国士峠
雰囲気のある田舎道峠
読み方 | こくしとうげ | |
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標高 | 500m | |
位置 | 静岡県伊豆市 | |
道路 | 静岡県道59号線 | |
水系 | 狩野川 | |
実走日 | 2014年5月11日(日) | |
地図など | Google Maps・地図院地図 |
国士峠は、伊豆半島の中央あたりにある湯ヶ島温泉から東に抜けるところにある峠である。越えた先もまだ狩野川の流域なので、半島の脊梁部にあるというわけではない。
未整備で素朴な普通の峠という感じだが、東側には伊豆名物のわさび田もあったりして、なかなか旅情もあっていい峠だと思う。
峠名は国士越というのも地図ではよく見る。現地で見たのは国士峠の方だが、まあどちらでもいいんだろう。
おれはこの峠は湯ヶ島温泉側から(つまり西側から)上った。出発地点は三島市なので、狩野川沿いにのんびり行く。国道の対岸である左岸を進んだのだが、自動車の入ってこれない堤防上の道があって楽だった。振り返ると背後には富士山。川原にはムクドリ、セグロセキレイ、ツバメなども見かける。川にはカワウが少々。
田京の対岸あたりでその堤防道は終わるが、その後も交通量はそれほどではなく、なかなか走りやすかった。
大仁では右岸にスイッチしてなおも国道を避ける。もう風景もすっかり山っぽい感じになっている。茶畑があり、茶摘みが行われている。ところどころでおとりという文字がある看板を見る。もちろん鮎なのだろうが、どれにも鮎の文字はない。
そういう調子で、湯ヶ島温泉の手前まで国道を避けて進むことが可能である。
湯ヶ島温泉まで来ると完全に山峡の風景だが、国道の交通量が多いのであまり雰囲気は盛り上がらない。セブンイレブンを過ぎ、湯ヶ島宿の交差点で左折し、県道59号線に入る。やっと峠道だ。標高は208m。
貧相な感じの道だが集落を抜けると多少広いところもある。棚田のある集落をワインディングで抜けていく。周囲はなだらかな尾根で取り囲まれている。ふわふわもこもこの尾根を背景にした田植え直後の棚田の風景はなかなかいいものだ。交通量は多くないが、二輪車は多い。
その風景が終わると道は一気にヒノキの暗い林の中になる。その後も雰囲気はあまり変わらない。1.5車線ほどの狭路が林の中を右へ行ったり左へ行ったりし、勾配はそれほどでもない。
しばらく行くと左手の樹間にちらちらと白い富士山が見える。しかし展望スポットはない。そうこうするうちに標高430m地点あたりからは今までとは逆に左側に尾根が現れてくる。さらに少し行くと左側は再び谷に向かって開けてくるが、眺望が開けてくることはない。ただし樹間には空が透けて明るい。
国士峠に到着。かつて天城湯ヶ島町と中伊豆町の町境にあったのでそれを示す標識があったのだろうが、今は立派な柱だけが残っていて間抜けな感じである。
白い木の標柱もあり、名勝 国士峠標高510mと書かれている。
下り始める。やや暗い感じの林が続く。大きな左カーブで下って行く箇所がふたつある。ヘアピンではないが、かえって(ちょっとだが)雄大な感じだ。
少し下ると筏場のわさび田に到着。明るい谷間に細長くわさび田が続く。澄んだ水の上に鮮やかな緑のわさびが並び、場所によっては日よけがしてある。かなり広い。
しかもそれはそこだけではなく、しばらく道沿いに続く。伊豆のわさび田は昔社会科か何かで習った気もするが、こうしてみると確かにとても広大で、名所なのはもっともだ。しかしあまり人は来ず静かである。
さらに少し行く。山峡の集落にわさび田と田植えを終えたばかりの水田がある。カエルの声がする。……ここには無限の美がある、と言えば大げさだろうが、そのときはそんなふうに思った。
下っていくと貴僧坊で県道59号線は尾根を越えていくが、大見川沿いに行く道もちゃんとある。もちろんそちらを行く。少し行くと集落の中になり、八幡(はつま)の交差点で県道12号線にぶつかる。やや交通量は多い。おれはここで右折して鹿路庭峠に転戦した。この地点の標高は150mあまり。
2014年6月26日初版