鍵掛峠
荒廃した大山南壁の直下を行く峠
読み方 | かぎかけとうげ | |
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標高 | 900m ※鞍部の標高です。 | |
位置 | 鳥取県西伯郡大山町・日野郡江府町 | |
道路 | 鳥取県道45号線 | |
水系 | 日野川 | |
実走日 | 2013年6月9日(日) | |
地図など | Google Maps・地図院地図 | |
関連書籍 | 日本百名峠 |
鍵掛峠は大山環状道路内で随一の展望スポットとして知られている。当然観光峠であるが、付近は深い森の中の自然郷であり、峠自体はあまり観光化されていない感じである。
山体を周回する道にある峠ということで、立場は戸隠の一ノ鳥居峠に似ているが、そちらとは違って、こちらは大山から南に延びる尾根を越える位置にある文句のない鞍部である。しかし峠は道路の最高地点にはなっていない。道路の最高地点の標高は960m以上ある。
人によって感じ方は違うと思うが、おれの感想を書けば、ここからの眺めは雄大というよりは荒涼である。
鍵掛峠は大山環状道路上にあるので、出発地によってはほとんど上りのない峠となる(これも一ノ鳥居峠と同じだ)。おれは大山寺(大変な観光地)付近を朝出発してきたのだが、そこの標高は750mもあるので、まあ楽勝ということになる。
大山寺からはやや暗い林の中のじりじりとした上りである。どこへ行くのか知らないが、おれと同じ向きに三々五々人々が歩いている。
標高は最終的に830m以上に達する。やがて道は下りに転じ、伯耆町の標識があってすぐ、左に横手道の分岐がある。この横手道は地図を見ていて気になっていたもので、使えば桝水(ますみず)高原(標高は700mほど)まで下らずに楽ができる。見ると当然ダートだが自動車も通行できそうな幅がある。案内看板があり徒歩道としては整備されていそうだ。少し考えたが突入することにする。
最初のうちはやや上りがきつく、路面も荒れているので素直に押す。戸隠の丁石(一ノ鳥居峠参照)と同じように、ここには一町地蔵が建っている。大山寺からと同様にやや暗い林で、おそらくはブナ林なのだろう。誰も来ないので静かである。
足元に転がる石は石基に斑晶が入っていて、中学校で習ったところの火山岩のように見える。
しばらく行くとペダルで進めるようになる。
ゆったり上っていくとやがて右手の展望が開け、ベンチが置いてあった。ここは桝水高原スキー場の上端部である。ゲレンデの下に大きな低い建物がまばらに建ち、草地が広がる。そこが桝水高原なのだろう。その向こうには渺茫とした林と草地が見える。その向こうに海があるのかどうかはわからないが、とりあえず見えない。
文句を言ってもしかたないが、前々日の夕方の天気予報は晴れ時々曇りだったけれどね……。
なおここから桝水高原まではゲレンデの中を歩いて下りる道がついている。ちょっと下がったところには例の恋人の聖地の碑がある。
ここではこの横手道で唯一の通行者に出会った。大きな網を持って速足で歩くおじさんである。観光客というよりは昆虫学者のような感じに見えた。
さて行こう。ここからは横手道はおおむね平坦で、意外とすぐ県道45号線に出る。じりじり上っていく。相変わらずブナ林の中だがタニウツギの花が多い。交通量は少ない。
やがてこの先土砂流出の恐れ 通行注意という黄色い大きな標識が出ている。流出って何だ、と思っていると、やがて一ノ沢の標識があり、路面がコンクリートで固められ、涸れ沢が路面を横切っている箇所を通過した。これは……昔北海道で見た河床橋……だったっけ……の涸れ沢版だ。まるで路面が床固工の一部のようになっている。
左を見上げると大山の南壁を斜めに見上げ、土砂の山と床固工が連なっているのが見える。右は右で、緑の林を貫いてまっすぐに白い土砂が積もっているのが見える。何という荒廃ぶりだろうか。
写真は右、つまり下流側の眺めである。
その次には二ノ沢があり、道路と涸れ沢は同様になっている。ここまで来るとだいぶ南壁の正面に近づいてきた感じである。
次には三ノ沢があるが、ここでは道路は涸れ沢を橋でまたいでいる。この付近には路駐が多く、林の中に超望遠レンズを向けているおじさんが多い。野鳥だろうか。
涸れ沢の写真が続いたので林の中の写真も載せておこう。道の大部分はこのように深い森の中である。
やがて道は最高所(標高は前述の通り960m以上)を越え、下りに転じる。そしてほんの少しだけ上ると左カーブに鍵掛峠の鞍部がある。鬼女台(見返峠を参照)以上の一大観光地というのを想像していたが、トイレと、10台くらいでいっぱいになりそうな駐車場と、鍵掛峠の古ぼけた標識があるだけである。
ここからは荒廃した大山南壁の全容と、それを包むような深い緑の森を眺めることができる。断崖だけではないのがポイントで、秋には紅葉、春には新緑も素晴らしいことだろう。
しばらく見ていて思ったが、ここからの大山は単に見るではなく見上げるだな。
ここから見る大山の南壁のクローズアップ写真も載せておく。静かな朝だが……そして今日もまた浸食の叫び声が山全体にこだましている。(蒼天の白き神の座をやった人だけ解れ。)
なお、大山は西側(写真の左側)から見ると富士山型に見えるのだが、こうしてみると確かにそちら側はなだらかである。
下りは一転してワインディングだ。最初は城山を眺めるがその後は森の中となる。少し行くと大平原という面白い地名の場所に出るが、読み方はおおなるはらだ。このあたりは少し開けている。
大山周辺には平でなると読む地名がとても多い。
大平原を過ぎると再び林の中のワインディングとなる。スピード抑制道路という標識が出ており、カーブでは路面にしましまの凹凸がある。さらに下ると御机の集落である。標高は610mほど。ここで右折すれば南大山大橋(内海乢参照)の方へ下りることもできるが、おれは直進して新小屋峠を目指して再度上り始めた。
2013年7月18日初版 / 2015年1月8日更新