船原峠

明るい気配のある豪快な峠

読み方ふなばらとうげ
標高574m
位置静岡県伊豆市
道路国道136号線
水系狩野川・山川

実走日2017年5月20日(土)
地図などGoogle Maps地図院地図

船原峠は、西伊豆の海岸にある土肥に、伊豆半島の真ん中の狩野川の流域から抜ける道にある峠である。西伊豆の玄関口として、けっこう大事な位置にある峠なのではないだろうか。

峠にはトンネルがあいているが、旧道も残っていて通行可能である。道の雰囲気は、特に西側の土肥側が急峻で、豪快な感じである。

この峠は、地理院地図には土肥峠(船原峠)として載っているが、現地で多く見かけたのは船原峠の名前の方だったので、ここでもその名前で載せておく。ちなみに、上記の通り、土肥は峠の西側の麓の地名だが、船原は東側の麓の地名である。

田んぼの脇を上る道

修善寺駅付近から国道136号線沿いにずっと上っていけばこの船原峠に至るわけであるが、実際のところは6kmほど行ったところにある出口の交差点で右折することになる。ここを直進すると天城峠の国道414号線に入ってしまう。

国士峠の記事でも書いたが、この付近まで国道136号線を走らずに来ることもできる。その場合は対岸の県道349号線を来ることになるわけだが、そちらにはあまり親切な標識はないので、行きすぎないように注意しなければならない。

ともあれ右折して船原峠への道に入る。出口の交差点の標高は115m。

船原川沿いの谷間をじりじり上りつつ進む。谷間には田植えを終えたばかりの田んぼと集落が続く。気づくとわさび田もその中にまぎれてあるようだ。道は、まあ予想されたことだが2車線あって整備されていて交通量もそれなりに多い。道端にはマルバウツギの白い花が多いが、少し離れた山腹にはミズキのクリーム色の花も見える。


カーブした橋

しばらく行くと道は橋と馬蹄形の曲線のコンビネーションで一気に高度を稼ぐ。最初その手前で右にそれているのが旧道なのかと思って入ってしまったが、それは橋の下をくぐっていってしまう別の道なのだった。しかたなく引き返してその橋を渡る。実際に走ってみるとこの区間はかえって勾配は緩い。


旧道の上り

それをクリアすると旧道の入口に到着。道路標識も出ていて右折は船原峠とある。標高は440mほど。ここからは狭めの2車線の静かな道になる……のだが、新道も近いので音はよく聞こえる。

ヒノキなどの針葉樹が多い、少し暗めの林の中のよくある道である。ぽつぽつとハコネウツギやヤマツツジの花も見かける。そう言えば麓で感じたクリの花の匂いはほとんどしないようである。


鞍部

やがて鞍部に到着。その少し手前に右に分かれるランプがあり、頭上には西伊豆スカイラインの重厚な橋が架かる。やや殺風景な鞍部だが、伊豆山稜線歩道の案内看板があり、ここが船原峠であることは書いてある。なお駐車場の一角にはマムシグサが群生していた。

しばらく休憩してから出発する。下り始めてすぐ、土肥峠の標識がある。ん? 結局どちらの峠名が適切なんだ? 現地での存在感は船原峠の方だが。

すぐに左手の眺めが開け、浅く広い谷の向こうに、もやってはいるが海が見える。しかし眺めのいい区間は長くは続かない。

少し林の中を下っていくと、国道136号線に合流するための道が左に分かれる。と言うか、標識によると本道は左折であって、直進した先については何も書いていない。しばらく考えたが、さっきの交通量の多い国道にいちいち急いで合流すべき理由はないので、直進することにする。この分岐の標高は470mほど。


照葉樹の落ち葉が積もるカーブ海を見下ろす

ここからは本当に交通量が少ない。林の中だが針葉樹は少ないようである。路肩に茶色い照葉樹の葉っぱが落葉したのが積もっていて、南国だなという感じがする。路傍にはガクウツギの白い花を1箇所だけであるが見る。あとコゴメウツギも咲いていたようだ。風を切って進むと少々肌寒い。

少し行くと木々の向こうが明るくなってくるが、なかなか見晴らしはきかない。もどかしい気分で進むとやがて右手に海の展望が開けた。海岸線と白いリゾートマンションのような建物が見える。帰ってきてから調べると、これは土肥港よりも南の八木沢のあたりにある建物らしい。


トラス橋を見上げながらカーブした橋を渡る

それを過ぎるとじきに小嵐トンネルの出口のそばで国道に合流する。標高は270mあまり。どうもここの様子からすると、新道はかつて有料道路だったのではないかという気がしたが、あとで調べてみると、実際にそうだった。

そこからほんの少し行くと、左側にグリーンヒル土肥というドライブインのようなものがあるが、その向かいの右側からも海の眺めがある。今度は手前側に陸地は見えず、こちらを目指してフェリーが進んできているのが見える。

さてそれを過ぎると、おれが合流したこの道は実はかなり豪快な道だったということが明らかになる。左カーブした橋を下っていくと正面上方に曲弦トラス橋を見上げる。次に右カーブをクリアすると左後方にさっき渡ったカーブした橋を見上げる。勾配は間断なくきつい。これは最高速アタックコースだな……柳沢峠みたいな。

旧道を走るなどというマイ・チョイス的なことをしなければ、もっと楽に下れて眺めもよかったのかもしれない、とも思うが、もちろんもう遅い。

いずれにせよ、その豪快な道はそう長くはない。やがて道は山川の谷間に入っていき、土肥の市街地が始まる。戸田への道(県道17号線)との交差点に出ると、峠道は終わりとなる。食事や買い物にもあまり困らない規模の市街地である。海もすぐそこだ。

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2017年8月17日初版