熱海峠
意外と静かな非対称峠
読み方 | あたみとうげ | |
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標高 | 620m | |
位置 | 静岡県田方郡函南町・熱海市 | |
道路 | 静岡県道11号線 | |
水系 | 狩野川・初川 | |
実走日 | 2013年4月28日(日) | |
地図など | Google Maps・地図院地図 |
熱海峠は、熱海の背後にある伊豆半島の背骨の山脈を越える峠で、峠の反対側は函南町というところになる。熱海と函南と聞くと、鉄道にある程度詳しい方は丹那トンネルを想起されるだろうが、実際、峠の位置はそれからそんなに離れてはいない。
函南と熱海を結ぶ道路としては、鷹ノ巣山トンネルを抜ける新道が既に開通しているから、この峠道は旧道ということになるけれども、熱海から伊豆スカイラインに入ったり十国峠に上ったりするためのメインルートであることには変わりはなく、特に熱海側は交通量が多めだ。
一方で、函南側はやや未整備で、静かな田舎道走りを楽しめる。
おれはこの峠には函南側から上った。別に理由はないのだが東海道線の函南駅(標高は69.0m)に立ち寄ってから県道11号線に向かった。その途中では右手に富士山がよく見えた。
県道11号線は最初のうち交通量が多く、勾配もけっこうきつい。数分間我慢すると鷹ノ巣山トンネルへ向かう新道から旧道が左に分かれる。旧道の行く手は標識によると箱根峠だ。
交通量は大幅に減り、とても走りやすくなった。勾配は控えめだ。道幅は狭めの2車線というところか。集落や畑はあるが、しばらくは大都市の近郊という感じで、里山めいた感じはない。沿線には病院や社会復帰施設などの施設がある。最初のうちだけ左手に富士山と南アルプスの眺めがある。また新幹線の走行音も聞こえる。マルバウツギの白い花が目立つ。
南アルプスのうち、見えるのは赤石岳、聖岳、上河内岳、茶臼岳、山伏(山伏峠のそば)といったあたり。
鬢の沢まで来るとやや雰囲気は山里めいてくる。閉まっている店の前で休んでいると、おじさんにいやーごめんなさい、峠の先生かと思ってと話しかけられる。んん? 話を聞いてみると、この近所に峠の先生と呼ばれる人が住んでおり、よく自転車で峠に行くのだとのこと。
あんまり先生に似てるから間違えちゃいました。……いったいどんな人だよ、先生……。
その先では一部で富士山を眺める箇所がある。また竹林が多く、竹の秋ということか、それほどの風はないのにさかんに葉が散っている。全体的にあまり眺めはないが、右前方に行く手の尾根を見るところもある。新緑がとても美しい。
その途中で沼津ナンバーの対向車がすれ違いざまに停まり、おじさんが顔を出してこれからどこへ行くのかと話しかけてくる。熱海だと答えるとこの先かなりきついですよ。おれはにっこりして覚悟の上ですと答える。
こういう調子なので、ぎすぎすした感じの観光道路なのだろうという予想は大いに外れた形となった。
さてすっかり山里の風情のある軽井沢(かるいさわ)の集落を通り過ぎる。
ここにはお寺があり、猫おどり発祥の地の小さな石碑が建っている。何だそれ……。説明は書いていないのでその場ではどういうものかわからなかったが、函南町のイベントだそうな。
この付近からは熱海までの距離が書いてある距離標が500mおきに建つようになる(最初は11.5kmだったと思う)。また左手後方に富士山が見える区間もあるが、やはり全体としては林の中の区間が多い。途中、タヌキが道路を横切るのを見かける。
標高520m付近では、深い森を背景にネコ捨てないで 飢え死にするだけですという手書きの小さな看板が建っており怖い。
鞍部が近くなると道路は広い2車線になる。林の中を抜け出し、背後には富士山がそびえ、右前上方の斜面には伊豆スカイラインのものであろう道路標識が見えてくる。バイクの走行音がひっきりなしに聞こえる。この付近には7.5kmの距離標がある。
そこからはすぐ鞍部に到着。扉峠と同じように尾根道との立体交差になっており、伊豆スカイラインの橋を見上げる。また十国峠や伊豆スカイラインへの道の分岐にもなっており、見ているとけっこうな量の車がそちらから来て熱海に下りていったり、逆に熱海から上ってきてそちらに向かっていったりしている。
おれはあまり疲れていなかったのでここから尾根沿いに十国峠へ行って戻ってきた。熱海峠の峠道ではないのでここでは紹介しないが、眺めは確かにいいし、雰囲気のある笹原の風景があるし、熱海峠の鞍部からはたいした上りでもないので、立ち寄るのは悪くないと思う。
さて鞍部から熱海へ下ることにする。やや狭い2車線のワインディングだ。カーブには減速帯がある。交通量はさっき鞍部で受けた印象に比べると少ない。途中でちらちらと海と海岸線が見える。
12%とか7%とかの勾配標識があり、ブレーキの過熱に注意という看板もやたらに出ている。車種ごとにこれこれこういうギアで下れというのが多く、例えば、乗用車は2〜3速で、と書いてある。それじゃあAT車はどうするんだよ、と思っていると、その直後にオートマチック車 2レンジ使用という看板があり、完全にやられたというか、相手の掌中というか。
一方で、教習所で習うような、ブレーキが効かなくなったら突っ込むための砂場のようなものは、なかったと思う。
姫の沢公園の前で鷹ノ巣山トンネルを抜けてきた新道と合流する。かなりの交通量だ。一方でここから分かれる県道20号線は静かなようだ。そちらで下ることにする。
しばらくの間は林の中で眺めは何もないが、やがて市街地のへりにたどり着き、海と市街地の眺望が開ける。沖には伊豆大島とおぼしき島影も見える。かなり大きい。またもっと近くに小さな島(初島)も見えてくる。
この写真には伊豆大島が写っているが、ぼんやりとしているのでわからないかもしれない。初島は写っていない。
やがて道は線路の下をくぐって突き当たりに出る。近くにある駅は伊東線の来宮駅で、東海道線の熱海駅は左折だ。熱海駅へ向かう。その途中で左にアーケード街のようなものが分かれており、あまりの雑踏に目を疑う。熱海は完全にうらぶれた温泉街だと勝手に思っていたが、少なくともゴールデンウィークの間はそうではないようである。
海はすぐそこなのだが、線路は斜面の中腹のような高い位置を通っており、来宮駅の標高は70.6m、熱海駅の標高は71.4mだ。どちらも奇しくも函南駅の標高とほぼ同じ。
2013年6月6日初版