桜峠
静かで単調な林の中の道
読み方 | さくらとうげ | |
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標高 | 330m | |
位置 | 静岡県富士宮市 | |
道路 | 国道469号線 | |
水系 | 富士川川 | |
実走日 | 2017年4月23日(日) | |
地図など | Google Maps・地図院地図 |
桜峠は富士宮市の西の方にある峠で、白糸の滝のある芝川の川筋から富士川の本流筋に出るところにある。特に富士川側には大きな集落があるわけではないので、地元民ではないおれには、どのような利用価値があるのかよくわからないが、ともかく、国道になっている。
峠道としては、林の中のローカル色満点の道、と書いてしまえば十分な気がする。芝川側には富士山の眺めがある……はずだが、この周辺では特に珍しい眺めではなさそうにも思える。
白糸の滝を見物してあとは新富士駅まで下って輪行して帰り、というのがこの日の予定であったが、実際に出かけてみてそこに峠があったのでこれを一発攻めて帰ることにした。時間ないのに。
代掻きをすませた田んぼを見つつ国道469号線を白糸の滝の方から下ってくると(この道自体がけっこうローカル色ある)、やがて突き当たりに出る。国道は右折だが、そこにはこの先国道469号 8m以上の車両 通行できませんの標識があり、これは幅じゃなくてカーブの半径の問題なんだろうなと思わせる。少し楽しみではある。
右折するとすぐに芝川を渡る。橋のたもとにはポットホール(甌穴)の案内板が出ており、確かによく見ると河岸のつるつるした岩にそれらしい穴がある。
そのまま道なりに進むと県道75号線に入ってしまうので、気をつけて左にそれなければならない。わかりやすい標識はなかったと思う。標高は200mほど。
あまりきついとは言えない勾配の道がどこか開放的な集落の中を折り返していく。集落を抜けると右手にさっき走ってきた浅い谷を見下ろす。その向こうには富士の裾野が見えるのだが、富士山自体は(この日ずっとそうだったように)雲の中で見えない。
なおこの付近には特定希少野生動植物指定標識という看板が建っている。対象はギフチョウだった。
さて眺めが去るとやや明るい針葉樹林の中の道になる。道端にはとにかくマムシグサが多い。他にはムラサキケマン、シャガ、ホウチャクソウ、ニリンソウ、タチツボスミレあたりが多いが、1株だけウラシマソウも見かけた。木の花ではヤマブキが多い。
やがて鞍部に到着。鞍部には峠の由緒を書いた看板があり、また右手の尾根筋には登山道が伸びており富士山展望台という木製のアーチなどもある。まあ今日は富士山は見えないわけだが、その手前の眺めはあるだろうしな、と思いつつその道を上り始める。
最初は峠道自体と同じようにマムシグサとタチツボスミレがみられるが、やがてそれはなくなる。……しかし少し歩くと前見て あと20分という看板が出ている。に、20分! それはない。それで引き返すのだが、かなり脚が疲れているのだろう、膝がかくかくする。
ちなみに、峠の由緒を書いた看板の説明を書き写すと、慶長14年(1609)上稲子村検地の後、この峠に桜の木を植えたのが峠の由来の始まりであると伝えられる。また、別の説に富士川の合戦で敗れた平維盛が柚野延命寺より稲子に入る際に桜の杖を刺したとも伝えられている。意外と歴史の長い峠名であり、決して近年つけられたチャラい名前ではないのであった。
さて行くとしようか。周囲の植生も含めて上りに似た道だが、強烈なヘアピンカーブがあるのは上りとの違いか。
この写真は、見づらいかもしれないが、右ヘアピンカーブの手前で撮った。
じきに稲子川に架かる橋を渡って突き当たりに出て、峠道の本体は終わり。標高は150mほど。なお川を渡る手前に温泉ユー・トリオがあるが、駐車場にはかなりたくさん車が停まっていた。かなりの山奥だが、繁盛しているようだ。
その突き当たりを左折し、稲子川に沿って下る。水はとても澄んでいる。少し行くと線路と駅(稲子駅)があるので驚く。これは……身延線? こんな山の中に? ……いつかもこれと同じような驚き方をしたことがあった。北条峠の下りで見た飯田線だな。
稲子駅(標高87.2m)を過ぎてからは、どこか青灰色っぽい水面と広い川原を持つ富士川に沿っていく。海までの距離はもうそんなにないはずなのだがそういう感じはしない。何とも言えない静けさがある。大井川もそうだったかもしれない。
次の芝川駅まで走ると工場などもあり、もうすっかり近郊の雰囲気である。標高は66.5m。
2017年5月26日初版