西尾峠
道北のマイナーで淋しい峠
標高 | 380m | |
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位置 | 北海道枝幸郡枝幸町(宗谷管内)・中川郡美深町(上川管内) | |
道路 | 北海道道120号線 | |
水系 | フーレップ川・天塩川 | |
実走日 | 1995年9月5日(火) | |
地図など | Google Maps・地図院地図 |
道北には標高500mにも満たない小さくて静かな峠がたくさんある。西尾峠もそのひとつで、他のと比べて特に峠自体がどうこうということはない。ただ、こういう日本語的な名前をつけたでかい標柱があるという点はとても珍しい。
眺望もなく、手応えも特にない峠なので、不気味なほどに静かな雰囲気と、随所にある鉄道の未成線の跡を楽しみつつ行くという感じになるだろう。
この峠は、フーレップ川(オホーツク海に注ぐ)と天塩川(日本海に注ぐ)の分水界となっているのだが、フーレップ川には河口から上ってくる道がない。そこで北隣の徳士別川沿いに上ってこようとすると、これまた河口から川沿いに上ってくる道はない。さらに北隣の北見幌別川となると、これには河口から上ってくることができる。そういうわけで、峠道としては峠3つで1セットということになる。
この日は北見幌別川沿いの歌登町(枝幸郡。現在は枝幸町)の市街から志美宇丹峠を越えて徳士別川流域に入ってきた。途中、何箇所かで線路跡を見かけ、こんなところに鉄道があったろうかと思ったのだが、よく考えるとこれは建設途中で放棄された美幸線の跡らしい。写真のPC橋など、線路を敷けば今にも列車が走れそうな感じだった。
このときはあまり天気がよくなかったせいか、この周辺の雰囲気をずいぶん陰鬱に感じた。2012年6月に再訪してみると、上徳志別には普通に人家はあるし、東側の畑の風景はなかなか美しいものだった。
学校跡やら廃屋やらの光景を見ながら静かな道を上ると、天の川トンネルが口を開けていた。このトンネルが開通するまでは、徳士別川とフーレップ川の分水界はダートの難所だったそうだが、現在はこのような立派なものが開通している。開通時には道内では少しばかりニュースになっていた覚えもある。
トンネルの長さは1353m。前後をけんぎゅうはしおりひめはしという2つの橋でサンドイッチされている。なぜ天の川がモチーフなのかはわからない。
トンネルを抜けて水系が変わっても下ることはなく、道はダラダラと上り続ける。人跡まれな樹林帯の中の走行という感じになる。
ところどころにやや急な坂が混じってくると頂上は近い。途中、幸深橋(こうしんはし)という橋があり、ああ、名前を付けるなら幸深峠かな。いや、素直に美幸峠でいいかな?などと子どもが生まれた父親の心境で考えた。頂上に着くまで、この峠に既に名前があるとは考えもしなかったのだ。
峠頂上の右側には、西尾峠と書いたでかい木製の標柱がある。北海道でこういう由来の分からない峠名に出会うのは珍しい。
麓の仁宇布の集落までは、上りと同様に緩い勾配で下る。広々とした風景が開けてくる。仁宇布で道道49号線に合流すると標高は280m。
仁宇布は美深から伸びてきていた美幸線の終点だったのだが、日本一の赤字線として有名になり、国鉄時代に廃止された。草ぼうぼうのなかに、仁宇布駅跡も残っている。
2002年1月12日初版 / 2012年8月16日更新