高は484mである。おれは翌日の鍵掛峠行きに向けてそのまま県道30号線を進んだ。その場合、道はここから再び上りとなる。

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2013年8月29日初版 / 2014年1月8日更新