栃ノ木峠

人影の少ない整備済み国道峠

読み方とちのきとうげ
標高530m
位置福井県南条郡南越前町・滋賀県長浜市
道路国道365号線
水系九頭竜川・淀川

実走日2010年9月26日(日)
地図などGoogle Maps地図院地図

栃ノ木峠は、福井県の今庄から滋賀県に抜ける道にある県境の峠である。琵琶湖の東側(例えば米原)から北陸に入るには最短ルートと思われ、非常に利用価値の高い峠でもあるが、おそらくは敦賀を経由しないせいで、交通量は少ない。

鞍部にあった案内看板の説明によれば、柴田勝家がこの峠を改修して立派な街道に仕立てて、たいへん通行が盛んになったという。北側の麓の今庄や板取には当時の宿場町の雰囲気が色濃く残っている。この峠を訪れるときは、そういう風情を感じながら行くのが楽しそうだ。

今庄や板取は栃ノ木峠の麓であると同時に、木ノ芽峠の麓でもある。が、例えばこの案内看板の説明によると、今庄に伝わる県指定無形文化財の羽根曽踊りの歌詞に今庄朝立ち、木の本泊り、中の河内で昼弁当というのがあるそうで、これは栃ノ木峠のことだろう。

今庄

おれはこの峠は北側の今庄から越えた。写真は峠越えの前日にぶらついた今庄の市街地である。古い宿場町の雰囲気があるが、決してコテコテの観光地ではない。市街地自体は小さく、周囲には美しいそば畑が広がる。なかなかいいところである。


板取

さて当日は朝に今庄を出て国道365号線を南下する。田園はやがて切れ、山岳道路になる。道幅は2車線あり、整備はされている。交通量は意外と少ない。やがて板取の集落に着く。右側に石畳の急坂路が分かれており、それを自転車を押して上ると草の生えた茅ぶきの古い建物が見えてくる。いかにもという感じだ。

その石畳の道は今庄365スキー場や温泉への道に突き当たる。見る限り、温泉へはかなりの上りである。おれはそちらへは行かず、国道365号線に戻って峠道の続きを走る。広いストレートの新道を一気に上り、右に国道476号線を分ける。木ノ芽峠トンネルの坑口が見える。


折り返して上る

あとは緑の中の2車線路である。左前方の崖の上の逆光の中に、これから上る道が見えてくる。やがて道は折り返して山腹に上りつく。これまでつめてきた谷の眺めが少し開ける。今まで走った中でどこに最も似ているか。……東京都道・山梨県道33号線の甲武トンネルの北側の道だろう。


今庄方面の谷の眺め

……いや、甲武トンネルはこんなに雄大じゃなかったかな……。

背後に続く、これまで上ってきた山腹の道を振り返りつつ、そして下の段の道を見下ろしつつ進むと、やがて正面に鞍部らしき標識群が見えてくる。そこが鞍部だろう。


鞍部から今庄方面を眺める

やがて鞍部に到着。かなり大きな案内看板がある。おれはこの峠には1994年にも来ているわけだが(木ノ芽峠に行ったときに)、そのときにはこの看板はなかったと思う。背後には余呉高原リゾートというスキー場があるが、当時もこれはあっただろうか。

いずれにしても、もう峠の北側は南越前町になってしまったし、南側は長浜市になってしまった(1994年はそれぞれ今庄町と余呉町だった)。県境の標識を見つつ、感慨にふける。


中河内付近

下り始める。直線的でゆったりした下りである。正面に椿坂峠の鞍部が見える。あまり高さは感じない。あたりの風景は高原風だ。下り始めてすぐに中河内の小さな集落に到着する。標高は410mあまり。ここで栃ノ木峠の峠道は終わりで、国道365号線は2発目の峠である椿坂峠(標高は500m)に向かっていく。

まあ峠道はそれで終わりなのだが、今回は椿坂峠を越えずに、高時川沿いに琵琶湖岸まで下りるという変わったルートを取ったので、それを紹介しよう。

中河内で国道365号線をそれて県道285号線に入る。すぐに通行止の看板が出ていて思案に暮れるが、ちょうど通りかかった地元の人らしいバイクのおっちゃんが、自転車なら通れると教えてくれたので、行ってみることにする。


尾羽梨

さてそれで進む。少し行くと半明と書いた立札が出ている。地名なのだろうが、建物は一軒もなく、ススキ野原があるばかりだ。

川沿いに、それなりの勢いで下る。やがてロープを渡したゲートがあり、この先の尾羽梨で道が通れなくなっている旨が掲示してある。しかし決心は変わらない。その上を自転車を持ち上げて越える。

爽快な川沿いの道が続く。宮崎県道401号線(奈佐木峠参照)を思い出すが、あれほど木は生い茂っておらず、薄暗くはない。道幅は1ないし1.5車線。ところどころで路面はびしょびしょに濡れている。

さっきの半明と同じシリーズの立札が、針川尾羽梨鷲見田戸と続く。いずれも建物はまったくなく、ススキが生えているのみである。しかし藪の中に石垣があったりして、確かにかつて集落があったのだろうとは思わされる。


高時川の清流の脇の道

尾羽梨ではサルを見た。またそのあとはリスも見かけた。自然が濃い。

結局道路は一部で土砂に覆われているくらいで無事に通過できた。田戸まで来ると道は整備された感じになる。ここが丹生ダムの予定地である、という看板を見かける。それでどこもかしこも廃村だったのか。この県道285号線は、この様子だと付け替えるつもりがあるのかどうかちょっとわからない。

北海道トンネルという名前の立派なトンネルを抜けると菅並。中河内以来の久しぶりの集落である。そこからは道は2車線ある。少し行くと道沿いに胡桃谷の名水というものがある。この付近まで来てもあまり谷は広がらないが、標高は200m程度になっている。あとはのどかな農山村風景の中をひたすら進んでいく。

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2011年1月13日初版